「なぜ私が?」33歳で早期の大腸がんを経験した自分の使命

医療分野の科学者として働きながら、5歳の子供と健康な日々を送っていたアンナさんは、33歳で大腸がんと診断されました。大腸がんは、2020年のデータによると年間約190万人※の方が新たに罹患しており、年々増加している傾向にあるといわれています。若い年齢で早期大腸がんを経験したアンナさんは自分に与えられた使命を自覚し、「早期検診・早期発見の大切さ」を伝え続けています。

初期症状がきっかけとなった大腸がん診断

アンナと息子

アンナさんは、気になっていた血便について、医師に伝えたことがきっかけで大腸内視鏡検査を受け、後日、大腸がんであると告げられます。医療分野の科学者として働くアンナさんは、がんに関する知識もありましたが、「自分自身が大腸がんを患う」という事実を目の当たりにして、状況を受け入れられず、頭が真っ白になったそうです。診断を受けてからしばらくの間、周りの人にも大腸がんのことは伝えていなかったといいます。
「なぜ私が大腸がんに?どれくらい深刻なのだろう。私には5歳の子供がまだいるのに。色々なことが頭を駆け巡りました。」(アンナさん)

手術で大腸がんを切除、ステージ1の早期がんであることが判明

大腸がん手術は、45センチ程の大腸とリンパ節の一部分を切除する腹腔鏡下大腸切除術で施行されました。手術は無事に成功。幸いにもがんの腫瘍の広がりもなく、ステージ1の早期大腸がんであること、腫瘍の遺伝子検査、ゲノム血液検査では、アンナさんの大腸がんの原因となる遺伝的要素が陰性であることも分かりました。

大腸がんを経験した私だからできる使命

アンナと結腸直腸がんと診断されたとき5歳だった息子

手術後の療養のため、医療休暇を取ったアンナさん。初期症状である血便に気づいてから大腸の一部分を切除するまで、わずか3週間。改めてこれまでを振り返り、さまざまな気持ちがこみ上げてきたそうです。

「なぜ私だったんだろう?もし自分の血便に気づかなかったら?もしそのことを医師に伝えていなかったら?もし大腸内視鏡検査を医師から指示されていなかったら?もし大腸がんが見つかっていなかったら?」(アンナさん)

複雑な心境から涙が溢れ、これからどうすべきなのか悩んだといいます。また、アンナさんの周りには、50歳以下の若い年齢で大腸がんになった人がいなかったため、孤独感にも襲われたそうです。しばらく悩んでいたアンナさんでしたが、「なぜ私が大腸がんになったのか、何か意味がある」と考えるようになり、5歳の息子に同じことが起こらないよう、全力を尽くしたい、と思い始めました。

「私に何ができる?」と考えたアンナさんは、大腸がんの患者さんとその介護者に向けたイベントに参加しました。イベントでは年配の方だけでなく、自分の年代や自分より若くして大腸がんを患った人、さまざまながんステージで闘っている人などとの出会いを通し、少しずつ、自分が何をすべきなのか、という使命を自覚し始めたそうです。

アンナさんは、イベントに参加した当初は、他のがんサバイバーたちの辛い闘病の体験談を聞いた後で、自分の1ヵ月間のがんとの「闘い」は何事もなかったように感じられ、自分の話をすることに罪悪感すら覚えたといいます。「たとえ若い年齢であっても大腸がんになることがあると他の人に教えるため、私は早期大腸がんになったのかもしれない。」そのように思えるようになったのは、イベントを通して出会い、励ましてくれた大腸がんと闘う仲間の存在でした。

「早期検診・早期発見の大切さ」を伝える

アンナさん(右)と、2020年に結腸直腸がんとの闘いで亡くなった友人のサラさん

現在、大腸がんの診断・手術から約7年経ったアンナさん。早期検診と早期発見の大切さを伝えるため、テレビインタビュー、取材協力などを通して積極的にがんの啓蒙活動をし続けているそうです。
「私のがんストーリーは泣けるようなものではありません。ですが、私のストーリーを通して、大腸がんは年齢に関係なく自分にも関係があるものだと知り、そして早期発見できれば予防や治療が可能であることを分かってもらいたいのです。今でも自分の大腸がんの話をするときは緊張しますが、早期検診・早期発見の大切さを多くの人に伝えるため、これからも活動し続けていきます。」(アンナさん)

引用:GLOBOCAN 2020: New Global Cancer Data | UICC 新規タブで開きます

2021年7月の取材に基づき作成しています。患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。