「本物」に触れる喜び―内視鏡授業がもたらす価値とは

2022年12月、東京都板橋区立加賀中学校で中学2年生を対象にした、ある授業が開かれました。

教室の一角に設置されたのは体内の映像を観察する内視鏡システムです。内視鏡は本来、医師でなければ扱うことはできません。生徒の1人が緊張した表情で内視鏡をそっと手にとります。「思っていたよりも軽い!」と驚きの声が上がりました。

次世代に向けたがんに対する正しい理解の促進や理系教育、キャリア教育が狙い

この授業はオリンパスによる内視鏡の出張授業です。政府は、がんに対する正しい知識やがん患者への理解を通じ、健康と命の大切さへの認識を深めることを目的に、がん教育を推進しています。

2人に1人が罹患するがんに対する知識を持ってもらおうと、学習指導要領が改正され、中学校と高校では「がん教育」が必修になりました。しかし、教育現場では授業を行う医師など外部講師の確保や、身近で広範な知識を得られる企画の実現が課題になっています。

オリンパスは、教育委員会等と連携し、医療事業で培った知見を活かし、内視鏡の歴史や医療技術の基礎知識に関する授業に加え、実際に内視鏡や検査・治療用の器具に触れる「内視鏡の授業」を行っています。

2016年から始まったこの取り組みは、これまで多くの学校で行われ、生徒の学びを深めてきました。オリンパス社会貢献部門の篠原は「実際に内視鏡や医療機器に触れることで、がんや医療に対して興味や関心をもってもらうだけでなく、自身の将来について考えるきっかけにもなってほしい」と話します。

実際に内視鏡を操作 「学んだことを家族に伝えたい」

この授業では、生徒たちが実際に内視鏡を操作します。オリンパスの社員から操作方法についての説明を受けた後、人体模型の口の中から内視鏡を入れ、食道や胃へと挿入していきます。

モニターに映し出された体内の様子を周囲の生徒たちは真剣な表情で見守ります。映し出されたポリープや内視鏡の動きについて、メモをとる生徒もいます。内視鏡を扱ったある生徒は「食道の壁に内視鏡が当たらないようにすることに苦労しました。医師の技術はすごいと思いました」と振り返りました。このほか、生徒たちは胃や大腸の異物を取り除く処置具の使い方も学びました。

本物の内視鏡を手にすることで、生徒たちは検査や治療のイメージが明確になったようです。質疑応答では、生徒たちから「内視鏡はこれからも小型化が進みますか」「内視鏡での治療を受けている時は、痛みを感じるのですか」といったさまざまな質問が上がりました。

授業を通し、生徒たちはどんなことを感じたのでしょうか。ある生徒は「祖父ががんになり内視鏡の話をよくしていました。今日帰って家族に授業で学んだことを伝えたい」と話しました。

「机上で学んだことよりも数倍大きな財産になる」

同校の松本校長は「本物の内視鏡に触れることで、生徒たちは喜びや楽しさを感じている様子でした。机上で学んだことよりも数倍大きな財産になるでしょう」と話します。今回の授業を通し、生徒ががん予防の知識を深め、自分や家族の健康について考えるきっかけにしてほしいと言います。

オリンパスは海外でも国や地域に応じた次世代教育プログラムを展開しています。これは世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現を目指すオリンパスが発信している、「True to Life」のブランドメッセージを体現したものです。今後も次世代を担う子どもたちが、医療や先進技術について学び、将来について考える教育プログラムを増やす計画です。