ナンバーワン技術への挑戦「顕微鏡開発」

創業の精神を受け継ぎ、目標を追い求める努力が世界一流を生む風土を育む

オリンパス創業者は大胆にも「世界で認められる顕微鏡を作る!」と宣言しました。以来、オリンパスはつねに世界初、世界一流の製品づくりに挑戦してきました。その背景には、「チャレンジする姿勢」と「負けてたまるか」という意地(生命力)があったのです。

ナンバーワン技術に挑戦し世界一流を維持する"ものづくり"は、自分たちの力を客観的に知り、いつも新しい目標に向かって取り組む意欲の大切さをあらためて私たちに教えてくれています。

戦後、ゼロからのものづくり


昭和の初頭に完成した顕微鏡、GK鏡基(昭和号)

オリンパスの創業は顕微鏡の事業化からスタートした。伊那工場(現・長野オリンパス)での生産基盤づくりは、この地へ疎開した1944(昭和19)年からはじまりました。

戦災により移管設備も少なく、治工具類も自ら準備をしなければ何も始まりそうになく、まさにゼロからのものづくりを推し進め、苦難の末に「GK」という顕微鏡を立ち上げました。さらに、先行するドイツ製品を目標に「UCE」、「DF」という顕微鏡も立ち上げ、必死にものづくりに励んだのです。

追いつけ、追い越せ!世界一流を実現する道に妥協はない

顕微鏡の心臓部は対物レンズ。しかし、この光学性能はなかなかドイツ製品に追いつきません。1960年代後半から対物レンズの硝材である蛍石、ミョウバンの加工法を確立。さらに1970年代から顕微鏡は、AH、BH、CHとシリーズ化に進みました。「BH-2」の開発に先駆け、対物レンズ性能向上のプロジェクトチームが発足。理論とシミュレーションに基づく加工法・性能評価方法を、開発・製造の連携で確立し一歩前進を果たしました。

生物顕微鏡BX41

一方で、観察法(検鏡法)も進化。暗視野・位相差・偏光・微分干渉・蛍光という特殊顕微鏡分野でも一流を目指す必要がありました。観察法の進化に対応するため、研究開発者と製造技能者が一体となり、レンズや水晶プリズムの高精度加工技術、位相膜蒸着技術、光学多層膜コーティング技術などコアとなる技術を着実に確立していきました。

その結果、特殊顕微鏡分野でもライバルとの商品力の差を詰めることができ、製造技術も進化を遂げることができたのです。

技術は日進月歩、ゴールはありません。競合各社は「無限遠補正対物レンズ」を開発していました。オリンパスの挑戦も1988(昭和63)年にスタートします。性能・品質評価には妥協を許さない製品のコンセプト実現に向けて、試行錯誤と時間との戦いが続きました。その結果、新規に100種類以上の対物レンズを立ち上げ、UISシリーズが完成しました。

これらの対物レンズを搭載する顕微鏡は、Y-Shapeという斬新なデザインとしました。創業者の「世界一流へ」という強い思いは70余年にわたる技術開発の挑戦により、世界で認められる商品に結実したのです。「これは一人、二人の優秀な技術者の力だけで出来たものではありません。担当者・チーム力のたまものです」と当時の製造の責任者は話します。


※UIS対物レンズ(無限遠補正対物レンズ)
像までの距離が無限に設計された対物レンズ。UISは当社の呼称で、Universal Infinity Systemの略。

独自の加工技術が世界一流の顕微鏡を支える

シリーズ化、多種少量生産への対応として顕微鏡を構成するユニットも多品種となり、原価性・効率性を追求するために24時間稼働の機械加工設備(マシニングセンター)が必要となりました。

しかし、マシニングセンターがまだ世の中ではハシリの時期であったため、加工機メーカーの技術だけでは高精度加工を実現できませんでした。顕微鏡の部品は、真ちゅう・アルミが多く、当時のメーカーではこれら軟質材料の加工ノウハウを持っていなかったためです。

しかし伊那工場では、汎用(はんよう)設備での加工ノウハウを持っており、メーカーに教えながらアルミ高精度加工法を確立してきました。そこでメーカーと共同でオリジナルのマシニングセンターを立ち上げ、高精度加工と原価低減を実現したのです。

一方、レンズ加工においては、1個流し、自動加工を目指しました。オリンパスレンズ自動加工システムを生産技術部門の協力を得て立ち上げ、自社独自の技術として進化させました。

進化した加工システムのコンセプトづくりには、工場技術者が率先して「衆知を集める合宿」からスタートさせるほどの意気込みでした。このような独自技術である自動加工への挑戦がカン・コツに頼らないレンズの品質と原価低減を実現してきたのです。こうした技術に裏打ちされ顕微鏡の性能とものづくり技術は着実に進化を続けています。

安心するな!一流を維持するには新たな目標へ向かって進まなければ!


シリコーンオイル専用の液浸対物レンズ
この中にはナノレベルの面精度で磨かれたレンズが10数枚入っています。東京ドームの屋根をレンズにたとえると1mmの誤差も許されない加工精度が要求されます。

先頭を走ることを目指し、やがて「顕微鏡のシェアでは世界ナンバーワン」の実績を得るまでになりました。そのためか、一時期、次のチャレンジ目標を見失いかけたことがあります。「このままでは挑戦する風土がすたれる」と危機感をいだいたリーダーたちは次のチャレンジ目標を探しました。

その結果、半導体検査装置に搭載される高精度対物レンズの開発・製造に取り組むことが決まりました。すべての対物レンズの数値評価データをユーザーへ提出する必要があり、要求精度はこれまでに経験したことのない高いレベルのものでした。

しかも、製品の性能や、自分たちの技能を数値化して評価するという経験はこれまでにありませんでした。つまり挑戦目標が定まったとはいえ、実現方法も測定装置もないのです。数値評価技術を確立するため専任部隊を組織し、新たな対物レンズ設計とともに組み立て調整まで踏み込みました。光学性能を計測する測定装置には独自の計測方法を開発。対物レンズ性能とともにこの測定装置は他に類を見ないものとなりました。

一方、この評価技術は自分たちの加工・組み立て能力の客観的評価を与えるだけでなく、新たな目標と今後の"ものづくりのあり方"を示しました。このようにオリンパスは光学製造技術の新たな目標に向かって歩み続けています。