QoLを左右する早期発見・早期治療の大切さ

2人の子どもを育てながら、医療従事者として働く岡田さんが大腸がんと診断されたのは45歳のときです。過去に大腸がんを患った親族はおらず、「健康だけが取り柄だと思っていた」と語る岡田さんにとって、全く予想していなかった出来事でした。がんが発覚したきっかけや検査・治療の体験、当時の心境について、岡田さんに話を聞きました。

人間ドックで便潜血が見つかる

子どもの受験が終わり、私生活が落ち着いたのを機に、岡田さんは2019年に人間ドックを受診しました。しばらく婦人科系の検査を受けていなかったため、どちらかというと乳がんや子宮がんの疑いがないかが心配で検診を受診したそうです。そこで、便潜血が見つかり、要精密検査と指摘されます。「元々、体質的に便秘をしがちだったため、何か別の理由で潜血があったのではないかと思いました。大腸に問題があるとは思っていませんでした。」(岡田さん)

家族の後押しで内視鏡検査を受診

当時は、新型コロナウイルス感染症が流行し始めており、岡田さんは感染の恐れや内視鏡検査への抵抗感から、再検査へ行くことを躊躇したといいます。しかし、家族の「絶対に受けるべき」との声に後押しされ、初めて大腸内視鏡検査を受診します。検査前、腸の内容物を除去するため腸管洗浄液を飲むのに苦労しましたが、鎮静剤を用いたため、検査中は痛みを感じることはなく、思っていたよりもスムーズに終わったと感じたそうです。検査の結果、医師から直腸がんと診断されました。

先が読めない不安から検索魔に

診断後、ショックを受けた岡田さんは、がんに関する情報をインターネットで検索し続け、不安定な状態になっていたと話します。「体の状態は一人ひとり違うはずなのに、スマートフォンで情報を漁り、自分の症状に当てはめては一喜一憂していました。当時、看護大学に通っていた子どもに医学書を渡され、客観的な情報にふれるとともに、主治医との面談を重ねることで、ようやく少し冷静になれたと思います。」(岡田さん)

コロナ禍の中、迎えた腹腔鏡手術の日

岡田さんが患った直腸がんは、固有筋層まで到達している可能性のある早期がんで、主治医の判断により、全身麻酔下による腹腔鏡手術を受けることになりました。手術の日程は決まったものの、コロナ禍で患者の受け入れ制限や手術の延期等の影響も出ていたため、不安な気持ちで手術の日を待っていたという岡田さん。幸い、手術は予定通り行われ、所要時間は約3時間でした。手術直後は、体内に貯留した血液や浸出液を体外に排出するドレーンという管を入れており、寝返りも打てず、痛みや違和感があったそうですが、その後の経過は良好で、10日ほどで退院することができました。そして、退院数週間後に出た病理検査の結果、リンパ節転移はなく、固有筋層にも達していないSMがんと確定しました。その後は定期的な検査による経過観察を行っており、今のところ治療の必要はないそうです。

当たり前の生活を取り戻して感じる「早期発見」の大切さ

手術から3年が経った現在、岡田さんは健康を取り戻し、支障なく日常生活を送っています。以前は当たり前だと思っていた普通の生活を送れていることにありがたさを感じているといいます。「病気を早期発見できたおかげで、今は手術前に近い形でQoL(Quality of Life)を保つことができています。あのとき、人間ドックや内視鏡検査を受けて、本当に良かったと思っています。」(岡田さん)がんに罹患し、自身も先の読めない不安や疑問を抱いたからこそ、自分の体験を話すことで何かの役に立つことができたらと快くインタビューを受けてくれた岡田さん。その後のQOLを大きく左右する病気の早期発見、早期治療の大切さを伝えてくれました。

患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。