医療水準の向上
基本的な考え方
オリンパスグループは、対象となる疾患の治療レベルを向上させることにより、患者さんのQOL(Quality of Life:⽣活の質)向上を⽬指しています。オリンパスグループにはそのための専⾨組織「メディカル&サイエンティフィックアフェアーズ (MSA)」があり、医学的・科学的な知⾒を駆使して、臨床的に適切かつ経済的に価値がある安全で効果的な製品とソリューションを世界中に提供することにより、患者さん、医療従事者、関連コミュニティに貢献しています。
この専門組織は、3つの重要な役割を担っています。
- オリンパスグループの医療の専⾨性を強化し、安全で効果的な患者さんを中⼼としたソリューションを推進するための⾰新的な医療機器のイノベーションの開発
- 医療従事者が迅速にオリンパス製品に関する専⾨知識を習得し、患者さんの安全を確保しながら優れた臨床結果を得るための教育プログラムおよびトレーニングの開発・実施
- 世界中のエビデンスを活⽤し、患者さんの臨床成果を向上させること、および社会的な経済価値を提供すること
取り組み
医療従事者向けのグローバルなトレーニングに注力
この推進を担う専⾨組織「プロフェッショナルアフェアーズ(PA)」は、医療従事者が最高のパフォーマンスを発揮し、患者さんに安全とケアを提供できるよう、臨床知識や症例技術向上のための、専門的で洗練された教育プログラムとトレーニングを包括的に提供しています。
オリンパスのトレーニングプラットフォーム「オリンパスコンティニュアム(OLYMPUS CONTINUUM)」は、医療従事者の支えとなるよう、有意義なトレーニング機会を継続的に提供していくことを目指しています。
医療従事者の労働環境は多様化しており、トレーニングに対する要求は、従来のスキルベースの学習から大きく変化しています。そのため「オリンパスコンティニュアム」では、一連の学習と、患者さんの実際のケアを結び付けていきます。デジタルコンテンツを使った自己学習、対面でのトレーニング、トレーニング後のコラボレーションなどのブレンド型トレーニングを最大限に活用し、医療従事者のあらゆるキャリアステージをサポートすることで、患者さんのQOLの向上につながることを期待しています。
2023年3月期は各事業領域(グローバル)において、合計1,930回(前年同期比+50%)のトレーニングを提供しました。
「オリンパスコンティニュアム」トレーニング実績
開催回数(前年同期比) |
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1,930回(150%) |
助成の取り組み
オリンパスグループは、患者さんのQOLの向上を目的として、オリンパス製品が使用される疾患や治療に関連する第三者の活動を、助成金プログラムを通じて支援しています。この助成では、医療従事者に向けては、治療や処置などの手技向上のための実地研修や、医療における公平性を向上させるプログラムなどを支援しています。患者さんに向けては、検診受診啓発プログラム、医療知識の向上のためのプログラム、支援を必要としている方への取り組みなどを支援しています。研究助成はオリンパス製品に関連する研究を支援するもので、その数を厳選して行っています。2023年3月期は、40か国以上の390以上の団体へ助成を実施し、製品提供を除く助成金の総額は約5.7百万ドルとなっています。
臨床試験データの透明性に関するポリシー
私たちは、質の高い医療技術をお届けすることを通じて、人々の生活をよりよくするお手伝いをすることが、オリンパスのミッションであると考えます。質の高い医療技術とは、医療従事者の皆さまが患者さんに、より進歩したケアを提供できるようにする技術です。患者さん一人ひとりに最適な治療を見いだせるようにするためには、臨床試験データの透明性と情報の公表が必要です。
オリンパスは、この「臨床試験データの透明性に関するポリシー(Clinical Data Transparency Policy)」を、当社の社会的責任と位置づけ、当社が経営理念として掲げる「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」にとっての不可欠な要件の一つと考えています。
従うべき原則
臨床試験情報登録と結果の報告
オリンパスは、国際的に認められたガイドラインや関連する法令・規則に従って、臨床試験をclinicaltrials.govその他の治験情報登録ウェブサイトに登録し、試験に関する情報や結果を当該サイトに適切に開示します。
適時の公表
医学研究成果の適時の公表は、エビデンスに基づく意思決定に役立ちます。そのため、オリンパスは、研究の結果の如何にかかわらず、学会や査読のある学術誌を通じた適時の公表に力を入れています。
適用範囲
オリンパスは、医学研究の公表に関して、極めて高い倫理的・科学的基準にコミットしています。オリンパスがスポンサーを務める臨床研究結果の正確でバランスのとれた適時の公表に努めることで、公共衛生の進歩に寄与します。こうした医学研究には、臨床介入研究(clinical interventional studies)、観察研究(observational studies)、リアルワールド研究(real-world studies)などがあります。
