「三早」の大切さを中国で伝えたい:40歳で胃がんを経験して

オリンパスの大連オフィスで消化器内視鏡に関連する営業を担当している于果(ユー・グオ)さんは40歳のとき、内視鏡検査で胃がんが見つかり、胃の半分を切除する手術を受けました。がんと診断されたとき、目の前が真っ暗になったという于さんですが、手術は成功し、3年経った現在でも元気に働いています。内視鏡検査の大切さを痛感し、人生観も変わったという于さんに話を聞きました。

コロナ禍に感じた腹部の違和感

最初に腹痛を感じたのは、2020年2月ごろ。ちょうど中国で新型コロナウイルスの厳しい対策が取られていた時期です。「外出制限が続き、家にこもっていて、運動もせずに食べてばかりだったので、それで胃の調子が悪くなったのかと思いました」(于さん)。最初はあまり気に留めなかったそうです。ところが食事を減らした空腹の状態でも、お腹が膨れ、痛みもあったため、知り合いの医師に電話で相談。そのときは市販の薬を飲んで、痛みが治まりました。「当時は急病でない限り、病院に行くのがためらわれる状況だったので、コロナが落ち着いたら検査に行こうと思っていました」(于さん)。

内視鏡検査で胃がんと診断される

腹痛から半年後。営業のために訪問した病院で、自身の症状を医師に話す機会がありました。すると、その医師は「まだ胃の検査をしていないなら、内視鏡の検査をしていきなさい」と、声をかけてくれたのです。「そのときは胃の痛みが治まっていましたし、内視鏡検査を受けるには時間がかかると思っていたので、自分では先延ばしにしていました」と、于さんは振り返ります。しかし、なじみの医師からの勧めということもあり、検査を受けることにしました。「実は内視鏡検査を受けるのは初めてでしたが、検査の方法や流れを把握していたため、心配はありませんでした。そして実際、痛みも全くありませんでした。鎮静剤が効いて眠ってしまい、検査もすぐに終わりました」(于さん)。

于さんの胃には約2cmの腫瘍があり、病理検査の結果、早期の胃がんであることが分かりました。「最初は冗談ではないかと思い、信じられませんでした。まず家族のこと、特に小学生になったばかりの子供のことを考えました。その後検査結果を見て、すぐに治療が必要だと理解しました」(于さん)。

腹腔鏡による手術で胃がんを切除

于さんは医師と治療方法について相談を重ねた結果、腹腔鏡下胃切除術を受けることになりました。手術にあたった医師や看護師はみな、于さんが仕事で親しくしていた人たちでした。また、自身の業務上、使用される医療機器や手技についてよく理解していたので、安心して、温かい雰囲気の中で治療を受けることができたといいます。

手術では、腹部の5カ所に孔(あな)をあけ、胃の半分を摘出しました。6時間に及びましたが、無事終了しました。開腹手術ではなかったため、手術から3日後には廊下を歩けたそうです。その結果、于さんは1週間で退院。合計20日間ほどの病欠で、仕事に復帰できました。

がんを経験し「健康に対する意識」が変化

手術当時はまだ40歳。学生時代からサッカーを続け、かつてはプロのサッカー選手として活躍した経歴をもつ于さんは、誰よりも体力に自信がありました。しかし病気を経験することで、これまでの生活習慣を見直すきっかけになりました。手術後はお酒もたばこも控え、健康第一を心掛けています。「手術前は体重が105キロだったのですが、現在は80キロをキープしています。運動も続けており、食事にも気をつけています」(于さん)。

実は、于さんの母親も胃がんの経験者で、胃の4分の3を切除しています。がんの再発を防ぎ、健康でいるため、家族みんなで食生活や生活習慣の大切さを話し合う機会も増えたそうです。

「内視鏡検査の重要性を中国で伝えていきたい」

健康を保つためには何よりも「三早」が大切だと、于さんは語ります。中国語で「三早」とは、早期発見、早期診断、早期治療の3つを指します。

「中国では、内視鏡検査に対して『痛いのではないか』という恐怖心や、『検査は面倒だ』という感情をいだく方が多いです。私の場合は、知り合いの医師の手配でスムーズに検査が受けられましたが、事前検査などで何度も病院に通わなければならないケースもあります」(于さん)。このように中国の現状を指摘する于さんですが、それでも「内視鏡検査は、定期的に受けるべきだ」と、周囲に強く勧めています。その結果、実際に検査を受けて、病気の早期発見につながった友人もいるそうです。

「私はオリンパスで14年間働き、内視鏡関連の営業に従事してきましたが、中国では内視鏡検査の重要性がまだ知られていないと感じます。内視鏡検査による早期発見で命を救われた経験を生かし、できるだけ多くの人に『三早』の重要性を伝えていきたいです」(于さん)。

患者さんの状態や感じ方、治療内容は個人差があります。診断、治療については医師にご相談ください。