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PROJECT 02 内視鏡事業 「内視鏡システム」の開発

プロジェクトの概要

できる限り患者さまの体への負担を抑え、消化器疾患を早期に診断・治療する手段として欠かせない内視鏡システム。その診断精度をさらに向上させるため、これまでのものを大幅に上回るハイビジョン画質の実現に成功した。

プロジェクトの背景

近年国内では、生活環境や食生活の欧米化などにより、がんの中でも大腸がん罹患率が年々増加しています。それに伴い、大腸内視鏡の検査数も増加傾向にあるものの、検査受診率は未だ低い状況です。早期の大腸がんは自覚症状がほとんどないことや、内視鏡検査への不安などが理由に挙げられます。また、医師側としても、内視鏡の操作が難しく診断や治療の質が医師の手技に左右されてしまうことが、大きな課題となっていました。これらの課題を解決し、患者さまにとっても負担が少なく、医師にとっても使いやすい内視鏡システムを開発する必要がありました。

がんの早期発見・早期診断への貢献

  • 大腸がん罹患者数

    1,900,000人/年

  • 大腸内視鏡件数

    51,000,000件/年

プロジェクトメンバー

研究・開発

職種:メカニカルエンジニア
堺 貴啓

研究・開発

職種:メカニカルエンジニア
本田 一樹

研究・開発

職種:メカニカルエンジニア
渡辺 高範

インタビュー

8年ぶりとなる消化器内視鏡システムの大刷新。
最先端の技術を導入するため、プロフェッショナルたちが集結。

Q1.どのようなプロジェクトであったのか教えてください。

本田

一言で説明すると、内視鏡検査のレベルをもう一段階引き上げるための新たな内視鏡開発プロジェクトです。これまで内視鏡システムはめざましい発展を遂げてきたものの、まだまだ課題は山積みでした。医師のスキルに左右されてしまったり、地域ごとに使用するシステムが異なっていたりしたため、質の高い内視鏡検査を世界中のどこでも受けられるという状況ではありませんでした。内視鏡システムの需要が増え続けている中、こうした課題は早急に解決する必要があったのです。

もし次世代の内視鏡システムを生み出すことができれば、本田さんからあった課題を解決するだけではなく、がんなどの消化器疾患の早期発見につながるほか、痛みや違和感といった患者さまの負担をできる限り抑えた検査が可能になるかもしれない。そうした背景のもと、開発を進めていきました。

渡辺

プロジェクトに関わったのは、総勢数100人を超える各領域のプロフェッショナルたち。内視鏡開発、光学開発、設備開発、品質保証、部品調達、マーケティング、各地域の生産工場……。あらゆる部署と連携し、製品化に向けて万全の体制を整えました。内視鏡からプロセッサー、周辺機器に至るまで、オリンパスがこれまで培ってきた技術をこれでもかというほど注ぎ込みましたね。その結果、従来製品の販売からおよそ8年ぶりとなる新たな内視鏡システムが2020年に登場したのです。

本田

我々3人が手がけたのは、その中でも主力として位置付けられた製品で、「EDOF」という当社独自の機能を搭載した内視鏡もその一つです。この製品では、従来は国内と海外で分かれていたモデルを統合し、世界共通モデルとして導入することにも成功しました。

長年内視鏡システム領域を牽引してきたからこそ、
なんとしてもニーズに応えたいという想いがあった。

Q2.このプロジェクトは、どのようなきっかけで発足したのですか。

本田

世界各国の医師からのニーズと、弊社のシーズがうまくマッチしたというのがプロジェクトのきっかけです。当時、多くの医師から「内視鏡で拡大観察するときにストレスなく鮮明な画像で観察したい」という意見が寄せられていました。内視鏡を高倍率に拡大すると焦点範囲が狭まるため、患者さまの身体の中でピントを合わせるのが非常に難しかったのです。観察したい部分がピンボケしてしまうことが、医師たちの大きなストレスになっていました。

内視鏡の拡大観察自体はある程度一般化していたものの、ピントの合わせにくさや画像の不明瞭さを解決する策は多くの技術者を悩ませていましたよね。

渡辺

そうした課題解決のために白羽の矢が立ったのが、弊社でかねてから研究開発を進めてきた「EDOF」と呼ばれる深度拡大技術です。

本田

この「EDOF」とは、焦点距離が異なる二つの画像を合成することで、広い範囲にピントが合った明瞭な観察画像を得ることができる技術です。技術的なブレイクスルーによってその実現可能性が高まったことと、医師からのニーズが増加してきたことを踏まえて、本プロジェクトがスタートしました。

