内視鏡技術の普及に向けて:ベトナムの未来を変える「TTTプログラム」

ベトナムでは、胃がんと大腸がんが発症率の高い上位5つのがんに含まれており、これらの病気の早期発見と治療が急務となっています。この課題に取り組むため、Olympus Medical Systems Vietnamは、ベトナム内視鏡学会や主要な教育病院と連携し、消化器がんの早期発見と治療技術の向上を目指した教育プログラムを支援しています。このプログラムは、ベトナム国内外の医療機関や学術団体との協力のもとで進められており、ベトナムの内視鏡医のスキル向上を目的としています。
チョーライ病院のホ・ダン・クィ・ユン医師は、「私はベトナム消化器内視鏡連盟(VFDE)の会長として、またチョーライ病院内視鏡部門の責任者として、消化器がんの早期診断と治療の向上に取り組んでいます。これはチョーライ病院だけでなく、全国の病院において重要な課題です」と話します。

内視鏡技術を伝えるTTT(Train the Trainer)プログラム

オリンパスが支援する「Train the Trainer(TTT)プログラム」は、その取り組みの1つです。このプログラムは、ベトナムの2つの主要ながん病院で行われ、現地の医師が日本の医師から内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の技術を学び、さらにその知識と技術を次世代の医師に伝えるという役割を担っています。ホーチミンのチョーライ病院とハノイのベトナム国立がん病院で実施されたこのプログラムは、現地の医師が最先端の内視鏡技術を習得するだけではなく、ESDにおける適応患者の選定など重要な側面も学ぶことができ、ベトナムの医療水準の向上にも貢献しているのです。

チョーライ病院での実績

TTTプログラムに参加したチョーライ病院のホアン・トゥアン・ヴ医師は、ESD技術を習得する道のりは、まるで自己改善の積み重ねのようだったと振り返ります。「実技のセッションでは、医療機器や人材が十分に整った環境で、とても充実した研修を受けることができました。そのおかげで、2023年10月には、実際に患者さんに対してESD手術を無事に成功させることができました。」
また、彼は、消化器がんの早期発見・診断・治療が、死亡率の低下や生存期間の延長、さらには根治の可能性を高めるうえで非常に重要だと語ります。

ドゥン医師によると、トレーニングプログラムの導入後、チョーライ病院でのESD症例数は飛躍的に増え、年間25件だった症例数がわずか数カ月で200件にまで急増したといいます。チョーライ病院は、消化器がんの早期診断・治療に特化した内視鏡トレーニングセンターとしての役割を担うことを目指しており、ベトナム保健省の正式な承認を得るため、そのプログラム検討に取り組んでいます。

ベトナム国立がん病院での新たな気づき

ベトナム国立がん病院のトラン・ドゥク・カン医師は、日本での研修を通じて、内視鏡技術の重要性を改めて実感しました。「日本の指導者たちは、初期病変を見逃さずに発見することが、早期がん治療の鍵であると教えてくれました。」
カン医師は、1日に診察できる患者数には限りがあるものの、ベトナム全体で早期がんのスクリーニングと治療が広がれば、その影響は計り知れないと確信したと話します。現在、ベトナム国立がん病院は、国内での内視鏡技術の普及に取り組んでおり、早期がんのスクリーニングと治療をテーマとしたトレーニングコースを全国で展開しています。

ESDトレーニングコースで学んだこと

ESD技術の臨床的な効果を実感したベトナム・キューバ友好病院のグエン・ユイ・タック医師は、ベトナム国家がん病院で行われたESDのトレーニングコースに参加した1人です。トレーニングでは、チャン・ドゥック・カン医師から細やかな指導を受け、その技術を習得しました。「患者さんへのケアを最優先に考え、責任感を持って、チーム全員で早期治療に向けた取り組みを積極的に進めています。」

医療水準の向上に向け、継続的な協力を

VFDEの会長であるユン医師は、内視鏡医師を対象にしたトレーニングプログラムやセミナーの提供を通じて、ESD技術をベトナム全土に普及させようと努めています。「今後も医療機器メーカーと協力しながら、ベトナムの患者さんのため、医師のスキル向上を目指すトレーニング活動を続けていきたいです」と力強く話しています。

2024年6月~8月の取材に基づき作成しています。患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。