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2003年12月 3日
更新日:2004年 2月16日
オリンパス、世界初のツインスキャンシステム*1搭載により、
生きた細胞内の物質の振る舞いを詳細に経過観察できる
共焦点レーザ走査型顕微鏡*2「FLUOVIEW FV1000」を新発売
FLUOVIEW FV1000
共焦点レーザ走査型顕微鏡「FLUOVIEW FV1000」
倒立顕微鏡「IX81」との組み合わせ例
オリンパス株式会社(社長:菊川 剛)は、世界で初めてツインスキャンシステムを搭載した共焦点レーザ走査型顕微鏡「FLUOVIEW FV1000」を分子生物学を研究する大学・研究機関や創薬メーカー向けに2004年1月25日から日本で発売し順次全世界へ展開します。新機能の1つとして世界初のツインスキャンシステムを搭載することで、生きた細胞へのレーザによる光刺激とその反応の同時観察を可能にしました。これにより、細胞内物質の振る舞いの詳細な経過観察を実現し、細胞機能解明の研究ニーズに応えます。
*1 ツインスキャンシステム(参考資料の図を参照):
レーザ顕微鏡は標本にレーザを照射しながらスキャンする事によって画像を取得します。「FLUOVIEW FV1000」では、1つのレーザで標本のスキャンをしながら画像を得ると同時に、もう一方の全く別のレーザを標本に刺激を与える目的で照射することで、従来不可能であった細胞への光の刺激と画像の取得が同時に行えるようになりました。
*2 共焦点レーザ走査型顕微鏡:
標本の蛍光観察を行う顕微鏡の1つです。レーザ顕微鏡の蛍光観察では通常の蛍光顕微鏡では観察できない組織内部やタンパク質の位置(局在)を観察することができます。画像を得るためにレーザを標本に最も近い対物レンズから照射し、X-Y方向に走査(スキャン)して画像を取得します。厚みのある標本の任意の深さに焦点を合わせ、その共役の位置に共焦点ピンホールと呼ばれる小さな穴を配置することにより、ピントの合った位置からの情報だけを通過させ、上下の焦点があっていない面からの光を排除します。これにより、厚みのある標本の任意のピント面での光学的スライス像を切り出すことが出来ます。(一般的に、蛍光顕微鏡では焦点が合っている部位以外の蛍光も重なって見えてしまうため像がぼやけてしまうことがあります。)さらに焦点位置を順次変えながら画像を取得することによって、生きた細胞や組織の断層像を得ることができ、立体的な画像を構築することができます。
尚、共焦点レーザ走査型顕微鏡「FLUOVIEW FV1000」は12月10日(水)から13日(土)まで神戸国際展示場で開催される第26回日本分子生物学会年会(年会長 岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所 所長 勝木 元也)で出展いたします。
発売の概要
製品名 発売日
共焦点レーザ走査型顕微鏡
「FLUOVIEW FV1000」
2004年1月25日
主な特徴
1. 世界初、ツインスキャンシステムを搭載
2. 最小波長分解能2nm以下の高分解能分光*3
3. 世界初の蛍光波長分離機能*4(S.P.D. : Spectral Profile Deconvolution)により近似した色同士の蛍光を自動で分離
4. 安定したデータ取得や蛍光の定量測光などの高信頼性データの実現
5. 新設計により簡単なイメージング機器の取り付けが可能
*3 高分解能分光:
    分光とは光を波長別に分けることです。例えば太陽の光が水滴によって分けられ虹になる現象を指します。このように蛍光タンパク質あるいは蛍光色素から発せられる蛍光を分光することにより、波長の違いを利用したいくつかの解析機能を使うことが出来ます。ひとつは、蛍光の検出したい波長のみを検出器に導くことで、効率の良い(明るい、不要な波長をカットした)検出が行なえることです。もうひとつは、蛍光波長分離(後述)を行なうために不可欠な機能になります。
*4 蛍光波長分離機能:
    複数の蛍光タンパク質あるいは蛍光色素を使用した場合の蛍光波長の重なり合い(クロストーク)の中から特定の蛍光タンパク質あるいは蛍光色素から発せられた蛍光のみを取り出す機能です。世界初のブラインドモードによって、蛍光波長のキャリブレーションなしでの蛍光分離を実現しました。
市場導入の背景
生命科学の研究はゲノムから生きた細胞へと研究の対象が変わってきました。それらの研究では生きた細胞内での遺伝子やタンパク質の機能を解析するために、遺伝子工学的手法で細胞に忍び込ませた蛍光を読み取りそれを画像化して解析するという、いわゆる蛍光イメージングが多く用いられるようになりました。そしてこの方法により病気のメカニズムを細胞レベルで解析する研究が盛んに行われています。今回発売する「FLUOVIEW FV1000」は従来機の約4年ぶりのフルモデルチェンジであり、世界初のツインスキャンシステムの搭載に加え、細胞内の複数の場所の同時観察や、分解能、明るさのアップなど様々なニーズに応えるために開発されました。これからますます拡大するバイオの市場に向けて、今回の「FLUOVIEW FV1000」投入を皮切りに、当社のゲノム事業とのシナジーにより、細胞機能解明の研究ニーズに応えていきます。
主な特徴の詳細
1. 世界初、ツインスキャンシステムを搭載
  従来は、画像取得のために標本をレーザでスキャンしている間は、後述のブリーチングやアンケージングなどのレーザを使った細胞を刺激するための作業を同時に行うことは出来ませんでしたが、今回ツインスキャンを搭載したことによりこれらの同時作業が可能になりました。
 