渡辺

難しいプロジェクトだということは重々承知でした。それでも思い切ってスタートできたのは、長年内視鏡分野を牽引してきたオリンパスだからこそだったのかもしれません。

本田

たしかに。医師からの期待に応えるのは自分たちしかいない。何がなんでもやり遂げなくてはという想いが、プロジェクトチーム内に満ちていたように思います。

私自身、絶対に成功させるぞと意気込んでいた内の一人でした。最先端の技術を生み出し続けてきたという点に惹かれてオリンパスに入社したので、その願いが実現できることに胸が高鳴りました。

前例のない精度の技術を生み出すプレッシャーと、
超大型プロジェクトの進行に頭を悩ませた。

Q3.プロジェクトを進める上で、課題となったことを教えてください。また、なぜそれが難しかったのか、を具体的に教えてください。

本田

難しかったことを挙げるとキリがないほど大変でしたが、特に課題となったのはやはり技術面でしたね。私はEDOFを搭載した内視鏡の製品化を担当していたのですが、焦点距離が異なる2つの画像を同時に撮像するためのユニットの開発にとても苦労しました。米粒サイズの小さなユニットを調整し、角度のバラつきを1/100°レベルに抑えなければいけない。さらに、それを安定して量産できるような生産体制も構築する必要がある。解決すべき点が多すぎて、数えきれないほど検証を重ねました。

私も技術面で壁にぶつかりました。私に与えられたミッションは、先行機種を上回る最大倍率125倍の拡大機能が付いた内視鏡を開発すること。正直、私からすると先行機種の内視鏡は非の打ちどころがないほど完璧だと思っていたので、それを上回れるのかと大きなプレッシャーを感じました。機能を追加すればするほど内視鏡も太くなってしまいますが、同時に患者さまが違和感や異物感を感じやすくなってしまいます。新しい製品開発を目指すとはいえ、大切なのは患者さまが安心して検査を受けていただくこと。だからこそ、先行機種の直径9.9mmを保ったまま、機能だけグレードアップさせる必要があったのです。2年ほどは、毎日図面作製やレビューの千本ノックを受けるような日々が続きました。

渡辺

技術面だけでなく、プロジェクトマネジメントやチーム内外との折衝も苦労しましたよね。私は新規操作部が搭載された製品を手がけたのですが、新しいシステムの中でも一番初めに製品化する必要があり、進行管理で骨が折れました。本田さん、堺さんのチームや、システム本体であるプロセッサーの開発や製造部門など各所と連携をとり、どんな機能を追加したのか、どんなところにリスクがありそうか、一つひとつ確認しながら進めていかなくてはいけませんでした。何度も担当部門と対面で集中討議を行い、数百個にも上る検証を重ねました。

本田

製品開発のプロジェクトをマネジメントする上では、自分の知識範囲を超えた課題にも直面し、何が問題なのか理解するだけでも苦労したのを覚えています。特に大変だったのは、各国の法規制に対応した点。今回は世界共通モデルを目指したため、国ごとに定められた要求事項や法規制を網羅できる仕様に最適化する必要があったんです。開発の終盤で「このままではある国の規制に適合できない」ということが判明して対応に奔走するなど、最後まで悪戦苦闘していました。

鍵となったのは、各部署との密接な連携。
直接足を運び、腹を割って話し続けた。

Q4.課題をどのように克服・解決したのか教えてください。

渡辺

技術的な課題もプロジェクトマネジメントの課題も、無事に乗り越えることができたのは、各部署との連携を徹底していたからこそだと思います。遠方であろうができる限り直接会って話すことを心がけたり、会議ではポジション関係なく一人ひとりに発言してもらったり。他の専門家たちに教えてもらうから分かることや、本音で話すからこそ気づけることがたくさんありました。オリンパスって、腹を割って話したいと持ちかけたときにNOと言う人がいないんですよね。聞く姿勢を見せれば、きちんと向き合ってくれる。

分かります。私も、先行機種の開発を手がけた社員や、生産部門の熟練社員に何度も相談し、技術的なアドバイスをたくさんもらいました。一人では達成できなかったことも、オリンパス社内のさまざまなプロフェッショナルたちの力を借りれば突破できる。そんな環境で仕事ができるありがたさを痛感しました。

