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2007年10月15日

大きさ2mm以下の超早期がんの発見を目指して
世界最小*1の「小型分光素子」を搭載

分子イメージングが可能な「分光ビデオ内視鏡システム」技術を開発

小型分光素子 分光ビデオ内視鏡の先端部
「小型分光素子」 「分光ビデオ内視鏡の先端部」

オリンパス株式会社(社長:菊川 剛)は、粘膜内部にとどまっている大きさ2mm以下の超早期がんの発見のために、がんに関連する分子と反応する複数の蛍光プローブ*2を選択的に検出することを目的とした分子イメージング用「分光ビデオ内視鏡システム」*3技術を開発しました。同システムは、先端部外径10mmのビデオスコープの先端部に直径6.9mmの世界最小の「小型分光素子」を搭載し、通常観察(白色光)に加え、600~800nmの波長帯域でがんに関連する複数の分子情報を検出することが可能です。2013年度に市場評価開始を目指します。

※1 画像取得できる分光素子において。2007年10月15日現在。オリンパス調べ。
※2 対象物質と相互作用するような物質を蛍光色素に細工したもの。対象物質の存在の確認が可能。
※3 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノ医療デバイス開発プロジェクト」の一環として2004年8月に採択され、2007年3月まで助成を受けた開発成果。

「分光ビデオ内視鏡システム」の技術概要

先端部外径10mmの分光ビデオ内視鏡は、通常観察(白色光)に加え、青色光を照射して生体に含まれるコラーゲンなどの蛍光物質からの自家蛍光*4を捉え、腫瘍性病変と正常粘膜を異なる色調で強調表示する自家蛍光観察機能を搭載しています。さらに、粘膜内部にとどまっている大きさ2mm以下の超早期がんに関連する分子を検出するために、新たに内視鏡先端部に直径6.9mmの世界最小の「小型分光素子」を搭載しました。「小型分光素子」は、光の干渉を利用して、CCD(固体撮像素子)に入射する光の透過波長を任意に設定することが可能です。これは、反射コートを施した2枚のフィルタを高精度に配置し、フィルタ間の距離(光路差)を制御することで実現します。また、がんに関連する分子情報を捉えるために、600~800nmの波長帯域で10nm以下の高分解能で複数の波長の蛍光プローブを選択的に検出することが可能です。

※4 生体組織に青い光を当てると、緑から赤にかけての微弱な光を発光する現象。生体が本来持っている蛍光成分による。
「小型分光素子」の原理 2つのフィルタ間の距離と入射する光の波長が一致する時にその波長の光が透過する。

「小型分光素子」の原理

開発の背景

近年、高齢化・生活習慣の変化に伴い、がんの患者数が増加傾向にあります。このため、がん患者の生存率向上とがんにかかわる医療費を抑制するための早急な対策が必要とされています。これに対する最も効果的な方法として、がんの転移の危険がほとんどない段階での早期な発見、診断があげられ、これを実現することでより低侵襲な内視鏡治療につながります。 当社は、1950年に世界で初めて胃カメラを実用化して以来、粘膜表面の色調や形態の微妙な変化を捉えるために、内視鏡の高画質化に向けた技術開発を進めてきた結果、2002年に高精細なハイビジョン画質での観察を可能にしました。2006年には、照明光の波長を制御することによって、病変の手がかりとなる粘膜表層の毛細血管やわずかな粘膜の肥厚、深部血管など粘膜内側の情報を強調表示する「光デジタル法による画像強調観察」*5が可能な内視鏡ビデオスコープシステム「EVIS LUCERA SPECTRUM」を商品化しました。現在の内視鏡では、1cm~2cm程度のがんと疑われる組織の観察が行われていますが、当社は「光デジタル法による画像強調観察」技術をさらに発展させ、より特異的にがんの芽(分子)を捉えることで2mm以下の超早期がんの検出を目指し、他臓器やリンパ節への転移リスクの少ない段階での低侵襲な治療につなげ、患者さんのQOL向上に貢献していきます。

※5 光学フィルタを用い特定の波長帯域の光のみを捉え、生体組織の特徴的な変化をデジタル画像処理により強調表示する画像強調観察法のこと。粘膜表層の毛細血管や粘膜微細模様が強調表示される「狭帯域光観察(NBI)」、腫瘍性病変と正常粘膜が異なる色調で強調表示される「蛍光観察(AFI)」、粘膜深部の血管や血流情報が強調表示される「赤外光観察(IRI)」の3つの観察機能が実用化されている。

「ナノ医療デバイス開発プロジェクト」の開発体制

助成先
1. オリンパス株式会社 研究開発センター
  • がん分子情報検出用分光イメージング機構及び内視鏡への組込み技術の開発
  • 生体内光特性や生体内光学マーカー評価用の解析機器の構築と評価
共同研究先
2. 北海道大学 電子科学研究所 田村 守教授
  • 生体内光特性解析技術の開発
委託先
3. 東京大学 大学院薬学系研究科 長野 哲雄教授
  • 生体内光学マーカー等の評価と探索
4. 京都府立医科大学 大学院医学研究科 高松 哲郎教授
  • 生体内光特性解析技術の開発・評価
  • 生体内光学マーカー等の評価
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