創薬市場の研究効率向上やリスク低減に貢献が期待 3次元細胞解析技術を開発ヒトの生体環境に近い3次元培養サンプルの観察・解析が可能

2018年9月10日


「FV3000」と3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」


3次元細胞モデルの例 スフェロイド


オリンパス株式会社(社長:笹 宏行)は、科学事業の新技術として、創薬市場の研究効率向上やリスク低減に貢献が期待できる3次元細胞解析技術を開発しました。本技術を搭載したソフトウェア「NoviSight」を2018年9月10日から米国で導入・発売します。

製薬・バイオテック市場では、難病や治療方法の確立されていない病気を克服するための新薬の探索が行われています。一般的には、1つの新薬が基礎研究や臨床試験を経て発売されるまでに10-20年、費用は数百億円を要すると言われています。候補化合物が新薬になる確率は3万分の1と低く、開発リスクの低減と創薬プロセスの効率化が求められています。この課題の解決策として生体を模した3次元の細胞モデルが注目されています。3次元化した細胞モデルの代表例には、ヒトの生体構造に近いスフェロイド・オルガノイド*1があります。このモデルの活用により、生体に近い状態で新薬の効果や毒性を解析できるため、治験に至る前の段階で精度の高い結果を得ることが期待されています。これにより、製薬市場における開発リスクの低減と創薬プロセスの効率化に貢献します。

今回開発した「NoviSight」は、共焦点レーザー走査型顕微鏡「FV3000」シリーズなどと組み合わせて使用する3次元細胞解析用ソフトウェアです。塊状のスフェロイドを3次元で観察・解析し、薬剤による細胞の生死や生存比率などを定量的に評価できます。また、多数のサンプルを培養できるマイクロプレートを利用した統計的なデータ解析にも対応しています。使用する薬の種類や濃度を変えた際の薬効を簡単に比較できます。さらに操作時のインターフェースが自由にレイアウト可能で、分布図やヒートマップ、グラフなどの解析結果と観察画像を紐付けて確認できるため、ユーザーの効率的な作業に貢献します。

※1 複数の細胞が凝縮して塊状になっている、人工の細胞組織

発売の概要

商品名 発売日
3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」 2018年9月10日

主な特長

  • 3次元細胞解析により、開発リスクの低減と創薬プロセスの効率化を実現
  • データを連動して見られるかつ自由自在なインターフェースで効率的な作業に貢献

発売の背景

創薬実験手法の1つに細胞解析があります。従来の細胞解析は2次元培養した細胞を使って行われてきましたが、培養技術の進歩に伴い、3次元細胞モデルを用いることが可能になりました。本来の生体組織は立体構造を持つため、創薬実験のモデルには3次元細胞が適していると提唱され、創薬の最前線では広く使われ始めています。それらのニーズに応えるため、顕微鏡のイメージング技術と、新開発した3次元の解析手法を組み合わせ、新しい3次元細胞解析技術を開発しました。創薬研究の盛んな米国では、3次元細胞解析の市場は成長傾向にあります。本技術により、創薬研究を加速し市場に貢献できると考えたため、このたび3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」を米国で導入します。生体環境に近い3次元モデルを用いた細胞試験を、正確に解析できるようにすることで、創薬リスク低減に貢献し、ユーザーの効率的な新薬開発をサポートします。

主な特長の詳細

1. 3次元細胞解析により、開発リスクの低減と創薬プロセスの効率化を実現

3次元細胞解析では、薬効によるスフェロイド内一つひとつの細胞の変化だけでなく、スフェロイド全体の変化を3次元で測定することができます。がん治療薬の検討を例に挙げると、薬剤による細胞の生死を3次元で認識して生存率などを解析し、がん細胞をどれだけ死滅させたか、成長をどれだけ抑制できたかを評価することが可能です。細胞構造がヒトの生体環境に近いスフェロイドで試験を行うことで、治験に至る前段階で精度の高い結果を得ることが期待されています。これにより、製薬市場における開発リスク低減と創薬プロセスの効率化の貢献を目指します。


一つひとつが識別されている(配色に意味はなし)


抗がん剤の効果比較(青部分:がん細胞)
がん細胞の成長が抑制されている
グラフは、投与量に対するがんの浸潤能を示す

2. データを連動して見られるかつ自由自在なインターフェースで効率的な作業に貢献

3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」は、マイクロプレートを用いて多くのスフェロイドを一括して解析・測定することが可能です。これにより、使用する薬剤の種類や濃度の条件を変えた際の薬効を簡単に比較できます。さらに操作時のインターフェースが自由にレイアウト可能で、生存率の分布図やヒートマップ、グラフといった解析結果と観察画像などもまとめて確認できます。ユーザーの知りたい情報を見やすい形で提供し、効率的な薬効比較・検討作業に貢献します。


マイクロプレートを用いて条件ごとに薬効比較
がん細胞多い(赤)⇔がん細胞少ない(緑)


3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」のインターフェース

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