本田

たしかに、今回のプロジェクトは膝を突き合わせて進めたことが功を奏したのだと思います。二人が話してくれたような日々のコミュニケーションはもちろん、各担当者が一堂に集まり、一緒に議論できる場を設けたのも一つ。EDOFの生産化に取り組む際には、分野の異なる技術担当者や製造設備の専門家、普段は異なる地域で仕事をしている工場の熟練作業者までもが同じ場所に集結し、開発部門の中に“ミニ生産ライン”を構築して技術検討を進めました。開発メンバーと製造メンバーが顔を合わせて検討するからこそ、課題の最適解を一緒に考えられるし物事を同時進行で進められる。それが、プロジェクト始動時に立てたスケジュール通りに目標を達成することができた大きな要因だったと思います。メンバーが一つの場所に集まることなんて簡単なことなのでは?と思われるかもしれません。しかし、高度な技術を伴う製品であるほど開発に関わる部署が多岐にわたるため、それぞれの部署から理解を得るだけで一苦労だったんです。

渡辺

そこまで力を合わせることができたのは、やはり「自分たちが次世代システムの道を切り拓くんだ、医療を支えるんだ」という強い想いをプロジェクトメンバー全員が常に持ち続けていたからではないでしょうか。目指す未来を共有していたことが、意思の統一につながったのだと思います。

各国の医師から絶賛の声が届き、大きな達成感を感じた。
期待に応えるため、進化を止めず、これからも挑み続ける。

05.ユーザーの反応はいかがでしたか。また、プロジェクトを通じて得たことや、今後の展望を教えてください。

本当に多くの医師から高い評価をいただいています。「ものすごく画像が綺麗で驚いたよ」と直接言っていただいたときは、ものすごく嬉しかったですね。自分の知識と経験が足りず歯痒さを感じることもありましたが、たくさんの方々に支えられたからこそ、最後まで走り切ることができました。感謝してもしきれないほどです。

本田

市場に導入した直後から、嬉しい声がたくさん届きましたよね。実は私は、以前自分が担当していたプロジェクトが頓挫してしまった経験があったので、その分今回の達成感はひとしおでした。挑戦度が高いプロジェクトであっても、オリンパスの技術と知見を結集させればやりきれるんだと分かり、ものすごく大きな自信になりました。

渡辺

自分が手がけた製品で、医療に貢献したいというのが入社の動機だったので、医師から「使いやすくなったよ」「これで患者さまの負担も軽減するよ」というお言葉をいただくたびに、入社当時の目標を実現できたなと感慨深い気持ちになります。大きな壁に直面したときは胃が痛くなることもありましたが、今はこのプロジェクトに関われてよかったと心から思いますね。

世界一のものを作れる人って、一握りだと思うんです。競合性が高ければ高いほど、その道のりも険しくなる。そんななか、今回のプロジェクトに携わったことで世界一を生み出す一端を担えたことが、大きな財産になりました。

渡辺

今後の目標としては、「痒いところに手が届く」内視鏡システムの開発を進めたいです。そのためには、新しいことにチャレンジするだけでなく、これまでどおり、医師や患者さまの声に耳を傾けることも大切にしていきたいです。

現在は次のモデルの仕様開発に携わっているので、今回得た知見やネットワークを活かして、さらに優れた内視鏡システムを生み出せるよう尽力したいです。個人的には、消化器内視鏡世界シェアNo. 1を誇るオリンパスについてもっと知りたい、消化器分野以外も学びたいという気持ちが強いので、他のプロジェクトにも積極的に参加していきたいです。

本田

内視鏡システムの役割は「病変を見つける」「診断する」「治療する」の3つであり、これらすべてをスムーズに行えることが大切だと考えています。しかし、医師にとっても、患者様にとっても、まだまだこれら3つが難なくできるわけではありません。今回、新たな内視鏡システムを開発したことでそのハードルを少し下げることはできたかもしれませんが、やるべきことはたくさん残っています。更なる高みを目指した内視鏡システムの実現のために、さまざまな分野の最先端技術に注目しながら、技術開発を進めていきます。

PROJECT 01 内視鏡事業

「内視鏡修理プロセス」のグローバル標準化

目指したのは、世界規模での医療機器の修理時間短縮。世界100以上の修理拠点を巻き込んだグローバルプロジェクト

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