(1) ブリーチングは、細胞の任意の領域をレーザで照射することにより、蛍光タンパクまたは蛍光色素から発せられる蛍光を意図的に褪色(酸化等の要因により蛍光の光量が減少すること)させることです。実際の実験では、任意の領域をブリーチングさせたあと、その周りの褪色していない領域からの蛍光タンパクなどの流入によって起こる褪色領域の蛍光輝度の回復を観察することで、外側から見てわからない細胞内部器官の連続性を確認したり、蛍光タンパクなどで標識したタンパク質の拡散速度の測定などを行います。従来ブリーチングの間は取得できなかったデータも取得できることで、よりリアルタイムに近いデータを研究に利用できるようになりました。ブリーチ用のレーザビームとイメージング用のレーザビームを同期させることにより、ブリーチさせた直後のデータを取得することが出来ます。またブリーチング用に、円を描くような渦巻きスキャン(通常はX-Y方向の往復スキャン)を採用したことにより、早く効率的に、またブリーチング領域と非ブリーチング領域の境目の時間差をぎりぎりまで少なくすることが出来るようになりました。(添付の図を参照)
(2) アンケージングは「ケージド試薬」(添付の図を参照)と呼ばれるUV光に当たることよってはじめて細胞に対して薬として働く特殊な試薬を(多くは刺激を与えて活性化させる働き)あらかじめ脳切片などに浸透させておき、一部の神経細胞などにUVレーザを照射することで薬を起動させると同時に、その刺激が細胞間あるいは細胞内でどのように働くかを観察する手法です。これにより蛍光の輝度変化を捉えるなど、信号伝達が組織内でどのように行われているかを調べることができます。
2. 最小波長分解能2nm以下の高分解能分光
  2nm以下の波長分解能により、更に正確な蛍光波長の分析が可能になりました。また、均等な分光性能を持つグレーティング(添付の図を参照)を分光器に採用することにより、取得する波長全域において高信頼性の分光データ取得を実現すると同時に、フォトマルチプライヤ*5(光電子倍増管)を採用することにより、発現量の少ない蛍光タンパクのデータも取得することが出来るようになりました。
*5 フォトマルチプライヤ(光電子増倍管):
    通称「フォトマル」は微弱な光を検出するための高感度の検出器です。
3. 世界初の蛍光波長分離機能(S.P.D. : Spectral Profile Deconvolution)により近似した色同士の蛍光を自動で分離
  細胞内の異なる部位を異なる色で蛍光標識し、それらを同時に観察することは、細胞のメカニズムの解析において重要な手法になりつつあります。ところが全く違う色の蛍光タンパクを使い複数の部位を標識することは難しく、近似した色で標識しなければならないケースがほとんどです。その場合、複数の蛍光波長が重なり合ってしまい、異なる部位であるにも関わらず、それを認識することが困難になってしまいます。この重なりあった蛍光波長(クロストーク)を分離して、目的とする部位の色をはっきりと分けて表示させるために、蛍光波長分離機能が使われます。従来はあらかじめ実験を行うごとに実際の各蛍光色素の波長情報を測定し、これを利用して重なり合った蛍光を各色素ごとに分離するという作業をある決められた手順で行っていましたが、「SPD (Spectral Profile Deconvolution)」という技術により、この蛍光波長分離を行なうための事前の測定を行なわなくても、自動で分離作業が可能になりました。これにより観察者の手間を大幅に軽減します。
4. 安定したデータ取得や蛍光の定量測光などの高信頼性データの実現
 
(1) レーザモニタシステムとフィードバック回路により、照射するレーザ光をつねにモニタし、経時観察時のレーザ光量の安定化を図り、取得する蛍光量の定量性を向上させました。
(2) ハイブリッドフォトンカウンティングモード搭載により、蛍光の明るさを定量化しての分析が可能です。
(3) 新信号処理エンジン(L.I.V.E. : Low noise Integrated Visualization Engine)の搭載により従来機に比べ2倍以上の明るさの観察像を実現しました。また、画像スキャン速度を遅くし、弱いレーザ光を使用するスロースキャンモードにより細胞に対するダメージを軽減でき、より明るく、詳細な画像データを得ることが出来ます。
(4) スキャンのコントロール部に「Accelerating Circuit」を搭載し、X-Y軸の高速スキャンモードの最高速度が従来機の2倍になりました。これにより細胞の速い反応を捉えることが可能です。
5. 新設計により簡単なイメージング機器の取り付けが可能
  従来画像スキャン用のユニットが取り付けられていた顕微鏡のイメージングポート部分を占拠しない設計により、CCDカメラをはじめとするイメージング機器を簡単に装着できるようになりました。
関連リンク
オリンパス光学工業株式会社は、2003年10月1日をもってオリンパス株式会社と社名変更いたしました。
  • 本リリースに掲載されている内容は、報道関係者向けに発表した情報です。
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  • 掲載されている社名、製品名、技術名は各社の商標または登録商標です。


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