ポストコロナ時代の内視鏡診療のために
内視鏡用防護具の開発②

オリンパスは、COVID-19による内視鏡医療の萎縮を防ぐため、内視鏡用防護具※1をドクターと共同開発するプロジェクトを進めています。
内視鏡用防護具は、内視鏡診療や手術で排出される患者さんの体液などの飛沫(ひまつ)やエアロゾルの飛散を低減し、より安全安心な医療環境のサポートを目指したものです。
しかし、防護具の開発はオリンパスにとって初めてのチャレンジ。しかも、開発は時間との戦いでもありました。

※1 本品は、非医療機器であり、シングルユース品、滅菌品、また日本国内使用品として開発したものです。本製品は新型コロナウイルス等の感染リスクの低減を目的としており、各種感染症に対する感染防止を保証するものではありません。


大腸内視鏡診療における使用イメージ

医療の継続に奮闘するドクターたち

COVID-19による医療萎縮が進行する中、医療施設やドクターも手をこまねいていたわけではありません。患者さんの体液から感染するリスクを減少させるための工夫を凝らし、医療を継続した例もありました。

今回のプロジェクトで共同開発パートナーとなった松脇由典先生(松脇クリニック品川)と菊池大輔先生(虎の門病院)は、それぞれ防護策を講じた上で、コロナ禍でも内視鏡診療・手術を進めていました。


松脇由典氏(医療法人社団恵芳会 松脇クリニック品川 理事長 医学博士)


菊池大輔氏(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 消化器内科 医学博士)


写真1:松脇先生自作のマスク。いわば“PPE零号機”

松脇先生は、手近にあった酸素マスクを改造して、患者さんの鼻と口を覆って飛沫(ひまつ)やエアロゾルを吸引できるマスクを自作(写真1)。これを患者さんに装着し、自身はガウンやキャップ、手袋、ゴーグル、N95マスクなどの個人防護具をフル装備し、約200例※2の手術で感染を防止することができました。

※2 2020年10月のインタビュー当時


写真2:虎の門病院での対策

菊池先生が勤務する虎の門病院では、ガウンや手袋、ゴーグル、帽子などをシングルユースとし、患者さんの上半身をビニールシートで覆って診療と手術を再開しました(写真2)。

ドクターの熱意に寄り添うオリンパス

松脇先生と菊池先生は、それぞれの対策をオリンパスに提案。医療現場へのソリューションを模索し始めていたオリンパスは、まずWEB会議で両先生のアイデアを共有しました。

その後も先生方と相談を重ねる一方、社内では開発部門も交えて方向性を検討。アイデアを集約してコンセプトをまとめ、3Dプリンターでそのイメージを試作しました。検討開始からコンセプトモデルまで、わずか1カ月あまり。これまでに類を見ない異例のロケットスタートでした。

手作りしたコンセプトモデルで、先生方やプロジェクトを推進するタスクフォースのメンバーと、内視鏡用防護具の方向性を確認。合意を得た後、タスクフォースのメンバーを拡充し、いよいよ開発がスタートしました。


マスク部分の試作品の数々。一番手前がコンセプトモデル。奥に行くほど完成品に近くなる。

タスクフォースメンバーのコラボレーションで開発プロセスを加速

コロナ禍でメンバー同士ですらなかなか直接会えない状況の中、内視鏡用防護具というオリンパスにとって初めてのデバイスを、短期間で開発する。タスクフォースに与えられたのは、これまでに経験したことのないほど、厳しい条件でした。

しかしオリンパスには、長年にわたり医療事業に携わり、医療の現場に関する知識と経験があります。また、効率的かつ高品質なものづくりのノウハウがあります。プロジェクトを勢いよく前進させた推進力の一つが、多くの部署から集まった、多彩なタスクフォースメンバーのコラボレーションでした。

そして、もう一つの推進力が、「コロナ禍での内視鏡医療をサポートしたい」「メドテックカンパニーの一員として、何か社会に貢献したい」「自分のこれまでの経験を、今この危機に役立てたい」というタスクフォースメンバーの志です。

一丸となって目標を目指すタスクフォースメンバーがそれぞれの役割を的確にこなした結果、2020年10月中に試作が終了。その後、サプライヤーさんと一緒に大量生産に向けた検討を開始。2021年6月に耳鼻咽喉科用と呼吸器科用の防護具を日本耳鼻咽喉科学会および日本呼吸器内視鏡学会へ寄付いたしました。そして2021年11月からは、消化器用防護具を東京都医師会へ寄付いたします。

世界の人々の健康と安心に貢献することをオリンパスは願っています。

インタビューと撮影は、全員マスク等を着用し、ソーシャルディスタンスを確保するなど、COVID-19感染防止対策を講じた上で実施しました。