カレンダー撮影記:マダガスカル 第12話

第12話:原猿の虜になったマダガスカルの撮影。自然についても、またいろいろ考えさせられた。

今回のマダガスカルの撮影で、僕は原猿の魅力というか、魔力にとりつかれてしまった。しかし、39年ぶりに訪れたマダガスカルの自然は、その姿を変えていた。目の前で、バオバブの森が焼かれているのも見た。マダガスカルの人に聞いたところ、自然の原生林が残っているのはほんの数パーセントで、手のついていない森林は、人間が足を踏み入れることができないほどの厳しい場所だけだという。原生林に入り、30m以上の高さがある大木から雨粒がスローモーションのように落ちてくるのを見たときは、30mって高いんだなぁと、その森の歴史に尊厳を覚えた。自然の森が減れば、そこに生きて暮らす野生動物もますます隅へと追いやられる。ベローシファカが大地を横っ跳びして移動するのも、森林の木々が切られたことで、木から木へとジャンプできなくなったからだ。そう考えると、ちょっとユーモラスなその姿も物悲しい。


ベローシファカ 野生動物図鑑


焼畑される森


マダガスカルの熱帯雨林

人間は、自然は毎年同じことを繰り返していると思いがちだが、一瞬として同じ時を刻むことはない。見ること、感じることがなくては、魂は揺さぶられない。僕の写真を見て、その光とか風とか匂いとかを感じ、ふだん暮らしている生活のリズムから一歩外に出て、身体の中の自然を呼び覚ましていただけたらと願っている。そしてそんな、みなさんの琴線に触れるような写真になってくれるよう、努力を続けていきたいと思う。(2015年 岩合光昭)


岩合光昭さんとベローシファカ