本文の始まりです


2002年 9月26日
3次元構造基板マイクロアレイを用いた反応・解析システム
従来比1/10以下の反応時間、高感度、簡便な操作性を実現
次世代DNAマイクロアレイシステム「FD10」発売
次世代DNAマイクロアレイシステム「FD10」
次世代DNAマイクロアレイシステム「FD10」
オリンパス光学工業株式会社(社長:菊川 剛)は、従来の2次元基板を用いたマイクロアレイと比べ、数百倍量のプローブ固相化を可能にする3次元構造基板を用いたカスタムメードタイプのマイクロアレイ注1「PamChip(R)」と、簡便な操作性に加え、従来比1/10以下注2の短時間(20分~2時間以内)で再現性の高いアレイ画像取得を可能とする、ハイブリダイゼーションインキュベータならびに画像取得光学系を統合化した次世代DNAマイクロアレイ※1装置「FD10」を発売します。2002年10月1日から国内及びアジア地域の大学、研究機関、創薬・食品メーカーをターゲットに販売を開始します。
注1  お客様からのご要望に応じた遺伝子検索用プローブを、3次元構造基板にスポットしてご提供します。
注2  2002年9月26日時点。
なお、「FD10」は、10月1日から3日まで東京国際フォーラムで開催される第61回日本癌学会(学会長:(財)癌研究会癌研究所 北川 知行 所長)に出展いたします。また同学会において、共同研究先である名古屋市立大学大学院医学研究科・実験病態病理学 白井 智之 教授、大阪市立大学大学院医学研究科・都市環境病理学 福島 昭治 教授、および大雄会医科学研究所 玉野 静光 所長らのグループが、発癌に関する化学物質の毒性評価※2への本マイクロアレイシステムの応用例を注3発表する予定です。
注3  日本癌学会予稿集による。
発売の概要
製品名 発売時期
次世代DNAマイクロアレイ装置「FD10」 2002年10月1日
3次元構造基板マイクロアレイ「PamChip(R)
(要望に応じプローブ搭載、最大192種/アレイ)
2002年10月1日
(注)  カスタムメードアレイのため、搭載遺伝子種、プローブ数、受注枚数によって価格が変動します。また遺伝子発現頻度解析※3用の他、遺伝子突然変異※4解析用、多型(SNP※5)解析用も受注いたします。
主な特長の概要
  1. 高感度かつ再現性の高いマイクロアレイ解析を実現
  2. サンプル添加からアレイ画像取得まで従来比1/10以下の時間で迅速反応を実現
  3. 簡便な操作性、多様かつ安価な蛍光色素にも対応
  4. 経時変化、温度変化に対応した画像取得によりカイネティック※6なシグナル検出が可能
  5. 多様な解析アプリケーションに対応
3次元構造基板マイクロアレイ「PamChip(R)」
3次元構造基板マイクロアレイ「PamChip(R)
市場導入の背景
DNAマイクロアレイ技術は、いまやライフサイエンス研究に不可欠なツールとなっていますが、近年、医療・創薬などのより実用的な分野でマイクロアレイ技術を有効に活用しようとする動きが高まっています。医療分野では、疾患の早期診断や個々人の薬剤応答性評価に応用することで、治癒率の向上やテーラーメード医療の実現が望まれています。また創薬分野では、生体に毒性を及ぼす化合物が示す特徴的な遺伝子発現誘導・抑制パターンをマイクロアレイにより解析し、その結果を蓄積・規格化して、多数にのぼる薬剤候補化合物の毒性評価に応用することで、最終的に動物実験で毒性評価すべき化合物数を大幅に絞り込むことが可能になり、医薬品開発日数・コストを大幅に削減できると期待されています。そしてこれらの応用場面では、従来のゲノム全遺伝子を対象とした大規模なマイクロアレイではなく、検索対象を、特定の疾患や薬剤応答性、毒性に関連した数十~数百種類という比較的少数の遺伝子群に絞り込んだ、しかもデータの信頼性および再現性が高いフォーカスドアレイ※7が望まれており、将来的には、このようなアレイが研究市場のみならず臨床検査市場においても普及していくと考えられます。

