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専門家集団をつなぐメディエーターに。システム全体を大局的に俯瞰する開発者

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オプトロニクスエンジニア

光学システム開発部で消化器内視鏡のシステム開発に携わり、光源開発を中心に、画質に関わる仕様提案や画質評価を担当してきました。あえて担当外の領域にも踏み込み、“隙間”を埋める役割を積極的に担うことで、仲間をつなぎながら、医療機器の技術者として人の健康に貢献しつづけたいですね。

消化器内視鏡システムの光源開発を担当。求められるのは、全体を俯瞰する視点

現在の業務内容について教えてください。

消化器内視鏡の光学システム開発を行う部署で、光源開発を中心に、画質に関わる仕様提案や画質評価に携わっています。2022年10月現在、担当しているのはいわゆる胃カメラと呼ばれるもので、オリンパスが誇るフラッグシップモデルです。従来の内視鏡システムにも採用されてきた“狭帯域光観察(以下、NBI)”という技術を踏襲しながら、独自の画像処理機能を搭載するなど、これまで以上に効率的な検査の運用をサポートするシステムづくりを目指しています。各国の申請業務やすでに導入された地域の、医師の方々からご意見をいただくといった対応をしています。

内視鏡システムは、光源から発される光がスコープ内へと導かれて被写体を照らし、内視鏡先端に搭載されているイメージセンサーが患者さんの体内の様子を撮影します。画像処理が施された上で、モニターに映し出されます。ひと口に光源開発といっても、内視鏡の種類は太いもの細いものなどさまざまです。製品ごとに最適な組み合わせを検討する必要があるため、システム全体を俯瞰しながら考えることが開発者には求められます。

オリンパスで働く魅力、やりがいをどんなところに感じていますか?

医療機器という人命に関わるところで仕事ができるところがこの仕事の魅力です。とくに、自分が携わった製品が実際に使用されている場面に立ち会えたときは、身が引き締まる思いと同時に大きなやりがいを感じます。検査後に笑顔で病院を後にする患者さんの姿を見て、オリンパスで働いていて良かったと思ったこともありました。日々、人の健康と命に関わり、社会に貢献できていることを実感しながら仕事ができています。

製品開発の観点からすると、内視鏡の画質向上だけでニーズを満たすのはなかなか難しい局面を迎えつつあると個人的には感じています。これからは、オリンパスがこれまでも大事にしてきた、医師の方々とのタッグを組んで、ニーズをていねいに拾いあげながら、使い勝手の面など、どれだけ付加価値を提供できるかが重要になるというのが私の考えです。内視鏡観察においてスタンダードとも言える当社の技術“NBI”に加えて、簡便さと質の高さの両立を追求した観察技術“EDOF”や病変の観察をサポートする画像処理機能“TXI”など、実際に使う人、そしてその先にいる患者さんに貢献できるようなことはまだまだあると思います。それらを実現できる製品開発を目指せると思っています。

インターン経由でオリンパスへ。入社1年目で外科カメラヘッドの光学開発を担当

これまでの仕事内容について教えてください。

就職活動の軸としていたのは、人の役に立つ仕事ができるかどうかでした。真っ先に頭に浮かんだのが医療機器。それが就職先としてオリンパスを選んだ理由です。就職活動を始めてすぐのころ、オリンパスがインターン生を募集しているのを見つけて応募したところ、幸運にも採用されました。2週間ほど働きながら学ばせてもらう中で、社風のようなものに惹かれたのを覚えています。当時の社内はとても活気があり、あちこちで社員同士が議論しながら仕事を進めている印象を受けたんです。「自分もここで働きたい」と思って本選考に進み、今に至ります。

入社後は光学開発部に配属されて、呼吸器内視鏡や外科カメラヘッドの光学開発を担当しました。呼吸器内視鏡とは、肺を検査するための内視鏡です。外科カメラヘッドとは、内視鏡下外科手術で使用する硬性鏡(曲がらない内視鏡のこと)に取り付けられるカメラのこと。体内の映像を捉えてモニター上に映し出す働きがあります。

