像がぼやけてしまうのはなぜ? 〜レンズの収差について〜

前回の『レンズで物が大きく見えるのはなぜ? 〜光とレンズの関係~』では、光の性質やレンズの基礎について説明しました。レンズによって、小さな物が大きく見えたり、遠くの物を良く見たりすることができます。顕微鏡やカメラでは、像がよりきれいにはっきりと見えるように、何枚ものレンズが組み合わされています。

今回は、複数枚のレンズ構成が必要となる理由の1つ「収差」という現象について学んでいきましょう!

★トリビア

人間の目で見える小さな物の限界は約0.1mmで、細い髪の毛の太さ程度。オリンパスの光学顕微鏡では約0.2㎛(0.0002mm)の細菌やウイルスまで見えるんだ!

「収差」があるとどうなるの?

「収差」とは、レンズにより集められた光が、1つの焦点に完全に集まらない現象のことをいいます。収差が起こると、顕微鏡で見た画像やカメラで撮影した画像がぼやけたり、ゆがんだりします。収差には大きく分けて、光の色の違いにより生じる「色収差」と、1色の光でも起こる、つまり光の色に左右されない「単色収差」があります。

太陽光線のような通常の光は、さまざまな色が混ざってできています。前回の『レンズで物が大きく見えるのはなぜ?〜 光とレンズの関係~』で、“光は粒子であり、波でもある”ことに触れましたが、通常、光の中のそれぞれの色の光は異なる波長を持っています。波長が変わるとレンズで屈折する大きさも変わります。例えば凸レンズでは、黄色い光は赤い光よりも大きく屈折し、青い光はさらに大きく屈折するので、微妙に焦点がずれてしまいます。このようにして焦点の位置に差が生じてしまうのが色収差です。色収差があると、像がにじんだり、ぼやけたりしてしまいます。

また、「単色収差」の1つに「球面収差」があります。普通の凸レンズの表面は、丸い球の表面の一部を切り取ったような形をしています。そのため、レンズの外側になるほど曲がり方がきつくなってしまうので、光の屈折もきつくなります。そうなると、レンズの中心近くと外側とで焦点の位置に差が生じます。これが球面収差です。球面収差があると画像がぼやけてしまいます。

どうすれば収差はなくなる?

精密に物を見なければいけない顕微鏡やカメラのような製品では、収差をできるだけ小さくする必要があります。特に、顕微鏡はとても小さな物を拡大して見るため、多少のずれでも目立ってしまいます。そこで、非常に精密な技術が必要とされます。

多くのカメラや顕微鏡では、収差が逆方向になる凸レンズと凹レンズを組み合わせたり、屈折の大きさが異なるレンズを組み合わせたりすることで、収差が打ち消しあうように調整してあります。例えば、オリンパスのカメラ用レンズや、顕微鏡の対物レンズも、多くの種類のレンズを何枚も組み合わせて構成されています。

収差がなるべく小さくなるようにするためには、精密なレンズ設計と製造・加工技術が必要となります。

★トリビア

高性能な顕微鏡で使用される対物レンズには非常に高価なものもあるんだ。レンズの材質には特別なガラスが使われていて、その価値はダイヤモンドと同じくらいなんだって!

レンズを組み合わせる以外にも、なるべく収差が発生しないようにつくられているレンズもあります。その1つが、レンズの中心と外側で曲がり方を変えて、焦点の位置が同じになるようにした「非球面レンズ」です。これにより球面収差が小さくなります。

以上のように、レンズの精密な設計と高度な製造技術によって、よりはっきりとした美しい画像を手に入れることができるのです。

いつまでも色あせることなく重要な、光をつかさどるレンズの技術

約2000年も前から人々に利用されてきたレンズ。その技術は、いろいろな装置に応用され現在も進化を続けています。近年、AI(人工知能)や通信・映像機器、ハイテク製品など、私たちの生活変化に合わせてさまざまな新しい技術の研究・開発が進んでいます。しかし、光をつかさどるレンズを生かした技術は色あせることなく重要なもので、そうした新技術とともに将来を担っていく、今後もなくてはならない存在といえるでしょう。

オリンパスもレンズ技術を活かした顕微鏡や内視鏡、カメラなどの事業を通じて社会に貢献していきます。

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