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現場の声で、変えていける。患者様に寄り添う施術の実現を目指し、品質管理の最前線へ

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サービス技術開発

医療機器の修理データ分析から製品を支える。グローバルで月数万件にもおよぶ修理データをもとに、製品や修理工程の品質をモニタリングしています。最初の1件の不具合の重みを、どこまで受け止められるかが課題。グローバルの仲間とともに、常に緊張感をもって修理データに向き合いつづけています。

1カ月あたり約3万件の修理データに対応。“最初の1件”を軽視せずに向き合う。

現在の業務内容を教えてください。

修理技術部のプロダクションコントロールというところで、修理データをもとに、製品や修理工程の品質をモニタリングする仕事を担当しています。全世界の拠点で発生する修理件数は、1カ月あたり約3万件。オリンパスで取り扱うほとんどが医療機器なので、なるべく短い期間で正確に修理を終え、お客様へお返ししなくてはなりません。各修理拠点が問題なく機能しているかどうかを、修理データから確認しています。また、大量なデータの長期的な分析を通して、製品の品質確認を行うことも仕事のひとつです。修理率の急激な上昇を検知したり、修理内容を精査したりして、お客様にご迷惑をおかけするような品質的な不具合が起きていないか、開発段階では想定できていなかった破損が生じていないかを見極めます。

内視鏡は人の体内で使用するものだからこそ、壊れないということより、患者さんの身体を傷つけないということが大事。無理な使い方をすると、“安全に壊れる”ことが大切だと思うようになりました。故障の種類は実にさまざまですが、医師・コメディカルの方々や患者さんにご迷惑をおかけするような壊れ方をしていないかを、とくに注意して見るようにしています。

仕事をする上で、大事にしていることは?

私が取り扱う製品のほとんどが内視鏡です。製品の修理データをもとに報告書を作成し、部署内の上司の確認を得た上で、品質管理の関係部署と共有され、製品の改善に活かされます。その点では、品質管理の最前線に立つ仕事のひとつだといえるかもしれません。

最終的な目標は、患者さんの安全を守り、より良い医療の実現を目指すこと。そのためにも、できるだけ早い段階で不具合や故障の原因を検知しなくてはいけません。大切にしているのは、世界のどこかの市場で発生する“最初の1件”を軽視しないこと。当初は発生件数が少なかった不具合が、後になって急増するケースをいくつも見てきました。新製品の場合はとくに、発生件数に気をとられると、小さな不具合を見落としがちです。最初の1件を拾い上げ、ていねいに深掘りすることがとても重要だと感じています。

フィールドサービスの経験を経て。根底にあったのは「現場の声を大切にしたい」

入社までの経緯と、入社後に携わった仕事について教えてください。

大学では生命環境科学を専攻し、研究室では発生学などに取り組みました。卒業後は、医療に貢献したいという想いから医療機器に関心を持つように。業界への理解が進むにつれて、医療現場の声を製品に反映させられるところに魅力を感じて、当社を選びました。

当初、関心があったのは開発の仕事でしたが、まずは現場で製品がどう使われているかを知る必要があると思っていたんです。そこで、現場で経験が積める仕事に就きたいと考え、フィールドサービス職に応募しました。

フィールドサービスの主な仕事は、機器の修理対応です。内視鏡を洗浄・消毒するための機器を担当し、その修理や定期的に部品を交換する業務に携わりました。また、内視鏡は半年に1回の点検が義務づけられていますので、お客様から委託を受けて、機器を点検する業務も担当しました。

お客様に対して、機器の取り扱い方について説明することもフィールドサービスの大切な役目。勉強会の開催をはたらきかけ、内視鏡や洗浄機など、当社が取り扱う製品の適正使用の普及にも努めました。

入社後はどのように仕事を覚えていったのですか?

