環境方針・戦略
基本的な考え方・方針
オリンパスグループの環境への取り組みは、経営理念、「オリンパスグローバル行動規範」、および2021年4月に策定した「環境安全衛生ポリシー」※のもと実施しています。「オリンパスグローバル行動規範」では環境に対する考え方や必要な行動が示されており、これを明確化したものが「環境安全衛生ポリシー」です。
※ 1992年8月に策定した「オリンパスグループ環境憲章」をはじめとして、2015年5月に環境と経済の両立に関わる内容を追加すべく「オリンパスグループ環境方針」への改訂を行い、その後、2021年4月に、「オリンパスグループ環境方針」に安全衛生・健康の方針を組み入れ、これらを包括的にマネジメントすることを目的とした「環境安全ポリシー」を策定
推進体制
オリンパスグループでは、CEOおよびCAOが環境最高責任者を務め、EHS(環境・健康・安全衛生)を含む、人事・総務機能を統括するHuman Resources Headがグループ全体の環境業務の統括責任者を務めています。EHS統括部門はHuman Resources Headの指示のもと、グループ全体の「環境安全衛生ポリシー」を策定するとともに、環境施策の立案・推進、エネルギー削減目標の進捗度や施策の実施状況などのグループ全体の環境活動状況のモニタリングを行っています。
オリンパスグループは、事業部門やグループ会社ごとに環境管理部門を設け、EHS統括部門がグループ全体の環境経営を推進しています。EHS統括部門は、環境経営の推進に不可欠なグローバル各拠点の環境に関する取り組みや法令順守状況および環境関連データを効率的に収集しグループ内で共有する情報基盤を整備し、2015年3月期から運用しています。
世界各国の主要な生産拠点および物流・販売子会社ではISO14001の認証を取得し、監査などを通じて環境マネジメントシステムを継続的に改善しています。2021年3月期には、オリンパスグループの環境ガバナンスの強化および環境管理の効率化のために、EHS統括部門を含む日本およびアジアの12法人を対象としたISO14001のマルチサイト認証を取得しました。
今後、環境課題への迅速かつ的確な対応の促進に向け、ISO14001のマルチサイト認証の対象拠点をさらにグローバルへと拡大することを目指します。
環境推進体制
ISO14001認証取得事業場一覧(2021年7月現在)
事業場 | 認証取得年月 | ||
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日本 | オリンパス※4 | 本社事務所(新宿)※1 | 2020年8月 |
東京事業場(笹塚)※2 | 2020年8月 | ||
技術開発センター(石川) | 2000年3月 | ||
技術開発センター(宇津木) | 2000年3月 | ||
技術開発センター(高倉) | 2018年2月 | ||
長野事業場(辰野) | 1998年2月 | ||
長野事業場(伊那) | 2014年5月 | ||
白河事業場 | 1998年10月 | ||
オリンパスメディカルシステムズ ※4 |
技術開発センター(石川) | 2000年3月※3 | |
技術開発センター(宇津木) | 2000年3月※3 | ||
日の出工場 | 1998年7月 | ||
長野オリンパス※4 | 1998年2月 | ||
会津オリンパス※4 | 1998年10月 | ||
白河オリンパス※4 | 1998年10月 | ||
青森オリンパス※4 | 1998年11月 | ||
オリンパステルモバイオマテリアル※4 | 三島工場 | 2020年8月 | |
研究開発センター | 2020年8月 | ||
オリンパスロジテックス※4 | 相模原事業場 | 2003年11月 | |
オリンパスメディカルサイエンス販売※4 | 2004年3月 | ||
米州 | Olympus Surgical Technologies America National Service Center | 2005年12月 | |
Olympus Scientific Solutions Americas Corp. | 2010年7月 | ||
Olympus Scientific Solutions Technologies Inc. | 2010年7月 | ||
Olympus NDT Canada Inc. | 2010年7月 | ||
Olympus Corporation of the Americas
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2019年9月 | ||
Olympus Surgical Technologies America
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2019年9月 | ||
Olympus Respiratory America
|
2019年9月 | ||
欧州・中東 | Olympus Winter & Ibe GmbH | 2001年5月 | |
KeyMed (Medical & Industrial Equipment) Ltd. | 2002年3月 | ||
KeyMed (Ireland) Ltd. | 2002年3月 | ||
Algram Group Ltd. | 2007年1月 | ||
