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2002年 1月28日
世界初、「遺伝子解析用DNAコンピュータ」を開発
~遺伝子発現頻度計測のサンプル注入から定量反応までの
全工程の自動高速処理を実現~
遺伝子解析用DNAコンピュータの開発機
「遺伝子解析用DNAコンピュータの開発機」
オリンパス光学工業株式会社(代表取締役社長:菊川 剛)は、膨大な検査・解析需要が予想される遺伝子解析に向けて、DNA同士の化学反応を演算に利用することで大容量、超並列処理を可能とする実用的な遺伝子解析用のDNAコンピュータを東京大学大学院総合文化研究科の陶山 明助教授、株式会社ノバスジーン(本社:東京都八王子市/代表取締役社長:祖父尼 俊雄。以下、ノバスジーン)との共同研究により、世界で初めて開発しました。本開発機は2002年1月末にノバスジーンへ設置後、実サンプルを用いた遺伝子発現頻度計測※1での性能評価を2002年中に完了した上、2003年から本格的な解析サービスの開始を予定しています。
将来的にはDNAコンピューティング技術の持つ大容量、超並列性、エネルギー消費量が少ないという特徴を生かし、SNP※2解析や疾患遺伝子の検出などへ汎用性を追求することで、遺伝子診断やゲノム創薬など実用化が急がれる医療、研究への貢献を目指します。
尚、本開発機の性能検証結果は、2002年6月10日から13日まで北海道大学で開催される「8th International meeting on DNA based Computers:DNA8」において、DNAコンピュータの開発成果として発表を予定しています。
主な特長
  1. 遺伝子発現頻度計測を高精度、高速、低価格で実現可能
  2. DNA反応に用いる汎用性のある人工DNA断片※3を専用の設計ソフトウェアで設計
  3. 磁性粒子を用いた分離技術※4の導入により反応の信頼性を向上
開発の背景
DNAコンピュータは、1994年に概念が提唱され、欧米を中心に研究が進められてきました。DNAがもつ物理化学的性質を活用し、論理演算系列としてDNA同士の反応系列を実現することで計算・計測を行なうコンピュータで、超並列性と大容量メモリという特長に加え、DNAをそのまま入出力データとして演算処理が可能なため、実際の細胞、組織に適用してさまざまな遺伝子診断や遺伝子解析を高精度・高速・低コストで行なうことが可能となります。
当社では、早くからその研究・開発に着目し、三井情報開発株式会社との共同出資により2001年2月15日に遺伝情報解析サービスを行なう研究開発型ベンチャー「株式会社ノバスジーン※5」を設立し、サイエンティフィック・アドバイザリ・ボードの東京大学大学院総合文化研究科・陶山 明助教授による技術支援のもとDNAコンピュータの共同研究を進めてきました。ヒトゲノム計画がほぼ完了し、3万から4万と言われるヒト遺伝子の同定、機能解析の著しい進捗を背景に、テーラーメイド医療の実用化に伴う膨大な検査需要の発生が予測され、当社は世界に先駆けて実用的な遺伝子解析用DNAコンピュータの開発を目指してきました。
主な特長の詳細
  1. 遺伝子発現頻度計測を高精度、高速、低価格で実現可能
    サンプル注入から定量反応終了までの全工程を自動化することにより、従来マイクロアレイ等を用い約3日間費やしていた手法を6時間に大幅短縮しました。1ウェル内で約100種類の特異的反応を最大96ウェルまで精度良く同時処理することが可能です。

  2. DNA反応に用いる汎用性のある人工DNA断片を専用の設計ソフトウェアで設計
    DNAコンピュータのメモリ部分(演算処理媒体)に当たり、DNA反応に用いる、相補的な配列のみがハイブリダイゼーションする精度を確保した、正規直交性のある人工的なDNA断片を専用の設計ソフトウェアにより設計、合成しました。これらDNA断片の組み合わせには汎用性があり、処理プログラムを変更させるだけで、さまざまな解析手法に最適化したり、異なる疾患や生物種の遺伝子の解析に用いることができます。

  3. 磁性粒子を用いた分離技術の導入により反応の信頼性を向上
    ゲノム解析分野で実績のあるプレシジョン・システム・サイエンス株式会社(本社:千葉県松戸市、代表取締役社長:田島 秀二)の磁性粒子を用いた分離技術(Magtration Technology)をシステムに導入し、信頼性を向上させています。
※1 遺伝子発現頻度計測
細胞内に存在するmRNA(DNAの情報を伝達するRNA)の種類や量を解析し、注目している遺伝子の機能・役割等を計測すること。
※2 SNP
ヒトゲノム上では300~500塩基に1つ出現するとされている1塩基の違いを言い、通常SNP(Single Nucleotide Polymorphism):一塩基多型と呼ばれている。病気になり易さの判定、薬剤に対する応答性の違い、薬剤に対する副作用の違いを調べるマーカーとして期待されている。
※3 人工的なDNA断片
標的とするDNA塩基配列に相補的な20塩基程度(オリゴ)の鋳型(いがた)DNA。
※4 磁性粒子を用いた分離技術
磁性粒子にDNAを捕獲し、この粒子を磁石で制御することで溶液からのDNAを分離する技術。これにより、特定の配列のDNAを抽出したり、反応後の余剰なDNA断片を純度高く洗浄し分離することが可能。
※5 株式会社ノバスジーン
現在、株式会社ノバスジーンは、オリンパス光学工業株式会社、三井情報開発株式会社、三井物産株式会社の三社からの出資を受けている。
遺伝子解析用DNAコンピュータの構成
分子計算部-電子計算部をハイブリッド型にすることで計算の振り分けにより速度を向上する。
遺伝子解析用DNAコンピュータの構成
入出力がDNAで、組み合わせ計算を担当する。
反応の実行、結果DNAの取得、DNAの検出を行う。
処理プログラム実行・出力、計算反応計画、結果の解釈、を担当する。
Magtration Technologyは、プレシジョン・システム・サイエンス株式会社の登録商標です。
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
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