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関わる人を幸せにしたい──誠実さと最善策を創造する力で挑むリプロセス性改善の試み

  • 研究・開発

バイオメディカル エンジニア

感染対策エンジニアリング研究は、医療機器に重要なリプロセス性の評価の立場から、内視鏡と自動内視鏡洗浄消毒装置の開発に、携わる仕事です。それに加え、要素技術開発という、まだ影も形もない製品に組み込む要素は何かを探る活動にも関わっています。最善とは何かをいつも考えながら、誠実に仕事と向き合い続けたいですね。

自動内視鏡洗浄消毒装置に特化した、リプロセス性の評価と要素技術開発を担当

現在のお仕事の内容について教えてください。

内視鏡という医療機器は、何度も使うリユース機器なので、適切なリプロセス(洗浄・消毒・滅菌)が必要です。私の所属するグループでは、自動内視鏡洗浄消毒装置(以下、AER)に特化してリプロセスの工程を評価したり、評価内容がそもそも適切かどうかを判断したりしています。評価結果を分析し、製品自体の改善に向けて、開発責任者にフィードバックすることも私たちの大事な仕事のひとつです。

また、AERは洗浄、消毒性能に関する基本技術が20年以上前に確立されて以来、コアな部分は流用設計されることが多く、抜本的な変化が生まれにくい状況がありました。しかし、昨今、リプロセス性に関する重要性は増してきており、ユーザーに内視鏡を安心して使い続けてもらうためにはAER自身の進化が必要だということになり、リプロセス性を改善するための技術を探索する、要素技術開発プロジェクトが発足。その推進も行っています。

リプロセス性の評価では、リーダーとしてメンバーのマネジメントを行い、要素技術開発ではプロジェクトリーダーとして旗振り役を務めています。

仕事をする上で大切にしている姿勢、ポリシーはありますか?

ふたつあります。ひとつは、誠実であること。製品の安全性を評価する仕事であるため、自身の判断が患者さんのQOLに直結します。評価結果と冷静に向き合い、誠意をもって対応することが何より重要です。安全性に関わる重要な判断を迫られる際、常に得られた結果、技術に対して誠実でありたいという気持ちで臨んでいます。メンバーと接するときも同様です。いつも真摯に向き合っていたい想いがあり、全員が納得して仕事を進められるため言葉を尽くすよう心がけています。また、メンバーにできる限りの成長機会を提供することが責務だと考えていて、メンバーと共有している貴重な時間にも誠実でありたいです。

もうひとつは、最善策を徹底して考え抜くこと。開発の仕事には、いつも不確実性がともないます。開発途中で得られた知見をもとに、それまでの進め方を大きく見直す必要が出てくることが少なくありません。初期段階で最善と思われた方法を盲目的に信じたばかりに、手戻りが発生してしまうと、結果、プロジェクトにとってはもちろん、メンバーにとっても大きな損失となってしまいます。全体を俯瞰しながら、あえて批判的な視点から検討するなど、方向性を見直し続けることはラインマネジメントにおいて、きわめて重要な役割だと思っています。

父から受け継いだ志。ものづくりを愛した少年は、ある友人との出会いを機に医療業界へ

メンバーに対する実直な想いの背景にはどんな原体験があるのですか?医療機器業界に興味を持った経緯とあわせて教えてください。

おそらく公務員だった父の影響が大きいと思います。志が高く、いつも他人のためを考えて行動するような人でした。そんな父の背中を見て育ったせいか、自分と関わる人を、今よりも良い状態に、やや誇張していえば、幸せにできたらという想いが根底にある気がします。

オリンパスに入社したのは、大学時代にある友人と出会ったことがきっかけです。在学中に知り合った友人が、不治の病を抱えていたことから医療に関心を持ち始め、困っている人を少しでも減らしたいと思うようになりました。子どものころからものづくりに興味があり、大学で機械システム工学を専攻していた関係で、自分の得意な領域で社会貢献がしたいと医療機器メーカーを志しました

入社後に関わってきた仕事について教えてください。

とくに印象深いのが、自動漏水検査装置の立ち上げに関わったことです。入社3年目でメカ設計主査となり、メカに関する部分をすべて任されました。この機器自体が周辺的な機器とはいえ、担当範囲が広く、工場や調達の方との関わり方を学ぶことができた上に、サービスの方たちと共に販売戦略を検討する機会にも恵まれました。ものづくりから社内調整まで、新製品開発の進め方をひと通り経験できたことはとても有意義だったと思います。

同装置の北米市場への導入、日本・欧州への適用地域拡大検討の主査を担当した後、新しい十二指腸ビデオスコープと連動したAERアクセサリーの立ち上げに関わりました。このプロジェクトでは、新製品の使い方に従来から大きな変更があったため、ユーザーである医療従事者への丁寧な説明が必要になるなど、現場で対応してくれる営業やサービス、上市後にサポートいただくことになるかもしれない市場品質や安全管理部の方々とも密に連携して対応を決めていく必要がありました。

