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2001年12月 5日
タンパク質・DNA等の相互作用を数秒で高速解析
1分子蛍光分析装置「MMF」プロトタイプを開発
~ゲノム医療事業を本格展開~
「MMF(Multiple Molecule Fluorescence)」プロトタイプ
1分子蛍光分析装置「MMF(Multiple Molecule Fluorescence)」プロトタイプ
オリンパス光学工業株式会社(社長:菊川 剛)は、近年注目されているプロテオーム(タンパク質機能)解析分野で、1分子レベルでの生体分子(タンパク質、DNA等)の相互作用をマイクロプレート内で、数秒で解析可能な1分子蛍光分析装置「MMF(Multiple Molecule Fluorescence)」プロトタイプを、エボテック社(EVOTEC OAI AG/ドイツ・ハンブルグ/President&CEO:Joern Aldag)と共同開発しました。当プロトタイプをベースにして、創薬スクリーニングやゲノム研究市場におけるニーズを吸収し、2002年夏頃の商品化を目指します。
なお、1分子蛍光分析装置「MMF」プロトタイプは、12月9日~12日までパシフィコ横浜で開催される「第24回日本分子生物学会年会」(年会長:東京大学大学院理学系研究科・山本正幸教授)に出展致します。
主な特長
  1. タンパク質・DNA等の相互作用の高感度・低ノイズ・高速解析を実現。
  2. 解析前のサンプルの洗浄操作が不要。
  3. 固相化不要でチップから解放。
開発の背景
ヒトゲノムでは30億の塩基配列の全容が明らかになりつつあり、ゲノム研究は塩基配列を解析する「構造解析」から、遺伝子が作り出すタンパク質の「機能解析」へ移行しつつあります。遺伝子から作り出される10~20万種類のタンパク質が細胞内でどのような挙動を示し、どの生体分子と相互作用して機能を担っているかを知ることは、これからのゲノム創薬や生命現象の解明には不可欠です。
1分子蛍光分析装置「MMF」プロトタイプは、世界で初めて1分子蛍光分析法(FIMDA解析法※1)を採用し、分子の多項目のデータ(大きさ、濃度、蛍光の明るさなど)を同時計測することにより、生体内に近い環境下での分子間相互作用解析を実現しました。低分子量の化合物(医薬品など)から高分子量のタンパク質やDNAまで、幅広い解析アプリケーションに対応できます。相互相関解析法※2や偏光解析法による解析手法も可能です。
なお、「MMF」プロトタイプに搭載している1分子蛍光分析技術は、オリンパス光学工業株式会社の子会社「株式会社ノバスジーン(社長:祖父尼 俊雄/東京都八王子市)」の受託解析サービスにも採用されており、そのデータの信頼性の高さはすでに立証済みです。
主な特長の詳細
  1. タンパク質・DNA等の相互作用の高感度・低ノイズ・高速解析を実現。
    共焦点レーザー光学系と高感度光検出器(Avalanche Photodiode)を採用し、約1フェムトリットル(1000兆分の1リットル)という超微小領域中で一分子レベルの挙動を捉えることにより、ノイズ低減と蛍光シグナルの高感度計測(0.1ナノモル/リットル以上)を実現しました。また、1サンプルの解析に要する時間は数秒と、ハイスループットな解析を提供します。

  2. 解析前のサンプルの洗浄操作が不要。
    結合分子と非結合分子が混在している溶液中でも、それぞれの蛍光シグナルを同時に計測して識別できます。従来の解析手法では不可欠であった面倒なサンプル洗浄操作は全く不要です。

  3. 固相化不要でチップから解放。
    反応させたサンプルをマイクロプレートに分注して装置にセットするだけで、解析は自動的に完了します。従来の解析手法(ELISA※3や表面プラズモン共鳴※4)で必要なセンサーチップやマイクロプレート底面へのサンプルの固相化といった面倒な前処理操作も全く不要です。
※1 FIMDA解析法:
Fluorescence Intensity Multiple Distribution Analysisのこと。蛍光シグナルの解析により、複数の分子種について多項目のパラメータ計測(分子の大きさを示す並進拡散時間※5、分子濃度、1分子あたりの蛍光強度)できる演算方法。
※2 相互相関解析法:
異なる色で蛍光標識された分子の蛍光シグナルの解析により、それぞれの色の分子が個別に動いているか一緒に動いているかを解析し、分子間相互作用をより感度よく計測できる演算方法。
※3 ELISA:
Enzyme-linked immuno-sorbent assayのこと。固相酵素免疫検定法といい、抗原または抗体を酵素で標識し、抗体または抗原の存在を、酵素活性を利用して検出する方法。
※4 表面プラズモン共鳴:
Surface Plasmon Resonanceのこと。被測定サンプルを固相したセンサーチップ表面で生じる微量な質量変化をSPRシグナルとして光学的に検出することで、2分子間の結合と解離の状態を解析する方法。
※5 並進拡散時間:
分子の大きさにしたがって、増大する分子の物理的係数。
EVOTEC OAI AGの概要
住所 :schnackenburgallee 114,22525 Hamburg, Germany
President&CEO :Joern Aldag
設立 :1993年
事業内容 :革新的な独自技術をベースに、より効率的な創薬のために付加価値の高い製品・サービスのラインアップを提供しています。生物、化学、創薬スクリーニング分野での様々な解析手法を統合することにより、創薬研究とゲノム創薬の為の重要な要素となる独自のワン・ストップ・ショップを確立しています。従業員数(ドイツのハンブルク、イギリスのアビングドン)は約540名。フランクフルト証券取引所のNeuer Marktに上場されています。
URL :http://www.evotecoai.com
主な仕様
解析手法 :1分子蛍光分析(FIMDA解析法)、相互相関解析法、偏光解析法
測定項目 :濃度、並進拡散時間、分子蛍光強度、相互相関、偏光
レーザー波長 :488nm、543nm、633nm(2波長同時計測可能)
測定容器 :ガラスボトムマイクロプレート(96、384、1536 well/plate)
装置外観 :本体は卓上型 W700 x H450 x D600。レーザーコンバイナは外付け
自動調整 :レーザー強度、焦点位置、共焦点ピンホール、対物補正環など
当プロトタイプの外観、仕様は実際の商品と異なることがあります。
関連リンク
EVOTEC OAI AGホームページ
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
  • 本リリースに掲載されている内容は、報道関係者向けに発表した情報です。
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  • 掲載されている社名、製品名、技術名は各社の商標または登録商標です。


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