この度発売する「FD10」は、次世代フォーカスドDNAマイクロアレイシステムとしてPamGene(パムジーン)B.V.(以下PamGene社、所在:オランダ・ヘルトゲンボシュ市、CEO:Tim Kievits)と共同開発したものです。独自の3次元構造基板を採用したマイクロアレイと、その構造に最適化した効率の良いハイブリダイゼーション反応ならびに迅速なアレイ画像取得を可能にする、ハイブリダイゼーションインキュベータおよび画像取得光学系を統合化した装置からなっており、簡便かつ迅速な解析のみならず、高いデータ信頼性、再現性、および感度を実現しています。

今後もアプリケーション開発を大学や研究機関のご協力のもと積極的に進めていくことにより、遺伝子機能解析の研究を支援し、テーラーメード医療の実現を目指し社会に貢献してまいります。
主な特長の詳細
  1. 高感度かつ再現性の高いマイクロアレイ解析を実現

    3次元構造基板(フロースルー型多孔質フィルター)の採用により、従来型マイクロアレイと比較してスポットあたりのプローブ固相化量を数百倍に高めました。またフロースルー型基板構造を活かした溶液駆動式ハイブリダイゼーションを実施し高効率の反応を実現するインキュベータ、および迅速な画像取得を可能にするCCD撮像式画像取得光学系を統合化した装置により、高感度かつ再現性の高い解析を実現しました(f(10-15)molオーダー注5の標的(ターゲット)核酸を検出可能:50μl中に1.5 X 109個存在するターゲット分子を検出可能)。

    さらにデータ信頼性および再現性に大きな影響を及ぼす反応時の各種条件(温度、時間等)はソフトウェアにより簡単に制御が行なえ、多数のサンプルを均一な条件で再現性よく反応させることが可能です。
    注5 アンチセンスオリゴを標的核酸とした場合。2002年9月26日時点。

  2. サンプル添加からアレイ画像取得まで従来比1/10以下の時間で迅速反応を実現

    フロースルー型基板構造を最大限に活かし、サンプル溶液を基板内に一定の速度で繰り返し通過させ、プローブとサンプル核酸の反応効率を高める独自の溶液駆動式ハイブリダイゼーション様式を導入することで、サンプル添加からアレイ画像取得までの時間を従来比1/10以下へと、迅速な反応を実現しました。

  3. 簡便な操作性、多様かつ安価な蛍光色素に対応

    蛍光標識したサンプルを、「FD10」本体にセットした「PamChip(R)」に滴下するだけで、反応からアレイ画像取得までの一連の操作を、同一の装置で連続的に実施できます。またアレイ画像取得には蛍光顕微鏡をベースとした光学系を用いているため、サンプルの蛍光標識には、多様かつ安価な蛍光色素を用いることができます。

  4. 経時変化、温度変化に対応したカイネティックなシグナル検出が可能

    ハイブリダイゼーションインキュベータとアレイ画像取得光学系の統合化により、ハイブリダイゼーション反応経過に伴うシグナル強度の変化や、反応温度を変化させながらのカイネティックなシグナル検出が可能です。