オリンパスでは研修期間がとても充実していて、専門用語や技術用語、修理・点検に関する技術的なことはもちろん、勉強会を開催する方法にいたるまで、半年ほどかけてしっかり学びます。講師がお客様役を務めるロールプレイイング実習では、敬語の使い方やお客様を不快にさせないための表現のコツなど、必要な知識やノウハウをしっかり学べました。また、福岡支店の先輩方のおかげで分からないことはすぐに親身に相談にのっていただけたので、実際に現場に出た時の不安はありませんでした。

現場で直接お客様の声を聞いたり、製品の使われ方を観察したりしてきたことで、修理データを見ただけで、製品の使用状況を直感的に想定することができるようになりました。修理データを精査し、製品の改善に活かしていく上で、現場の意見や考えも取り入れるように心がけています。

品質管理の最前線へ。現場を経験したからこそできる仕事を

現在の業務を担当することになって、苦労した点は何かありましたか。

修理プロダクションコントロールという機能は、いわば技術者集団。異動してすぐのころは、知らない言葉が飛び交い、会話についていけなかったのを覚えています。

中でも最も苦労したのが、各地域の特徴の把握です。たとえば、使用環境一つとってみても法規制や輸送環境、電源環境などの影響により各国で異なります。同じ製品で同じような不具合に見えても、使用環境が異なるので要因が異なる場合があります。他にもお客様からオリンパスへの修理依頼方法や各修理拠点の修理メニュー名など、各国で多くの点が異なります。それらを把握することで不具合の原因やお客様への影響度の推測がしやすくなります。

今の業務で印象に残っている出来事はありますか?

はい。発生の初期段階でデータから今までになかった不具合を発見し、製造工場や修理センターの皆様と協力しクレームが大きくなる前に、原因を究明と対策をすることができました。原因の解明と製品品質の改善を行うことができたことが印象に残っています。なぜ、修理データから大きな問題になる前にその不具合に注目できたかというのは、フィールドサービスで点検業務に携わって、故障の事例をたくさん見てきたからだと思っています。現場経験が役に立っているなと感じます。

また、修理データに異変を感じたとしても、実際に製造元に動いてもらうためには、きちんと状況を深掘りして分析し、納得のいくデータを提供する必要があります。社内でのたくさんの人や物事を変えるように動いてもらうことになるので、根拠のない提案はできません。そこで欠かせないのが、この原因究明に重要なデータ提供に協力してくれている各国の仲間たちの存在です。提供してもらったものと同じだけ、あるいはそれ以上の価値を返さなくてはという想いで日々取り組んでいます。仲間たちには感謝の気持ちでいっぱいです。

常に緊張感を持ちながら、製品の改善につなげられるように意識していて、実際、自分の分析や担当した報告書によって、製品の改善につながったとわかったときは、大きなやりがいを感じますね。

開発側の知識や考え方も取り入れながら、より高い視座での品質管理を目指して

今後取り組みたいこと、チャレンジしたいことはありますか?

いまの分析方法が必ずしも最善とは思っていません。より高い精度で分析できるようになるためにも、統計学を学び直していきたいと思っています。もちろん、製品に対する知識もつけていきたいです。また、私自身が現場経験で培ってきた知識をメンバーと共有するための場を設けていきたいと考えています。故障を見たとき、それがどれだけ急を要するものなのかは、現場を知らないとなかなかわからないもの。現場経験のあるメンバーは私しかいないので、全員が同じ温度感を持って分析に当たれるようにするのが、いまの目標です。

その上で、将来的には、開発側の知識や視点も身につけられればと思っています。開発側に対して、分析結果をもとに改善を依頼していますが、実際のところ、製品が改善されていく過程について私は何も知りません。開発側のことを知ることで、より良い提案ができるようになると考えています。

私たちが携わっているのは、医療の現場になくてはならない機器の品質を管理するという、とても社会的意義のある仕事。内視鏡を実際に目にする機会がある人はあまり多くないかもしれませんが、患者さんにとってより快適な診断・治療の実現に貢献できる点に、私はやりがいを感じています。

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