公表運営委員会
オリンパスのスポンサーによる臨床研究はいずれも、「公表運営委員会(Publication Steering Committees)」の監督下に置かれ、委員会のサポートのもと、「臨床試験データの透明性に関するポリシー」を適用します。委員会メンバーは、「International Committee of Medical Journal Editors: ICMJE)や「Good Publication Practice(GPP)Guidelines」といった国際的な指針や基準にしたがって、研究結果が合理的なスケジュール内に公表できるようにします。
著者資格
著者資格(authorship)は、当該研究に貢献した適格な研究者全員を対象として、透明性が高くバランスのとれた方法によって決定するため、ICMJEガイドラインに定められた4つの基準に従います。これらの要件は、医学研究の開始に先立ち、参加する研究機関あるいは研究者個々とオリンパスが取り交わした書面による契約に明記します。
著者は4つの基準のすべてを満たしていなければならず、また、4つの基準を満たす者は誰であれ、オリンパスとの関係の如何にかかわらず、著者として論文に名前が明記されます。また、これらの基準にもとづき著者の資格があると見做されるオリンパスの社員については、著者として記載されたうえで、オリンパスへの所属を開示します。
著者として誰を含めるかについての最終決定は、責任研究者(lead principal investigator)、その他の研究者、およびオリンパスを含む、研究に関与したすべての当事者による実際の活動内容を踏まえて行います。
投稿論文の全著者は論文の編集権限(editorial control)を保有し、投稿前の最終版の承認によって、当該論文に対する一切の責任を引き受けます。
著者資格の決定の際には、直接・間接、明示的・暗示的を問わず、いかなる状況においても、著者にオリンパス製品の購買・処方・照会・販売・斡旋、もしくはそうした手配をおこなうよう圧力をかけたり、仕向けたりすることはありません。また、著者資格の決定が、こうした過去の行為に対する見返りとしてなされることはありません。著者資格は、提供されたサービスに対する見返りや贈与であってはなりません。
オリンパスは、いずれの著者に対しても、執筆や編集作業の報酬の支払いは行いません。ただし、著者が負担した相応の実費(プレゼンテーションのための旅費や雑誌掲載手数料など)についてのみ支払いの対象とし、適用法の定めるところにより、その旨開示するものとします。また、著者は自身の研究結果の客観性を損なわせたり、専門家としての判断に影響を与えたりするととられかねない金銭的・非金銭的な利益相反について開示するものとします。
商業人員(営業やマーケティング関係者)は、論文の計画・作成・レビューにはいっさい関与しないものとします。
謝辞
本ポリシーに基づき著者の資格があるとは認められないものの、研究での分析作業や論文の草稿作成を補佐した者(プロのメディカルライター、研究員、科学顧問、オリンパスの従業員を含む)については、別途、それぞれの貢献度に応じて、「謝辞」の欄に名前を明記します。その際、貢献の内容についても言及するよう努めます(たとえば、「科学顧問としての役割を果たした」、「研究提案を批判的にレビューした」、「データの収集を担当した」、「被験者の提供やケアを担当した」、「原稿の執筆または技術的内容の編集に参加した」など)。
データアクセス
オリンパスは、社外の著者が臨床試験データへのアクセスを要求した場合、ICMJEにもとづいて、著者としての役割や義務を果たすのに必要(臨床試験結果の解釈など)と見なされる場合に限り、患者さんを匿名化したうえで、すべての社外の著者に対し、かかるデータへのアクセス権を付与します。ただし、いかなるデータアクセス活動においても、患者さんの個人データの保護が最も重要と考え、徹底します。
私たちは、臨床研究に従事される皆さまが医療の進歩にもたらす大きな貢献を非常に重視しています。そこでオリンパスでは、当社が保有する臨床試験データを、研究者の皆さまに、相互に合意可能な方法と形式によって提供していく考えです。
多施設共同研究(multi-center study)における個々の施設の研究結果の発表出版や、そうした発表出版のタイミングについては、当該施設とオリンパスとのあいだで書面による合意を取り交わします。研究結果の報告においては、それぞれの研究の種類に合った報告ガイドラインに沿って実施します。例えば、無作為化比較試験の報告の際には「臨床試験報告に関する統合基準」(Consolidated Standards of Reporting Trials: CONSORT)に従うものとします。
わかりやすい言葉で書かれた治験結果の要約
オリンパスのスポンサーによる臨床試験に参加頂いた治験ボランティアの皆さまは、わかりやすい言葉で書かれた治験結果の要約を閲覧いただけます。