顧客ニーズにこだわる「医療従事者」

医療従事者からの多彩なニーズに的確なものづくりで応える

消化器内視鏡は1950(昭和25)年の東大付属病院での胃カメラの実験に始まり、以来、医療従事者のニーズを的確な形に落とし込むことによって発展を遂げてきました。

開発者はつねに顧客のニーズを探り安全最優先の思想により、"ものづくり"の現場に入り込みます。"ものづくり"の現場では、どんなニーズでも形にすることを通じて製品化してきました。その代表が「OES(Olympus Endoscopy System)」です。ニーズを的確に把握して製造するというDNAは、処置具をはじめ多くの"ものづくり"に生かされています。

どんなニーズでも形にすることから始まる

内視鏡づくりに携わる者の心に共通して流れているのは、「医療で社会に貢献する」という、医療従事者と共通の使命感と誇りです。医療従事者のニーズに素直に耳を傾け、的確な"ものづくり"によって応える。この意識は製品開発から製造まで一貫しています。

内視鏡製品に対する要望は多岐にわたります。製品開発の初期段階ではどんなニーズでも形にする必要があります。そうすることで初めて医療従事者の評価を得ることができるのです。ときには現有の製造技術の限界を知りつつも、ニーズに応えるために限界を超える仕様の実現に挑戦します。

それは開発・設計者と試作技能者の挑戦の積み重ねにより新たな技術的ハードルを乗り越えるチャンスでもありました。開発者はニーズを携えて現場に入り込み、試作技能者はニーズを具現化するために技術・技能で挑戦する、という連携プレーがニーズを形にする源泉です。

具体的なものによるニーズ検証の繰り返しから世界のスタンダードに

内視鏡の操作感や各種仕様を決める際には、医療従事者のニーズに基づき試作品をつくって机上で詳細に評価し、再び試作品にフィードバックすることを何度も地道に繰り返します。

たとえば、1983(昭和58)年発売の「OES」で、オリンパスとして初めて実現した完全防水仕様(長時間薬液浸漬(しんし)可能)は、消毒液に内視鏡全体(それ以前は体内挿入部のみ)を浸漬して消毒したい医療従事者のニーズにぴったり合致しており、内視鏡の洗浄消毒方法のスタンダードとして普及しました。


完全防水仕様の「OESシリーズ」

この実現に向けて新材料、新防水構造、新操作機構などに対してものをつくって確かめることを繰り返し、設計を決定していきました。特に防水では、エンジニアリングプラスチックのモールド部品がキーパーツとなりましたが社内外で使用実績が乏しく、素材、強度設計、成形方法について要素検討からスタートしました。

成形条件や寸法を変えてテストサンプルをつくり、防水試験や耐薬品性試験を繰り返しました。構造も新規であり、プラスチック部品の固定はビスを使わずに部品同士の締め付けで固定する構造としました。

その形状や締め付け条件等の設計条件は、ロジカルに導き出せないため、現物をつくり評価を繰り返しトライ&エラーからノウハウを吸収しながらゴールを目指しました。実験を行いながら文献などから情報収集し理論的裏づけを取り、再び実験を繰り返したのです。このような粘り強い検討を経て防水設計が決定しました。

あらゆる方法で潜在ニーズを掘り起こし、製品化する

内視鏡の処置具は、医療従事者により微妙に使い方が異なります。そのニーズに応えるため多くの種類が製品化されています。別の見方をすれば処置具は、道具であるため医療従事者は常に便利な道具を求めています。したがって、いかに早く医療従事者のニーズを捉え製品化するかが競合他社との勝負の決め手となります。

実際のニーズ探索は、大別すると医療従事者からアイデアが上がってきたものを具現化していく場合と、メーカー側で潜在ニーズを掘り起こして具現化していく場合の2通りがあります。

前者は出どころがユーザーなので間違いのない堅実なアイデアが多くあります。さらに競争力のある商品を継続的に出していくためにはユーザーが気付いていない潜在ニーズを掘り起こしていくことも大変に重要な活動となります。医療従事者も気が付かないニーズを顕在化するために時には病院に毎日通い、医療従事者への聞き込みを徹底的に行います。場合によっては、症例をビデオで撮影し時間分析から問題抽出を行います。


内視鏡の洗浄消毒装置

開発者は、医療行為が認められないため、胃や十二指腸のモデルに対して処置シミュレーションを行い、自らの感触として使い勝手を検討します。その他、学術論文や市場の評判など、あらゆる情報を収集し分析を行います。最後は、モックアップ(実物大の模型)品を作り、医療従事者に見せることで、インスピレーションを刺激しニーズの顕在化を図るのです。

ニーズの顕在化ができたなら、次は製品化の検討となります。短期間で製品を具現化する必要があり、試作技能者は日常の中で最新の加工法・素材の情報収集やいろいろな技術を研究し、どんなニーズに対しても形にできるよう準備しています。いかに早く形にしてユーザーに届けるかが勝負です。

これからも「医療で社会に貢献する」という使命感と誇りを持ち、形でニーズを捉え、掘り起こすことで多彩なニーズに応える的確な"ものづくり"への取組みが続きます。このように内視鏡事業の"ものづくり"は、「価値創造」そのものであり、まさに経営理念に掲げている「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」の実践でもあります。

内視鏡が大きな変化を遂げたのが、OES(Olympus Endoscopy System)です。内視鏡は体内に入れるものなので、消毒方法が大きな課題でした。OESでは、本体全てが防水加工されているため、そのまま消毒液へ漬けることが可能となりました。