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2004年11月24日
オリンパス、バイオ基礎研究、医療、製薬分野の発展に貢献する
小動物の蛍光分子イメージング※1装置2機種を開発
「マイクロレーザ走査型顕微鏡」の試作機 「生体内観察装置」の試作機
「マイクロレーザ走査型顕微鏡」の試作機   「生体内観察装置」の試作機
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛)は、小動物生体内の蛍光分子イメージングを目的とする装置2機種を開発しました。ミクロ観察が可能な「マイクロレーザ走査型顕微鏡」は、NEDOの助成を受けた研究テーマ※2を応用して開発され、小動物の生体内に世界最小の1.3mmの対物レンズを入れて臓器などを蛍光観察する顕微鏡です。また、小動物体内の蛍光色素反応を外側から観察する「生体内観察装置」は、新しい光学系を採用し、幅広い倍率での観察を高感度で実現しました。これらの技術により、たとえば生体内でしか生じないがんの転移や血流などをリアルタイムで観察することが出来るだけでなく、薬効、病気の治療の研究などへの幅広い貢献が期待されます。今後は本技術の製品化、そして更に将来の人への応用も視野に入れ、開発を進めていきます。
※1  蛍光分子イメージング:生きた細胞の中で、生命現象をつかさどる個々の分子機能を解析するため、蛍光を用いて細胞や分子の動態を解析する技術。蛍光標識された化合物の動態解析や、ガン細胞およびタンパク質局所解析を「システム」として解析することにより、分子の動態を可視化することで、あらたな医薬品の開発、疾患治療などへつなげて行くことを目的としています。
※2  NEDOの助成を受けた研究テーマ:平成13年から15年のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から助成を受けた内視鏡の研究テーマ「エンドマイクロスコープの実用化開発」。内視鏡のチャネルに挿入するレーザー走査型顕微鏡の実用化開発の多波長型エンドマイクロスコープ技術。
マイクロレーザ走査型顕微鏡
「マイクロレーザ走査型顕微鏡」は主に小動物の胃や心臓など、事前に任意の場所に導入された蛍光色素部分に、直接極細の顕微鏡対物レンズを挿入し、詳細な観察をすることができるレーザ走査型の顕微鏡で、観察像はモニター上に表示されます。体内の血流の様子、生体内での分子の連鎖(シグナルパスウェイ)の動き、薬の効きやすさ、病気の解明の研究などに向けて開発されました。
「マイクロレーザ走査型顕微鏡」の主な特長の概要
1.  世界最小の1.3mmの対物レンズ
  2.  複数のレーザで幅広い観察方法が可能に
生体内観察装置
「生体内観察装置」は、小動物の体内に導入された蛍光色素の反応を高感度で検出し、イメージングする装置です。倍率変換が可能な光学系を搭載し、小動物全体のマクロ観察から細胞レベルの極小部位の観察まで1台で幅広く対応します。体内の分子の連鎖やがんの転移の様子、投与された薬物の効果などを小動物が生きたままの状態で観察することができます。
「生体内観察装置」の主な特長の概要
1.  小動物の体内の微弱な蛍光を外側から高感度で観察できる新光学系
  2.  ミクロからマクロまでの幅広い倍率にすばやく変換
  3.  常に最適な状態での観察を実現するためにCCDカメラと光学系の自動調整が可能
開発の背景
すべての生命現象は、分子の連鎖(信号伝達:シグナルパスウェイ)によって生じており、生体内の分子の動きを観察するいわゆる「分子イメージング」へのニーズが近年高まっています。病気を発生する分子の連鎖を断ち切ることで病気を治療することができ、それを実現する「分子医薬」※3は、絶大なる効果があります。また、生命科学の研究が進む中、基礎研究と臨床の距離が以前と比べ縮まってきました。それと共に、基礎研究で得られた「シーズ」と臨床分野からの「ニーズ」を融合した双方向のシステム、いわゆる「トランスレーショナルリサーチ」の重要性も認知されています。
今回開発されたミクロからマクロまで幅広く小動物の生体を観察できる顕微鏡技術は、医学、生物学、薬学、薬効の研究、代謝やがんの転移など、生体でしか生じない現象の研究や、分子単体、細胞での研究成果を医療に応用するためのトランスレーショナルリサーチの分野などに向けて開発され、オリンパスの従来の顕微鏡や内視鏡事業で培った、分子や生体内イメージングの要素技術が活かされています。特に「マイクロレーザ走査型顕微鏡」は、NEDOの助成を受けた内視鏡の研究テーマ「エンドマイクロスコープの実用化開発」の成果と、レーザ走査型顕微鏡の技術を融合させ開発されました。また、小動物を経時的に観察することができるため、結果的に使われる実験小動物の量を飛躍的に少なくすることができます。今後はバイオ基礎研究領域、およびトランスレーショナルリサーチ分野の発展と社会貢献を目指し、同技術の製品化、そして更には人への応用も視野に入れ開発を続けていきます。
※3  分子医薬:最近、がん治療などで注目されている新しい治療薬。病気に関係がある細胞だけに働きかける機能を持っており、従来とくらべ副作用が少ないと言われている。
「マイクロレーザ走査型顕微鏡」の主な特長の詳細
1.  世界最小の1.3mm対物レンズ
  小動物の体内に挿入可能な世界最小の極細顕微鏡対物レンズを開発しました。これはNEDOから助成を受けた内視鏡の研究テーマ「エンドマイクロスコープの実用開発」で培われた技術を応用したもので、最大倍率約1000倍での観察が可能です。
左側は0.5mmメカニカルペンシル
右が世界最小1.3mm対物レンズ
2.  複数のレーザで幅広い観察方法が可能に
  実験の目的に応じて、遺伝子発現の観察に使われる蛍光タンパクなどに対応するアルゴンレーザをはじめ、小動物体内を透過しやすい赤から近赤外レーザなど複数のレーザ光源を搭載。
「生体内観察装置」の主な特長の詳細
1.  小動物の体内の微弱な蛍光を外側から高感度で観察できる新光学系
  明るい蛍光画像を得るために最適な光学系を3次元CADを用いて開発しました。高感度な観察が可能な厳選されたガラス材を使用しています。
2.  ミクロからマクロまでの幅広い倍率にすばやく変換
例えば、小動物の全体像を得るための低倍観察の後、倍率を上げて皮下のがん細胞付近に新生する毛細血管の血流の状態を観察するといった場合に対応できるように、広い観察倍率比を実現。
3.  常に最適な状態での観察を実現するためにCCDカメラと光学系の自動調整が可能
  倍率にあわせて自動的に照明条件を設定する機能を搭載しています。また、画像処理ソフトウェア上で実験に使用する蛍光色素と観察倍率を入力すれば最適な状態での観察が可能
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