Medical Physics International Limited | 2012年10月 | ||
Olympus Iberia S.A.U. | 2018年9月 | ||
アジア・パシフィック | Olympus (GuangZhou) Industrial Co., Ltd.※4 | 2004年10月 | |
Olympus Trading (Shanghai) Limited※4 | 2012年2月 | ||
Olympus Vietnam Co.,Ltd.※4 | 2013年4月 | ||
Olympus Australia Pty Ltd | 2017年8月 | ||
Olympus New Zealand Limited | 2017年8月 |
※1 認証範囲はグループ環境統括部門、本社事務所(新宿)の環境統括部門及び医療営業統括部門
※2 認証範囲は東京事業場(笹塚)の総務部門、医療カスタマーセンター
※3 2020年3月以前はオリンパス(株)の一部として認証を取得
※4 ISO14001マルチサイト認証の対象範囲
仕組み・取り組み
環境課題の認識
オリンパスグループは、経営戦略や事業計画の策定段階において、当社の事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への影響度が高いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移行リスク、自然災害による物理的リスクの内容も含みます。
リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発生可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを行い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法人の環境統括部門が事業所関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。
また、特に事業運営への影響度の大きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執行会議および取締役会へ報告されます。 CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不足している場合は活動計画の見直しを行います。
環境法規制の順守状況(2021年3月期)
オリンパスは、環境法規制対応のための規定類の整備と維持、環境管理責任者や推進者への教育、現地運用状態のモニタリングや改善を継続的に実施しています。
2021年3月期は、比較的軽微なものを除き環境関連の法令違反・事故はありませんでした。また、訴訟・罰金・科料の発生もありません。
長期目標と施策
オリンパスグループは、昨今の環境汚染や環境への過剰な負荷がもたらす気候変動、その他の生態系への影響は喫緊の社会課題であると強く認識し、2021年5月に新たに「社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献」を重要課題(マテリアリティ)に追加しました。
併せて、重要課題への対応として、2030年までに自社事業所からのCO2排出量(Scope 1 & Scope 2※1)を実質ゼロとするカーボンニュートラル目標を設定しました。今後、カーボンニュートラルの達成に向けて、製造改善活動や省エネ施策を引き続き推進するとともに、2030年までに自社の事業所における全消費電力※を再生可能エネルギー由来に段階的に切り替え、CO2削減の取り組みを加速させます。また、サプライチェーン全体の環境負荷削減の重要性も認識しており、物流におけるモーダルシフト・輸送効率改善や製品の省エネ化・小型軽量化、グリーン調達の取り組みを継続して推進していきます。
※1Scope 1:敷地内における燃料の使用による直接的な温室効果ガス排出、Scope 2:敷地内で利用する電気・熱の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出
※2一部、販売拠点などの賃借物件は除く
2021年3月期 主な環境活動実績
重点テーマ | 目標 | 施策 | 2021年3月期の実績・成果 | 2022年3月期目標 | |
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環境経営の推進 | 環境ガバナンス 体制の強化 |
環境マネジメントシステムの有効性向上と運用の効率化 |
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カーボンニュートラルに向けた実行計画の策定 |
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内部環境監査・ ISO14001認証審査における指摘事項への確実な対応 |
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内部環境監査・環境統括機能監査・ マルチサイト認証外部監査における指摘事項への確実な対応 |
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環境リスク低減活動 | 環境法規制対応プロセスの継続的改善 |