開発担当としては、製品をより良くしていきたい考えがある一方、実際にユーザーへ説明しなければならない方々にとっては、一貫性の観点から従来の製品の仕様を踏襲してほしい想いがあります。相反する両者の力の均衡を都度調整しながら、進行方法や戦略方針の立て直しが求められる中、常に最善策を模索し続けるスタンスが身についたと感じています。こちらから提案することの大切さも学べた気がします。徹底的に考え尽くした末の最善策を申し出れば、上司も適切に判断しやすくなります。また、複雑な状況の中で意思決定してもらうためには、自分なりに前提を定め、そこを起点に提案を組み立てる必要がありますので、”最善”には、自ら場をどうコントロールするかという意味合いもあると思います。

停滞したくないとの想いが原動力。関わる人に良い影響を与えられる存在であるために

感染対策エンジニアリング研究に異動した経緯、そこで得た学びについて教えてください。

十二指腸内視鏡用のAERアクセサリーを担当し、リプロセス評価に関わるようになって、医療機器メーカーとして今後ますます注力すべき領域だと思えるようになっていました。当時、組織編成上の理由から、感染対策エンジニアリング研究の前身となった組織のマネージャーが上司を務めていて、何度もやりとりを重ねるうちに、『この人のもとで新しい課題に向き合いたい、より難しい分野に挑戦したい』との想いが募っていったんです。そこで個別に面談して異動を直訴。希望がかなうかたちで今の部署に移りました。

異動したことで、仕事の幅が大きく広がったと感じます。リーダーとして特定のプロジェクトを動かすだけでなく、まだ課題すら見えてないところから取りかかって解決策を見つけ出し、どうすれば会社を良い方向へと導いていけるかを考える仕事にも携わるようになりました。要素技術開発のように、これまでにないかたちでリプロセスに関われるのは、今の部署だからこそだと思っています。

なぜ新たなことに挑戦し続けられるのですか?

自動漏水検査装置のメカ設計主査を担当したときの上司の影響が大きいと思います。その上司は自分の担当領域以外のところにも目配りできる人で、会社全体の方向性とも合致しているのが前提にはなりますが、『メンバーにこんな経験を積ませたい』と思えば、そのために仕事をつくり出すようなタイプでした。そんな果敢に新たな価値につながる業務を創出し、自ら先陣に立って実現させようと挑戦し続ける姿を間近で見ていたせいか、自分にも『停滞していたくない、チャレンジし続けたい』という気持ちがあるのかもしれません。あくまでも私自身の意識の持ち方にはなりますが、周囲に良い影響を与えられなくなったり、自分が成長している実感が得られなくなったりしたら、会社にいる意味がないと考えているところがあります。関わる人に対して、いつも良いインパクトをもたらす存在でありたいですね。

人に恵まれていることがオリンパスの魅力。自身も幸せの連鎖を生むひとつの起点に

オリンパスで働く魅力、やりがいをどんなところに感じますか?

良い人に恵まれているところがオリンパスの最大の魅力ではないでしょうか。誠実で真面目な人、いざというときに仲間のために動ける人がとても多いと感じます。

十二指腸内視鏡用のAERアクセサリーに携わっていたころのことです。課題が発生すると開発部門の垣根を超えて、さまざまな組織が解決に向けて協力し合える、足りないところを補い合える環境でした。担当製品の市場対応や法解釈で困っていたときには、品質保証に関わるQARA部門の人が親身に相談に乗ってくれたことで、解決に至ったこともあります。

また、人知れずおもしろいことをしている隠れた人材が、いろいろなところにいるのもオリンパスならでは。そんな魅力的な人と一緒に働けたり、掘り起こしてきて表舞台に立たせたりすることが楽しみでもありますね。

今後、社内でどのような存在になっていきたいですか?

個人的には、組織設計や技術戦略の立案といった仕事にも興味があります。長期的にはそういった分野でも活躍できるよう、スキルアップしていきたいです。

常に周囲に良い影響を与えられる存在でありたいと思っています。受け止めてくれた人がさらに誰かにつないでいくという具合に、幸せの連鎖のようなものを生むためのひとつの起点になれるとしたら、それ以上嬉しいことはありません。

このようにメンバーの育成に関心をもつようになったのは、PD5.0(※)がきっかけでした。PD5.0では、人材の流動的な活用による組織づくりを目指していますが、各メンバーがプロフェッショナルであることを前提としています。

育成の速度には個人差がありますし、外部からの人材流入も増加傾向にあります。すべてのメンバーが早く一人前のプロフェッショナルとして活躍し、いきいきと働けるように、また、会社や参画しているプロジェクトへ適切に貢献できるように、メンバー育成はもちろん、ラインマネジメントとしての自身の成長についても考え続けていきたいですね。

※すべての業務をプロジェクト化することで開発部隊の仕事の進め方を変革しようというオリンパスの全社的な試み

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