直腸がんステージ3を乗り越えて‐私が毎日を大切に生きる理由

「たった一人でもいいので、私の経験が誰かの役に立ったら嬉しいです」そう語るのは、オリンパスアメリカの社員のキャサリン・ウィルトロートさん。60歳でステージ3の直腸がんと診断されました。つらい治療を乗り越えて、彼女は「この経験を通して、私はもっと前向きな人間になれました」と語ります。

持病のために内視鏡検査を避け続けていた

オリンパスアメリカでオペレーションコーディネーターとして、医療機器のリースを担当しているキャサリンさんは、長らく持病である逆流性食道炎に悩まされていました。逆流性食道炎とは、胃酸や食物が食道に逆流して炎症を引き起こす病気です。そのため、オリンパスの社員として内視鏡検査の重要性を理解していたのにもかかわらず、検査を受けることをためらっていました。「胃腸の洗浄のために大量の液体を飲むのは、私のように逆流性食道炎に悩んでいる人にとっては本当に大変だと聞いていたからです」(キャサリンさん)

そんな中、彼女は同僚の勧めを受けて、2023年3月、比較的簡単にできる大腸がんの在宅検査を行いました。陽性の結果が出ましたが、最初は何かの間違いで、偽陽性ではないかと考えました。自覚症状は、軽い疲労感があった程度だったからです。しかし、キャサリンさんを心配した家族からの強い要望で、3カ月後に大腸内視鏡検査を受けることにしました。

その検査の準備は簡単ではありませんでした。「2つの下剤を異なるタイミングで服用し、約2リットルの水とスポーツドリンクを摂取しました。逆流性食道炎を抱えている私にとって、固形物なしで、大量の水分を飲まなければいけないのは想像していた以上に大変でした」(キャサリンさん)

なんとか内視鏡検査を乗り切りましたが、診断結果は衝撃的でした。直腸がんのステージ3であることが判明したのです。

「どうしたら、がんを取り除けますか」病気を受け止め、治療に取り組む

しかしキャサリンさんは、恐怖におびえるのではなく、事実を受け止めるとすぐに前向きに病気に立ち向かうことを決めました。「わかりました。どうしたら、がんを取り除けますか」と医師に尋ねたのです。この姿勢が、困難な治療を乗り越える原動力となりました。

医師たちも、そんな彼女の姿勢に応じるように積極的にサポートしてくれました。共に最善の治療法を検討し、まずは手術に向けて腫瘍を小さくするための化学療法を始めました。

化学療法は過酷でした。2週間ごとに病院に行き、2時間かけて薬剤の点滴を受け、通院後も化学療法用のポンプを装着していないといけませんでした。治療開始当初は、重い副作用が起こるのではないかと不安もありました。実際、指やつま先のしびれ(神経障害)や脱毛といった副作用に悩まされることもありましたが、それでも、より重い合併症がなかったのは幸運だったと受け止めています。

腫瘍が小さくなった2023年12月、直腸切除術(プロクテクトミー)と呼ばれる手術を受けることが決まりました。がん腫瘍を除去し、結腸と直腸を再結合する手術は無事に成功。その後の治療のために一時的に人工肛門を造設する必要がありましたが、今は元の状態に戻っています。

現在も4カ月ごとの血液検査、8カ月ごとのCTスキャンと腫瘍科の診察を受けながら経過を見守っていますが、キャサリンさんは微笑みながら「予後は良好です」と話します。

家族や友人、周囲の人々の支えが回復の大きな力に

がん治療を体験したキャサリンさんは、周囲の人々のサポートに感謝の気持ちを伝えています。彼女の場合、診察や化学療法に婚約者が常に付き添ってくれたほか、母や娘も変わらぬ態度で支えてくれました。また、友人たちは温かいメッセージを送ってくれました。こうした大小さまざまな支援が、気持ちの安定や病状の回復に大きな影響を与えたのです。

「誰かがそばにいて、手を握ったり、抱きしめたりしてくれるだけで、治療の辛さがやわらぎました」(キャサリンさん)

勤務先のオリンパスアメリカも大きな支援をしてくれました。通院のために柔軟な勤務体制や職場環境を用意して、治療の負担を軽くしてくれたのです。この経験を通じて、オリンパスが従業員を大切にする企業であると改めて実感したといいます。

「前向きな人間になれた」闘病を経て伝えたいこと

がんとの闘いは、人生観を大きく変えました。「この経験を通して、私はもっと前向きな人間になれました。」

「私は助かったけれど、そうでなかった人もいる。なぜなのだろうと考えるうちに、私にはまだこの人生でやるべきことがあるのだ、と信じるようになりました」(キャサリンさん)新たな使命感が芽生え、「毎日を大切に生きる」と強く意識するようになったのです。

彼女は現在、早期検診の重要性を伝える活動に力を入れています。「検査の準備が大変だから」という理由で大腸内視鏡検査を敬遠しないように伝えていきたいのです。検査が命を救ってくれる可能性もあります。「一人で何とかしようとせず、専門家や周りの人に助けを求めてください」とキャサリンさんは訴えます。

また、私生活でも思いがけない変化がありました。12年間一緒に過ごしてきた婚約者との絆がさらに深まり、「正式に結婚することにしたんです」(キャサリンさん)。仕事では、リモートワークを活用してワークライフバランスを保ちながら、人事管理の学位取得をめざして勉強を続けています。

彼女は常に、物事の明るい面に目を向けています。「誰でも、ときには落ち込むことがあります。でも、私はいつも何か一つでも良いことを見つけるようにしています。困難にどう向き合うかは、自分自身で決められますから」

2025年2月の取材に基づき作成しています。患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。

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