「もう一度、普通に食事を楽しみたい」その願いをかなえた医療の力

「水を飲むのもつらい」という食道の病気に20代後半から苦しんだ高超(ガオ・チャオ)さん。30代になって内視鏡による低侵襲手術を受け、以前の生活を取り戻しました。今では夢だったヒップホップダンスにも挑戦しています。「手術後に目覚めたとき、これからは健康第一で生きていこうと決めました」と語る高さんに、手術をめぐる体験を聞きました。

食事のたびに飲み込むのが苦痛だった

現在は中国・大連にあるオリンパスの関連会社Olympus Asia Pacific Business Management Services (Dalian) Co., Ltd(以下、OBSAP)に勤務し、注文管理の業務を担当している高超さん(40歳)。体の不調を初めて感じたのは、前職で働いていた20代のときでした。

「2009年ごろから嚥下が困難になり、食べたり飲んだりするとむせてしまうことが続きました。食事のたびに飲み込むのが苦痛で、生理的なつらさだけでなく、心理的にも大きな障害となりました」

当時はIT関係の企業で働いていて、クライアントとの会食が頻繁にありました。「食事中にむせたり吐き出したりしたら相手に失礼なので、大きなプレッシャーを感じていました」

睡眠が十分にとれず、体重も減少しました。身長172センチで55キロ。今より15キロも少ない体重でした。大学では日本語を専攻し、刺身やたこ焼き、ラーメンが好物だった高さんですが、大好きな食事を楽しめなくなりました。

2010年ごろに病院に行きましたが、単なる胃炎と診断され、食生活に注意するようにと指導されただけ。高さん自身も20代の若さのため、重い病気にかかっているとは考えていませんでした。

10万人に1人の病気を「開腹せずに治す」

ところが、症状は一向によくなりません。病院に行く回数が増えた2012年ごろ、転機が訪れます。新たに訪れた病院で、10万人に1人という希少な病気「食道アカラシア」と診断されたのです。

「初めて聞いた病名でした。食道の筋肉の機能障害で、食道の蠕動(ぜんどう)運動がうまくできなくなり、食べ物の通過が困難になる病気だと聞きました」

医師から、治療方法は「バルーン拡張法」か「開腹手術」の2つだと告げられました。

「バルーン拡張法だと再発の可能性が大きいと言われました。もう一つの開腹手術は、とても恐ろしく感じました。結局、まだ若いし、自然に治ることもあるのではないかと考えて、本格的な治療は先送りにしました」

その後、経口内視鏡的筋層切開術(以下、POEM=Peroral Endoscopic Myotomy)という新しい治療法があることを知りました。

「開腹手術をしなくてよいのは魅力でしたが、当時の大連ではまだ実施例が少ない最先端の術式だと聞き、2年ほど待ちました。私はとても慎重な性格なんです」

高さんは症例が増えるのを待ち、副作用の面なども問題ないか確認しました。その上で、2015年、ついにPOEMを受けることを決めました。食道に内視鏡を入れて、食道と胃のつなぎ目を切開し、食べ物が流れやすいように拡大します。手術は無事成功しました。

「手術の前は緊張しましたが、内視鏡手術ですから傷口も小さく、回復も早かったです。術後3日ほどで退院することができました」

この手術をきっかけに、オリンパスとの出会いも生まれました。

「オリンパスのことは、カメラのメーカーとして知っていましたが、病院で内視鏡のポスターを見て、医療機器のメーカーでもあると初めて知りました。自分の手術にも最新のオリンパス内視鏡が使われたことが分かり、強く印象に残りました」

これからは健康第一で生きていこう

余暇の過ごし方も変わりました。手術前は運動したとき、のどが渇いて水を飲むとむせてしまうので、パソコンでネットゲームをすることが多かったそうです。そんなインドアな生活を抜け出すことができました。

「手術後、長年の夢だったダンスを始めました。ヒップホップです。この年齢でと思われるかもしれませんが、うまくなくてもやりたかったダンスに挑戦できて、とても満足しています」

失って初めて、その大切さがわかるとよく言います。高さんも、食道の正常な機能を失って、その大切さを身をもって知りました。「生活の優先順位が変わって、今は健康第一です」と、きっぱり口にします。

手術の後、普通に食事ができるまでに回復した高さん。食事や水でむせかえることがなくなりました。同時に健康への意識が高まり、熱い物や冷たい物、辛い食べ物などはできるだけ避けるようにしています。

「手術後に目覚めたとき、これからは健康第一で生きていこうと心に決めました。ふだんの食事は自分で作っていて、昼食も弁当を持参するようにしています。たまに友人と外食を楽しみますが、酒は控えめにしています。病気を経験して、健康な食生活を意識するようになったのは良かったと思います」

「人々の健康と安心の実現」が自分の使命に

手術をきっかけに、働き方も見直しました。それまではIT関連の仕事をしていましたが、健康に関する学びを得たいと考えて、手術のときに印象に残ったオリンパスの関連会社であるOBSAPへの転職を決めました。慎重な高さんにとって、大きな決断です。

新入社員の研修では、POEMの用例説明もありました。高さんが「実際に手術を受けた」と伝えると、講師が驚きました。「自分の体験談を語ることで、手術の経験を生かせました」

手術を経て健康な生活を手にした高さん。「世界の⼈々の健康と安⼼、⼼の豊かさの実現」というオリンパスグループの存在意義は、自分の使命でもあると実感しています。

「手術の経験がなければ、ただのスローガンだと思っていたかもしれません。しかし、オリンパスの製品は、私のような病気をした人にとって大きな助けとなっています。人の健康を助けるオリンパスで働くことは、私にとって誇りです」

2025年9月の取材に基づき作成しています。患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。