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環境・安全衛生リスク診断の対象拠点拡大 製品および事業場系 |
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製品ライフサイクルにおける環境の取り組み | 製品における取り組み | オリンパスエコプロダクツの創出 |
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事業特性に応じた環 境配慮製品の継続的 創出 |
事業場における取り組み | CO2排出量:15%削減 (対2018年3月期) エネルギー原単位:7.73%改善 (対2013年3月期) 再生可能エネルギー 導入率10%以上 排出物原単位:6%改善 (対2018年3月期) 水使用量原単位:6%改善 (対2018年3月期) |
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CO2排出量:25.4%削減 エネルギー原単位:12.3%改善 再生可能エネルギー 導入率12.7% 排出物原単位:16.1%改善 水使用量原単位:14.1%改善 |
CO2排出量:21%削減 (対2018年3月期) 再生可能エネルギー 導入率向上 (対2021年3月期) 排出物原単位:7%改善 (対2018年3月期) 水使用量原単位:7%改善 (対2018年3月期) |
気候変動対応
オリンパスグループは、気候変動が地球環境を脅かす重大な課題であるとともに、オリンパスグループの事業活動に影響を及ぼす重大な課題であるとの認識の下、経営戦略における重要課題(マテリアリティ)である「社会と強調した脱炭素(カーボンニュートラル)社会実現への貢献」への対応の一環として、2021年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-Related Financial Disclosures)の提言に賛同することを表明しました。TCFDのフレームワークに沿って、オリンパスグループにおける気候変動問題への取り組みを開示します。
ガバナンス
オリンパスグループでは、製品開発、調達、製造、物流、販売、修理といったバリューチェーン全体を通した環境負荷の低減に取り組んでいます。気候変動対応を含む環境活動の最高責任者であるCEOおよびCAOの下、 EHS(環境・健康・安全衛生)機能を管轄する人事・総務担当役員が、グループ全体の環境活動を統括しています。
EHS機能は、温室効果ガス使用量の削減目標を含む環境行動計画を策定し、グループ全体の環境行動計画の進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最高責任者(CEOおよびCAO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指示を行います。取締役会は気候変動の対応状況について年1回以上の報告を受け、取り組み状況を監督しています。また、気候変動対応を含むESGへの取り組みに対する経営層のコミットメントを強化するため、執行役の報酬について、長期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬のうち20%がESG評価機関の評価結果と連動しています。
戦略
オリンパスグループは、シナリオ分析の手法を用いて、短期、中期および長期の時間軸ごとに気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提示している「2℃シナリオ(産業革命前からの世界の平 均気温上昇を2℃未満とするシナリオ)」および「4℃シナリオ(産業革命前からの世界の 平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1~5年)には、自然災害発生による操業停止・サプライチェーン断絶を、中長期的(10~20年)には、炭素税の導入やCO2削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。
気候変動のリスクはオリンパスグループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは限定的であると認識しています。例えば、物理的リスクとしては自然災害の自社工場操業への影響についても台風や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの面でも、昨今世界規模で台風や洪水が発生し、当社でも販売拠点の一時休業等の影響がありましたが、影響は限定的でした。また、移行リスクとしては、炭素税導入等による操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると工場でのエネルギーコストは小さいため影響は限定的であると考えます。
また、気候変動の機会については、CO2削減に寄与する製品へのニーズの高まりを機会ととらえて省エネルギー等に配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、オリンパスグループの製品は製品自体が小型で使用によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が小さいことから、事業活動に大きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。
