現役アスリートの大腸がんサバイバー

プロ野球・阪神タイガースの原口文仁選手は、26歳の時に大腸がんと診断されました。その後、腹腔鏡手術と抗がん剤治療、リハビリを経て、プロ野球選手として劇的な復活を遂げます。今も現役として活躍する原口選手に、治療の体験談とがんサバイバーとしての想いを聞きました。

軽い気持ちで受けた人間ドックで「大腸がん」と診断

原口選手は、帝京高校卒業後、2010年に阪神タイガースに入団。2016年にはオールスターゲームにも選出され、捕手や打者として、チームに欠かせない存在となっていました。しかし、2019年のシーズン開幕前に受けた人間ドックの大腸内視鏡検査で、医師から大腸がんと宣告されます。「今思えば、2018年頃から疲れが取れにくい、便に鮮血が混じることがあるなど、多少、体の不調は感じていました。何も問題がなければいいなという気持ちで受けた検査で大腸がんが見つかり、頭の中が真っ白になりました。」(原口選手)

低侵襲な腹腔鏡手術を選択

これまで入院も手術もしたことがなかったという原口選手。手術前は、先が見えない不安と恐怖でいっぱいになり、「まだ幼い娘の成長を見届けられるのか?これから先、妻と一緒に歳を重ねていけるのか?自分はこの先、プロ野球選手としてキャリアを継続することができるのか?」そんなことが頭をよぎったといいます。家族や監督、チームメイトからの励ましの言葉に支えられて、原口選手は開腹手術よりも低侵襲とされる腹腔鏡手術を受けました。手術の所要時間は5時間ほど。4か所にメスを入れたため、手術直後は寝返りやトイレに行く際に痛みを感じたそうです。その後もトイレの回数が増える、今まで問題のなかった乳製品でおなかを下しやすくなるなどの細かな悩みはありましたが、体が回復するスピードは速かった、と話します。

大好きな野球に戻るために

原口選手は、2019年1月に手術を受け、驚くべきことに翌月にはトレーニングを再開。5月には2軍、6月には1軍の試合に出場し、復帰戦ではタイムリー2べースを記録します。19年シーズンは合計43試合に出場し、めざましい結果を残しますが、実は7月までは抗がん剤治療を受けながら、試合に出ていたといいます。「担当の医師が、野球を続けながら服用できる薬や治療法を選んでくれました。また、軽めの練習から開始し、球団も私の体調の変化に合わせて、日々のトレーニングを調整してくれました。医療関係者や球団、支えてくれた人たちのおかげで、大好きな野球に戻ることができました。」(原口選手)

自分の体験を多くの方に知ってもらうのが使命

プロ野球選手として復活した後、原口選手は患っていた大腸がんが「ステージ3b」であったことを公表しました。ステージ3bという状況からでもここまでやれる、治療をしながらでも仕事に戻れるということを病気と闘っている人たちに伝えたかった、という理由からです。
原口選手は早期がんではありませんでしたが、人間ドックで大腸内視鏡検査を受けたことで救われた、と振り返ります。「少しの発見の遅れがステージや病気の進行に繋がることもあると思います。疲れや日々の体調の変化など、些細なことでも違和感があれば、ぜひ病院で検査をしてほしいと思います。」(原口選手)
病気を克服し、試練を乗り越えたアスリートとして、現在も活躍する原口選手。自身の体験をより多くの人に語ることが自分の使命でもあると優しく、そして力強く語ってくれました。

患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。