カレンダー撮影記:マダガスカル 第9話

第9話:眼下100mの針山地獄。撮影チャンスは一日2回、ほんの一瞬。

世界自然遺産でもあるツィンギ・デ・ベマラ国立公園・厳正自然保護区にやって来た。高さ100mくらいの針のように鋭く尖った石灰岩の岩が林立し、人間にとっては容易には足を踏み入れることのできないところだ。39年前、僕が初めてマダガスカルを訪れたときには、この場所には来ていない。今回、ツィンギに来たのは、針山を移動するブラウンキツネザルやシファカの撮影に挑戦したかったからだ。針山の内側には森があり、ブラウンキツネザルやシファカが寝ぐらにしている。朝になると寝ぐらから現れ、針山を移動して、食料である花や実を求めて出かけるのだが、このタイミングを狙って撮りたかった。撮影できるチャンスは、出かける朝と、帰ってくる夕方の一日2回だけ。果たして、移動する彼らと出会うことができるかは、運まかせだ。


ツィンギ・デ・ベマラ国立公園・厳正自然保護区の風景


ツィンギ・デ・ベマラ国立公園・厳正自然保護区の風景


岩合光昭さん

ロッククライミングをするように、ハーネスをつけ、ハーケンで登る。ボトムからトップまでほぼ垂直で100m。気温は40℃、汗で手が滑ったら大変だ。マダガスカルチョウゲンボウが飛び交っている。登るのに1時間くらいかかった。見下ろせば、眼下100mの断崖でゾッとする。初日の朝、キツネザルたちは現れない。夕方まで、このまま針山の上で待つわけにもいかない。いったん下りて、また1時間かけて登りなおす。毎日、そんなことの繰り返しだった。そしてついに、針山にブラウンキツネザルが現れた。しかも2匹が、鋭い針山の上でキスを交わしているかのように見えるという、絶好の撮影チャンス! 毎日毎日、針山を登り下りした甲斐があった。針山とデッケンシファカも撮影できた。彼の白い体は、針山でよく目立つ。彼が現れたのはほんの一瞬、わずか15秒ほどだ。ツィンギには一週間ほどいたが、結局、出会えたのは数分足らず。それでも出会えただけラッキーだと思う。僕は充実した思いで、いったん日本に帰国した。


マダガスカルチョウゲンボウ


デッケンシファカ


ブラウンキツネザル 野生動物図鑑