環境変化 | リスク | 機会 | 対策 | |
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2℃シナリオ | 低炭素社会への移行に伴う規制強化 |
<移行リスク>
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4℃シナリオ | 気温上昇・異常気象の発生増加 |
<物理リスク>
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※IEA(2020)「World Energy Outlook2020」の炭素税価格をもとに算定した財務影響の推定額:約6億円/年
リスク管理
オリンパスグループは、気候変動を含む環境に関連するリスクについて、当社の事業に影響を及ぼすすべてのリスクを網羅したグループ全体のリスク管理の枠組みの中でリスクの特定、評価および管理を行っています。詳細については、「環境課題の認識」を参照ください。
指標と目標
オリンパスグループは、2030年までに自社事業所からのCO2排出量(Scope 1 & Scope 2)を実質ゼロとすること、2030年までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることの2つの目標を2021年に策定しました。
2021年3月期における実績は、温室効果ガス排出量25.4%削減、再生可能エネルギー由来の電力導入率12.7%を達成しました。今後は2030年までの目標達成に向け、世界各国の拠点での継続的な製造改善活動や省エネの推進と、再生可能エネルギーの導入を進めます。また、製品ライフサイクル全体での温室効果ガスを削減するために、環境配慮型製品の開発、グリーン調達の推進や物流効率改善等に継続的に取り組みます。
水リスク対応
世界的に関心の高い水リスクについては、主要な開発・生産拠点に対して世界資源研究所(WRI)のAqueduct Water Risk Atlasなどの水リスク評価ツールを使用し、「物理的な水ストレス」「水資源に関する法規制リスク」等の評価を行い、水リスクが著しく高い地域に立地する拠点がないことを確認しております。また当社の事業活動に与える影響は小さいものの、水が豊富な場所への事業拠点の設置、事業活動における水使用量の削減、排水設備の管理者の設置ならびに定期的な排水測定などを実施しています。
Aqueduct Water Risk Atlasによる水リスク評価結果と主要拠点数
低 | 低~中 | 中 | 中~高 | 高 |
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2 | 16 | 2 | 1 | 0 |
水リスク評価結果ごとの水使用量の総量
生物多様性保全
生物多様性の損失は、地球環境や私たちの暮らしに深刻な影響をもたらすと懸念されています。
オリンパスグループは、各事業場における水使用・排水の管理、緑地の維持管理をはじめ、事業場周辺での清掃活動や森林保全活動などを通じて、生物多様性の保全に取り組んでいます。
グリーン調達
オリンパスは、2001年に「オリンパスグループグリーン調達基準」を発行しました。グリーン調達基準は、Webサイトにも掲載し、すべてのサプライヤーさまにオリンパスグループの環境活動に対する考え方を説明しています。
また、継続的に取引のある世界各国の主要なサプライヤーさまを対象に毎年1回実施している企業調査において、ISO14001認証の取得状況や、CO2削減、水使用量削減、廃棄物削減、化学物質対策の状況などを確認し、サプライヤーさまとともに環境活動レベルの向上を図っています。
環境教育・意識啓発
オリンパスグループは、「環境安全衛生ポリシー」に基づき全員参加の環境活動を進めていくために、従業員一人一人の環境意識の向上が重要であると認識し、グローバルなグループ統一イベントである「オリンパス環境月間」の取り組みなどを通じて環境意識の啓発に取り組んでいます。2021年3月期では、グループ従業員を対象とした「環境eラーニング」を実施し、気候変動や海洋プラスチック廃棄物汚染をはじめとする主要な環境問題やグループ全体の環境活動状況をグループ内に周知しました。このほか、新型コロナウイルスの感染拡大防止を実施しながら、主要な拠点で地域特性に応じた環境啓発イベントを実施しました。
また、環境法規制対応やISO14001内部監査など、環境マネジメントシステムの改善や効果的な運用に必要となる専門的な各種教育を世界各国の各事業場で実施しています。
主な環境教育の実施状況(オリンパスおよび国内グループ会社・2021年3月期)
対象者 | 目的・内容 | 受講者数 |
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環境管理責任者 | 環境管理責任者の責任および役割の理解(環境法規制順守や有効なEMS構築に向けたポイントなど) | 5名 |
事業場環境事務局 | 環境実務担当者のスキルアップ研修(環境法規制の最新動向や改正省エネ法などの実務対応の理解) | 1名 |
廃棄物管理担当者 | 廃棄物処理法研修(廃棄処理法の規制内容や廃棄物管理の実務対応の理解) | 36名 |
新入社員 | 新入社員向けの環境教育(環境問題と企業の責務およびオリンパスの環境取り組みに関する理解) | 58名 |