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リーダーになることは、「ありがとう」が増えることだった。

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開発プロジェクトマネージャー

次世代の超音波内視鏡を開発し、市場導入につなげる。そこには、様々な業務で総勢100人以上が関わっています。プロジェクトリーダーという立場になって、一人ひとりの専門性や頑張りが見えるからこそ、メンバーに対して自然と感謝の言葉が出てきます。「大変な時はまず笑おう。解決すること自体を楽しもう」。そうやってみんなで取り組むのが、自分らしいリーダーシップなのかなと思います。

100人を束ねて、前進させる仕事。

業務内容を教えてください。

2021年4月から次世代コンベックス式超音波内視鏡を開発および市場導入するプロジェクトで、プロジェクトリーダーを務めています。内視鏡は上部内視鏡や下部内視鏡がよく知られていますが、超音波振動子が搭載された超音波内視鏡は通常の内視鏡ではアクセスできない膵臓等に対して、超音波画像下で病変部への穿刺やドレナージ等の治療に用いるもので、医療現場での活用が増えています。今、開発しているのは従来の機器に比べて大幅な性能アップをめざしていて、医師にとってより使いやすく、また患者さんにとってもより身体への負担が少ない製品になります。

プロジェクトリーダーはどのような役割なのでしょうか。

プロジェクト遂行における権限を持ち、一方で全責任を背負う人です。必要なメンバーを各部署から召集して役割を割り振り、各フェーズと全プロセスを俯瞰しながら、権限をもって物事の決定をしつつ進行していくのがプロジェクトリーダーの役割です。超音波内視鏡の開発といってもたとえば内視鏡本体、超音波振動子、撮像ユニットと開発者だけでもたくさんいるんです。実際の製品化において生産を担当する工場、品質面と法規面をチェックする品質保証部、さらに各国における承認申請など役割も業務内容もさまざまで、業務の大小を問わなければ完成までにざっと100名ほどが携わる大所帯を運営しながら、製品が世に出るまで責任をもってやり遂げる立場です。

プロジェクトリーダーは2021年4月にできた役職で、私自身それまでは大腸内視鏡の挿入性向上に関わる要素技術の開発等を担当してきましたが、プロジェクトリーダーも超音波内視鏡も初めて。任命された後は超音波内視鏡の基本から学びました。プロジェクトの若いメンバーにも「わからないから教えて」と頼りながら(笑)。

困ったときほど笑う、それがポリシー。

製品と向き合う開発者から、全体を俯瞰するリーダーへ。戸惑いや、心境の変化もあったのではないでしょうか。

もちろん不安はありましたが、一方で楽しみも感じました。いろんなことに主体的に携われる立場ですからね、プロジェクトリーダーは。かといって、正直に告白すると私自身は仕事第一というタイプじゃなくて(笑)。もちろんやるべきことはきちんとやりますが、やっぱり遊びも大事じゃないですか。子供と過ごしたり、ビールを飲んだり、ゴルフしたり。でも、そういう人間だからこそ、仕事をつまらないと思いながら働くのは絶対に嫌だと思っていて。だから、なんでもまずは楽しもうと考えています。そうしたら見え方が変わってくるし、大変な時だって楽しむ心持ちで臨めば光が見えてくる。開発は課題解決の連続で、トラブルが生じると深刻な顔をしがちですが、そんな時もメンバーによく言いますね。「大変な時はまず笑おう。そして一緒に考えよう。解決すること自体を楽しもう」って。

他にもメンバーの方々と接するときに、リーダーとして意識していることはありますか?

感謝を忘れないことですね。以前、自分がメンバーの立場だった時に上の立場の人が打ち合わせ後に「おつかれさま」じゃなくて「ありがとう」と言ってくれたことがあり、その時胸に響いたんですよ。「ありがとう」って、仕事を他人事じゃなく自分事だと思っているからこそ出る言葉ですから。自分がめざすリーダー像もそこですね。

プロジェクト内の工程はどれも担当者だけじゃなくリーダーである自分の仕事でもあると思っているので、一緒に問題を解決してくれる大切な人たちと思うと感謝しかでません。自分では考えつかないアイデアも次々出してくれて、素直にすごいなと思いますから。プロジェクトリーダーという立場上、打ち合わせなどをすると「ありがとうざいます」と言ってもらいますが、こちらこそ「ありがとうございました」の気持ちですし、その想いはきちんと伝えるようにしています。

大切な仕事をさせてもらっている、その感謝をいつも胸に。

仕事のどのような点にやりがいを感じていますか。

自分たちで開発・製造したものが、人にとって最も大切な命と健康を守ることにつながる点です。オリンパスの内視鏡を使用してくださる病院の現場にも何度もうかがったことがあるのですが、ある時、治療が終わり医師と患者さんのご家族が話す場面に立ち会ったんですね。その時に嬉し涙を流すご家族の姿を見て、僕たちが作る製品は誰かの生活とか人生とか、そういう大事なものを支えることにつながっているんだなと。就職の際にオリンパスを選んだ想い、「自分が学んで得た知識で世の中に還元したい」が改めて湧き上がって、胸に迫るものがありました。わかっていたつもりですがすごく大切な仕事をさせてもらっているんですよね、僕たちは。

今後の目標を教えてください。

まずは今のプロジェクトを成功させ、次世代型超音波内視鏡を世に送り出すことが目標です。その後はプロジェクトリーダーを続けるか、開発者に戻るかはわかりませんが、どんな立場でも「この人となら一緒に働きたい」と思ってもらえる人間になりたいです。

仕事のスタイルも働き方も人それぞれでいいと思うし、各自の人生を尊重しながら、それぞれが働きやすい環境がもっと整っていくといいですよね。最近、幸せってなんだろう、人生ってなんだろうと考えるんです。「おいしいものが食べられる」「蛇口をひねったら水が飲める」、そんな日本の僕たちの当たり前も、世界的には当たり前じゃなかったり。医療はもちろん、衣食住すべてで先進国と途上国には格差が生じています。そんな厳しい現実にもしっかり目を向けながら、日本だからこそできる医療機器開発を通じて世のため人のために尽くしていければと思っています。

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