これまでで印象に残っていることを教えてください。

外科用カメラヘッドの設計ですね。社内でも経験者が少なく、自分で調べながらの仕事だったので苦労しました。外科カメラヘッドはいろいろな硬性鏡が組み合わされる製品です。たとえば、硬性鏡には腹腔鏡以外にも、鼻腔用・泌尿器用などさまざまな種類がありますし、低侵襲(体への負担の小ささ)を優先するか、映し出される画像の解像度を優先するかなど、目的によって構成が変わってきます。外科カメラヘッドが期待通りの画像をモニターに映し出すためには、最適な組み合わせが実現されなくてはなりません。

そのため、光学開発設計者には内視鏡システム全体を俯瞰する視点が求められます。明るさや解像度、モニター上での見え方など、検討すべきファクターが多いため、外科用カメラヘッドだけでなくシステム全体に目を配る必要があるんです。

また、レンズ設計というと、職人気質のベテラン社員が担当している印象を受けますが、光学開発の領域では、若手が光学やレンズの設計を任される傾向があるように思います。私の場合も、熟練社員のもとで学びながら開発のプロセスを経験することができました。

外科用カメラヘッドの光学開発を経験できるのは、実は社内でも一握り。組み合わせを考える中で知識や視野だけでなく、人脈も広がりました。その後に担当することになるシステム開発につながる経験だったとも感じています。

あえて担当外の領域へ。“隙間”を埋めることがより良い製品づくりにつながる

光学システム開発に関わるようになった経緯について、製品開発のエピソードとあわせて教えてください。

外科カメラヘッドのチームの上長が、光学システムの開発チームのグループリーダーを兼務していたんです。外科カメラヘッドの開発に関わる中で、光源の特性に対する私の理解が少しずつ深まってきたところで、上長から『光源のことをちょっとやってみないか』と誘われて、光学システム開発を担当するようになりました。

その開発に関わるようになってからは苦労の連続でしたね(笑)。光源の開発にあたっては、光を出す機能だけでなく、スコープやイメージャー、画像処理など、組み合わせられる他の製品や部分のことも考えなくてはなりません。後になって当初想定していた明るさが得られないとわかった場合には、目標未達を挽回するための策を各部門に対して提案し、調整していくのも光源開発の役目。システム全体図をイメージし、各部門と密に連携して情報交換しながら部分的な仕様を改善するなど、広い範囲で整合を図っていくのはなかなか大変な作業でした。

こうした経験を踏まえ、仕事をする上で大切にしていることはありますか。

自分の担当外の領域にもあえて踏み込むようにしています。それぞれ明確な担当領域があり「ここは範疇ではない」と言い切ってしまうこともひとつの方法かもしれませんが、プロジェクトで仕事をしていると、どの担当にも属さない中間的な領域があると思っているんです。そういった中間的な領域を私は拾っていくことが重要だとおもっていて、自分が引き受けることでより良い製品をつくることにつながり、また自身の経験にもなると考えています。

自分の担当領域を追求するスペシャリスト型の人もいますし、そういうタイプの技術者ももちろん社内には必要です。しかし、私がこれまで開発者として取り組んできたのは、専門的なものづくりよりも、システム全体を見渡しながら、各領域をどう組み合わせていくべきかを考えること。

また、担当外の領域の方々とのコミュニケーションも本当に大切だと思います。スムーズなコミュニケーションを図る上では、最終的にどうしたいかをできるだけ伝えること。明確な完成予想図を描き、対話しながら共有するよう気をつけています。『この仕様をこうすれば目標とする画質が実現できるのですが、どうでしょう?』という具合に。できるだけイメージを的確に伝え共通認識を形成するよう努めています。

いずれは周囲から真っ先に頼られる存在に。付加価値を提供できる製品開発を目指して

今後どのような存在になっていきたいと思っていますか。

システム全体を俯瞰して見たり、考えたりできる点が自分の強みであり、これからも大切にしていきたいと思っている軸の部分です。知識やスキルを強化してますます視野を広げ、部署や会社の課題解決につなげていきたいと考えています。

広く見ようとすればするほど関わる人が増え、多くの情報が入ってきます。それだけ忙しくはなりますが、うまく役目を果たすことができれば良い関係が構築できて、頼ってもらえる場面が増えていくはずです。そうやっていずれは、『何かあれば、藤原に聞け』と思ってもらえるような存在になれたらいいですね。

加えて、後輩の育成にも力を入れていきたいと考えています。社内で上司や自分と同じように、メンバーにも活躍できる機会を提供して、チャレンジしながら働くことができる人材を増やしていくことも今後の目標のひとつです。

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