人を知る

技術のシーズと現場のニーズをつなぐために自分の肌感覚を磨く努力を

  • 研究・開発

ソフトウェアエンジニア

入社の動機

大学時代は数理生物学を専攻していて、主に心臓の鼓動に関する研究をしていました。大学院でもそれを深めようと、医学部の講義も受けていたのですが、その際の演習でシミュレーターを使う機会があり、医療機器に興味を持ちました。医療機器の開発なら、学んできた生物や数学の知識も活かせそうだと考えたのです。

医学部の教授などに「医療機器メーカーに興味がある」と話してみたところ、「日本で奮闘しているのはオリンパスだろう」という意見が聞けました。また、サークルの先輩にオリンパスの社員がいて、実際の仕事についてうかがってみると、ユーザーと関わりながら技術開発をしていると聞き、面白そうだなと感じました。オリンパスはとくに内視鏡分野で強みとシェアを持っていることもあり、多くの人に使ってもらえる医療機器が開発できるだろうと思えたことが、入社の決め手になりました。

仕事の内容

カプセル内視鏡開発部で、次世代に向けた新しい技術の開発を行っています。カプセル内視鏡は、小型カメラや照明を内蔵した錠剤程度の大きさのカプセルを飲み込むことで、腸管内の撮影ができる医療機器です。カプセルは消化管の蠕動運動によって移動しながら、数万枚の画像を撮影します。撮影された画像は無線で受信装置に送られ、撮影終了後、医師がパソコンにダウンロードし、画像を見て診断を行います。私たちの部署では、こうしたカプセル内視鏡検査を実施するためのシステム一式を開発しています。

私はその中で、最終的に医師がパソコンで画像診断するためのソフトウェアの開発に携わっています。カプセル内視鏡は飲み込むだけで腸管内の画像が撮影できるので、患者さんにとっては負担の少ない検査ですが、撮影画像は時に7万枚にもおよぶため、医師が全ての画像を確認するには大変な労力がかかります。そこで、診断に必要な画像を効率的に見分けるアルゴリズムや観察機能の搭載が必要になります。私はそのための調査や仕様検討、技術検討、評価といった業務を担当しています。

私の仕事はいわば、"シーズとニーズをつなぐ"ものだと思っています。研究部門で作られた技術の種があっても、そのまま製品に搭載できるわけではありません。臨床現場のニーズを調査し、仕様を検討するところからスタートして、「製品としてどうあるべきか」という観点で技術を改良していきます。そして、実際に医師に試してもらって評価し、課題があればフィードバックする。そうした一連の業務すべてをこなします。

やりがい

第一線で活躍している医師から「こんなことはできない?」「この技術はどういうもの?」といった技術的な質問を受けたり、自分から医師に臨床的な質問ができたりするのは、貴重な機会だと思っています。また、自分が担当した製品のフィードバックを、直接いただけることにもやりがいを感じています。ポジティブな意見もネガティブな意見もありますが、どちらもユーザーが感じている正直な感想で、より医療現場で役立つ製品をつくりたいという思いにつながります。

そうした中で、自分が担当した診断システムを使った医師から、「この技術が搭載された製品なら購入したい」「この技術があればもっと楽に検査ができるね」と言っていただけた時は、自分の仕事が医療の発展に貢献できているとうれしく思いました。一方、知人がカプセル内視鏡検査を受けて、それまで見つからなかった腸管内の出血源を発見できたと聞いた時は、カプセル内視鏡の開発という仕事に携わることで、社会貢献もできていると感じられました。

技術があっても、実際に役立たなければ意味がない。逆に、こんな製品を開発したいと思っても、実現できる技術がなければ絵に描いた餅になってしまう。シーズとニーズをつなぐために、必要なもの、実現すべきものと、実現する方法までを考慮して、結びつけられる人材でありたいですね。今はまだ、技術開発の一部しか担当していませんが、技術を開発して世の中に製品を出すまでには、泥臭くて大変なことがたくさんあるのを日々感じています。将来的にはそうしたことも乗り越えて、新しい術式や医療に繋がるような製品をつくれたらと思っています。

苦心していること

何万枚にもおよぶ画像を効率的に観察できるようにする一方で、病変は絶対に見落としてはいけない。この相反する要求をどのようなバランスで技術に落とし込むかが、最も苦心する点です。

そのためには、臨床現場の医師に直接話を聞くことが重要です。医師と対話をするために、医学知識を学び、学会を聴講し、理解を深めるように心がけています。さらに、自分自身でも医師と同じように何万枚もの画像観察を繰り返して、画像観察の苦労や、所見を観察しにくいシーンなどを自分なりに体感してみる。そのうえで、何が必要とされているのか仮説を立てて、意見をうかがうようにしています。

また、医師によって判断が異なることがあるので、医師たちに集まっていただき、話を聞く場を設けたりもしています。医師同士でディスカッションしてもらうことで、見解の相違の理由を理解して、技術的にどう扱えばいいのかを考える。

こうした一次情報を大切にして知識と経験を積んでいくうちに、自分の肌感覚で考え、語れるようになり、先輩方からも自分の担当分野について質問を受けるようになりました。

職場の紹介

職場は先輩後輩の区別なく、フランクに話せる雰囲気です。上司に対しても、自分の意見を遠慮なく伝えています。困った時にはグループのメンバーだけでなく、部内のほかのグループの人にも相談に乗ってもらっています。

また、若手にもチャンスを与えてくれる風土があります。私の場合は、他の人より詳しい分野を持つことで、海外の医療機関の視察や医療学会への参加といった機会をいただきました。また、国内外の医師に向けて担当技術について英語でプレゼンテーションをする場をいただいたこともあります。プレッシャーも大きかったのですが、上司が「やることはやりきったのだから、心配しないで行っておいで」と言って送り出してくれました。いずれも自分にとってはかなりのチャレンジでしたが、グローバルな視野で医療の動向や技術に求められていることなどを知ることができ、貴重な経験になりました。

業務は多忙で、ほかの部署に比べると残業が多いほうだと思います。でも、忙しいからこそ、オンとオフの切り替えをしっかりしようとしている人が多いですね。私が「この時期は旅行に行きたい!」と希望すれば、それを叶えるために、みんなが一緒になって頑張ってくれます(笑)。

学生の皆さまへ

社会人になると良くも悪くも、限られた時間の中で効率的に成果を出すことが求められます。自分の自由に使える時間がある学生のうちは、腰をすえて物事に取り組んだり、じっくり考えたりする時間を大切にしてほしいなと思います。そうして培ったことは、仕事にも活きてくるはずです。学業も遊びも、時間をたっぷり使って取り組んでください。

就職活動もその1つで、会社に入ることが目的化してしまわないように、仕事を通じて自分がやりたいこと、大切にしている価値観を実現できる場所をしっかり探してほしいと思います。

その他インタビュー