  5. 多様な解析アプリケーションに対応

    遺伝子発現頻度解析を始め、遺伝子突然変異解析、多型(SNP)解析まで多様な解析アプリケーションに対応します。
次世代DNAマイクロアレイ装置「FD10」の装置構成
次世代DNAマイクロアレイ装置「FD10」の装置構成
装置構成
溶液駆動式ハイブリダイゼーション
PamCLIP(R)ハイブリダイゼーション様式
PamCLIP(R)ハイブリダイゼーション様式
※1  DNAマイクロアレイ
数多くの遺伝子の発現や変異を検出するセンサデバイスで、スライドガラスなどの基板上に直径百マイクロメートル程度のスポットで検出用プローブを固定化したデバイス。
※2  化学物質の毒性評価
化学物質の人を含めた生態系に対する安全性を評価すること。
※3  遺伝子発現頻度解析
細胞内に存在するmRNA(DNAの情報を伝達するRNA)の種類や量を調べる解析。
※4  遺伝子突然変異
遺伝情報であるDNAの塩基配列の一部が、置換あるいは挿入・欠失し、本来の遺伝子情報が失われること。がん等の疾患の原因となる。
※5  SNP
ゲノム上で300~500塩基に1個出現するとされている1塩基の違いを言い、通常SNP(Single Nucleotide Polymorphism)と呼ばれている。病気になり易さの判定、薬剤に対する応答性の違い、薬剤に対する副作用の違いを調べるマーカーとして期待されている。
※6  カイネティック測定
ある反応の起こる速度を種々の条件下で測定し、それを解析することにより、より詳細に反応機構を明らかにする測定。
※7  フォーカスドアレイ
目的別に検索対象を絞り込んだ、数十~数百種類の比較的少数のプローブを搭載したアレイ。
主な仕様
3次元構造基板マイクロアレイ「PamChip(R)
プローブ種類・数 オーダーによる
適用可能解析 遺伝子発現頻度解析、遺伝子突然変異解析、多型(SNP)解析
次世代マイクロアレイ装置「FD10」
対応マイクロアレイ PamChip(R)
照明装置 メタルハライド光源
撮像方式 冷却CCD方式
対応色素 標準対応:FITC
(Cy3, Cy5はオプションで対応予定です。)
温度制御 温度範囲:35℃~80℃
溶液制御 4チャンネルシリンジポンプによる
洗浄方法 セミオート
装置寸法
(突起部を除く)
本体:W621x H659 x D543mm
光源電源 :W100 x H125 x D200mm
制御部(PC):W621 x H459 x D447mm
重量 約110kg(PCを含む)
電源および消費電力 100V~ 7.3A 50/60Hz (PCを含む)
制御部(PC) デスクトップ型AT互換機
液晶モニター(17インチ、SXGA)
OS:Windows(R) 2000 SP2
解析ソフトウエア
ソフトウェア構成 遺伝子発現頻度解析用
遺伝子突然変異/多型(SNP)解析用
対応画像データ 16bit TIFF画像
PamGene B.V.の概要
Chief Executive Officer: Tim Kievits
所在地: Burgemeester Loeffplein 70A 5211
RX 's-Hertogenbosch, The Netherlands
連絡先: Tel: +31 (0)73 615 80 80
Fax: +31 (0)73 615 80 81
事業概要: PamGene社は、第2世代マイクロアレイプラットフォームと遺伝子発現解析システムにつき特許を保持するポストゲノムバイオテクノロジーカンパニーであり、GIMV社、Alta Partner社、Life Science Partner社、およびオリンパス光学工業(株)などから投資を受け、さらにオリンパス光学工業(株)とは戦略的パートナーシップを締結しています。このたび共同開発したマイクロアレイは、より迅速、かつ正確な、しかもコスト効率に優れた解析を可能にし、これらの技術を学術研究、製薬・バイオテク産業の研究開発分野やヘルスマネジメント分野、さらに農業・食品等の非製薬ライフサイエンス分野に供給していきます。PamGene社は、コアテクノロジーであるマイクロアレイをベースとした多様な商品群により、創薬や学術研究、およびヘルスマネジメントやバイオテクノロジー分野の研究・開発に大きく貢献します。
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
  • 本リリースに掲載されている内容は、報道関係者向けに発表した情報です。
  • 掲載内容は、発表日現在の情報であり、ご覧になっている時点で、予告なく情報が変更(生産・販売の終了、仕様、価格の変更等)されている場合があります。
  • 掲載されている社名、製品名、技術名は各社の商標または登録商標です。


本文の終わりです