「Wisdom of the Wild / 時の鼓動。生命の躍動。」(パンタナール) 第12話

第12話:撮影も終盤、オオアリクイにもまた会えた。手つかずの自然が守られていくことを願っている。

撮影取材も終わりに近づいた朝、僕は水辺を歩いた。静かに小雨が降っている。カピバラのお母さんが子どもたちにオッパイをあげている。このあたりのカピバラは、なぜか体毛が緑がかった白っぽい色をしている。白茶けた粘土質の土で泥浴びをしているせいだろうか。

カピバラ 野生動物図鑑

ふと川岸に目をやると、一頭のオオアリクイが朝の散歩をしていた。地面に細長い顔を近づけ、食料であるシロアリを探している。雨降りで風もないこういう日は、野生動物に近づきやすい。ヒトのニオイが漂っていきにくいのだ。僕はそっとオオアリクイのあとをついていった。彼は食事をしながら、森の中へと消えていった。それにしてもオオアリクイは、何とも奇妙な動物だ。アフリカに生息するような野生動物は、撮影の機会も多く、ずいぶん見慣れた気がするけれど、オオアリクイはまるで異次元だ。彼が踵を返すと、どちらが頭でどちらが尻尾かわからなくなる。これまで何回かは出会ったことがあるが、見るたびに初めて出会うような新鮮な感動がある。

オオアリクイ 野生動物図鑑

僕はこの2年間で、何と5回もパンタナールを訪れた。なぜ、こんなにも魅かれたのだろう。パンタナールには、人が手をつけていない本来の自然があるからだ。地球上に残された数少ない貴重な地だと思う。1986年に「パンタナールに行ってみれば?」と僕に勧めたナショナル ジオグラフィックの編集者は、とても先見の明があったと思う。十数年前に縦貫道が開通して、観光客も訪れることができるようになったパンタナールだが、1980年代にパンタナール行きを決行していたら、動物たちはいまよりももっとシャイだったのだろうか。この稀少な自然が永遠であることを願わずにいられない。(岩合光昭)

パンタナールの空撮