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2011年10月26日

生体の透明化と、深部4mmまでの顕微鏡観察を世界で初めて※1可能にした

標本透明化液「SCALEVIEW-A2」と
SCALEVIEW浸25X多光子専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」を発売

~脳神経研究における顕微鏡観察領域の拡大へ~

標本透明化液「SCALEVIEW-A2」 SCALVIEW 浸 25X 多光子専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」

標本透明化液「SCALEVIEW-A2」

SCALVIEW 浸 25X 多光子専用対物レンズ
「XLPLN25XSVMP」

オリンパス株式会社は、標本組織を傷つけることなく表面から深部4mmまでを高精細に観察できる、標本透明化液「SCALEVIEW(スケールビュー)-A2」と、SCALEVIEW浸25X多光子専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」を発売します。2011年11月1日から日本・アメリカで、その後アジアやヨーロッパで順次発売します。

標本透明化液「SCALEVIEW-A2」は、ホルマリンなどで固定※2された生体から散乱※3を取り除き、ゼリーのように透明化する水溶性の液体です。透明化することで、蛍光タンパク質で標識した標本組織をスライスせずに深部まで観察することができます。本液体は、独立行政法人理化学研究所(理事長:野依良治)が開発し、オリンパスが独占販売契約を結びました。

また、専用の顕微鏡対物レンズ「XLPLN25XSVMP」も新たに開発しました。新設計の本レンズは、多光子励起※4レーザ走査型顕微鏡「FV1000MPE」と併せて使用し、透明化された標本組織を観察することで、世界で初めて組織の表面から深部4mmに至るまでの高精細な蛍光観察を可能にしました。

発売の概要

製品名 発売日
標本透明化液「SCALEVIEW-A2」 2011年11月1日
SCALEVIEW浸25X多光子※4専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」
※1 2011年8月30日現在、当社調べ。
※2 ホルマリンによる固定とは、ホルマリンに含まれるホルムアルデヒドが、組織の細胞内外に浸透し、分子中のアルデヒド基が主に組織中のタンパク質のアミノ基に結合し、さらに架橋することで、その時点で死後変化を停止させること。
※3 生体の散乱とは、細胞膜や細胞内微小器官(ミトコンドリアや細胞核など)により光がまっすぐに進めない状態が複雑に重なった結果、生体に入った光が生体内であちこちに散らばってしまう現象。
※4 多光子励起による蛍光観察とは、観察したい部分だけを蛍光で光らせる手法。生体深部まで届く近赤外の光を使用するため深部観察に有利。

主な特長

  • 「SCALEVIEW-A2」:前処理した標本を液体に浸漬するだけで、標本の透明化が可能
  • 「XLPLN25XSVMP」:標本組織の深部4mmまでの高精細な観察を実現

市場導入の背景

生命科学・医学の研究分野では、脳のメカニズムや生命現象の解明にとどまらず、疾患の治療に生かすことを目的にした研究が増えつつあります。中でも近年は、マウスの脳で神経細胞同士の連絡(コネクション)を網羅的に解明する「コネクトミクス(コネクトームプロジェクト)」という研究が世界規模で行われています。

オリンパスは、この研究領域を重要な分野のひとつと捉え、これまで共焦点レーザ走査型顕微鏡「FV1000-D」や、脳の深部まで観察できる多光子励起レーザ走査型顕微鏡「FV1000MPE」など、製品を拡充してきました。今回発売する製品は、理化学研究所が開発した技術を用いた画期的な透明化液とそれを極限まで生かす対物レンズにより、マウスの脳表面から海馬※5まで、深部4mmにわたる領域をカバーします。これまでの深部観察の限界を超えて、最先端の脳神経系研究に貢献します。

※5 脳内において、記憶をつかさどる重要な組織。

主な特長の詳細

「SCALEVIEW-A2」
前処理した標本を液体に浸漬するだけで、標本の透明化が可能

「SCALEVIEW-A2」は、ホルマリンで固定された生体試料における光の吸収や蛍光を損なうことなく、光の散乱を除く働きを持つ水溶性の溶液です。本溶液に浸漬するだけで、哺乳類動物の脳が時間経過とともに透明になります。脳組織の薄切片を作製しなくても、蛍光タンパク質で標識された構造を、表面から深部に至るまで詳細に観察することができます。
本液体は、理化学研究所が開発した「ScaleA2」と同じ基本組成で作製されていますが、さらに当社専用対物レンズ「XLPLN25XSVMP」と組み合わせて最高のパフォーマンスが発揮できるよう光学的調整が施され、厳密な品質管理の下に販売します。

「XLPLN25XSVMP」
標本組織の深部4mmまでの高精細な観察を実現

「SCALEVIEW-A2」を使用し透明化した標本は、本対物レンズと併せて使用することで、組織を傷つけずに深部4mmまでの観察が可能になります。多光子励起による蛍光観察するために最適化された本レンズは、高い「NA」※6・長い「作動距離」※7という特徴を持ち、今まで観察が困難であったマウス脳の表面から海馬まで、より深部へのアプローチが可能になります。本レンズは、多光子励起レーザ走査型顕微鏡「FV1000MPE」専用対物レンズとなります。

※6 Numerical Aperture(開口数):対物レンズの性能(分解能・焦点深度・明るさなど)を判断する重要な指標。
※7 物体面に焦点を合わせた時の対物レンズの先端から物体面(カバーガラスを使用する対物レンズの場合にはカバーガラス上面)までの距離。

「SCALEVIEW-A2」仕様

光学特性 屈折率ne(23℃)
1.380
アッベ数νe(23℃) 51
容量 1000ml

「XLPLN25XSVMP」仕様

開口数(NA) 1.0(SCALEVIEW浸)
作動距離(W.D.) 4mm
カバーガラス厚(mm) 0~0.23mm
視野数 18
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