人材開発

人材開発の基本的な考え方

オリンパスグループは、⻑期的視点における最も重要な経営資源は「人」であると考え、誠実・共感をもって従業員⼀人ひとりを尊重するとともに、経営環境の変化に対してはグローバル・グループ⼀体となって結束し俊敏に対応できる組織づくりを図っています。そのためには、⼀人ひとりがグループ共通の理念や価値観を深く理解し、グローバルで活躍するためのスキル、そして⾼い専⾨性を有し、リーダーシップを発揮していくことが必要です。また、こうした従業員の持つ意欲と活⼒を信頼し、その個性と能⼒が最⼤限活かされるよう適所に適材を配置することも重要です。

当社の人材開発の目標は、すべての従業員が成長し、適切な能力を身につけ、「私たちのコアバリュー」を体現できるような文化を創造することです。市場、技術、社会の変化は、私たちの働き方や必要とされるスキルに大きな影響を与えます。そのため、オリンパスグループでは、従業員の自発的かつ継続的な学びを奨励しています。従業員の成長につながる集合研修を提供し、同僚やリーダーから学びを得ることを推奨します。また、成長を後押しするような仕事や職務を割り当てます。

また、リーダーシップのクオリティは、事業の成功と企業文化の変革の両方を実現する重要な要素となるものです。オ
リンパスが導入しているグローバル・リーダーシップ・コンピテンシー・モデルは、グローバル共通でリーダーシップ開発、タレント&サクセッション(後継者育成)マネジメント、採用、リーダーの人事評価に適用されています。

オリンパスグループは、従業員が世界中のどこで働いているかに関わらず、一貫した能力開発を行えることを目指しています。また、新しいグローバル人事評価制度を導入することにより、従業員へ「私たちのコアバリュー」の重要性をさらに強調し、業務に対するフィードバックと従業員の学びを促進します。従業員は、個人個人の能力開発計画を立てることが奨励されています。さらに、従業員の能力開発の成果は、定期的な従業員調査によって評価されています。

能力開発体系

オリンパスグループは、リーダー、個人、チームを対象に、グローバルおよび各地域で幅広い能力開発の機会を提供しています。

重点領域は、下記のとおりです。

私たちの存在意義、価値観とカルチャー ― 患者さんの安全と品質をすべての行動の中心に置く:グローバルおよび各地域でのオンボーディングセッション、従業員が「私たちのコアバリュー」の重要性を再認識し、取り組みを深めるためのコアバリューウィーク、患者さんと医療従事者がストーリーを共有するレクチャーなどを実施しています。

個人およびプロフェッショナルとしての成長 ― 業務および個人レベルにおいて成功するためのスキルとマインドセットの構築:リーダーシップ・コンピテンシーに重点を置いたリーダーシップ・プログラム、リーダー向けのGlobal360フィードバック、プロジェクト・マネジメント、プレゼンテーション、意思決定、フィードバックなどのビジネススキルに関連したファシリテーションコースやeラーニング、語学コース、異文化理解ワークショップ、キャリアワークショップなどを実施しています。2020年から2023年にかけては、グローバル共通実行力強化研修を提供し、合計約6,600名のリーダーと従業員が参加しました。

部門別/職種別スキル ―選択した分野の専門性の構築
営業担当者向け製品・営業トレーニング、製造および修理拠点担当者向けトレーニング、マーケティング・アカデミーなど、さまざまな研修を行っています。

これらに加えて、20,000を超えるコースから選択が可能なLinkedInラーニングを提供しています。すでに全世界で約8,000名の従業員が利用可能であり、一年以内に20,000名まで拡大する予定です。

リーダーシップ開発

オリンパスグループは、グローバルな変革の取り組みを支援するため、リーダーにとって最も重要なマインドセットと行動を表すコンピテンシーを定めた「グローバル・リーダーシップ・コンピテンシー・モデル(Global Leadership Competency Model: GLCM)」を2019年に導入しました。まずはシニアマネジメント層のタレント&サクセッションマネジメントに適用し、2021年以降はすべてのマネージャーに拡大適用しています。また、このモデルは採用、タレント&サクセッションマネジメント、人材育成・キャリア開発にも適用しており、2023年4月からはグローバル人事評価制度にも適用しています。
GLCMは当社グループのグローバル・リーダーシップ人材開発の基礎となるものです。

2022年5月より、すべてのリーダーを対象にGlobal360フィードバックを実施しています。直属の部下、同僚およびマネージャーからフィードバックを受けることで、リーダーが自分の強みと伸ばすべき領域に関する洞察を得て、そのプロセスから能力開発目標を導き出すことを目的としています。導入後、すでに500名を超えるリーダーがこのフィードバックに参加しています。

2022年度は、シニアリーダーを対象にマスタークラスを6回開催し、合計で約850名が参加しました。外部有識者による講演会では、イノベーション、戦略的マインドセット、人材開発などのリーダーシップ・コンピテンシーにフォーカスしました。

タレント&サクセッションマネジメントについては、パフォーマンス・ポテンシャル(9box)で人材の可視化を行い、それぞれの従業員に合った能力開発につなげるとともに、ハイポテンシャル人材を特定し、サクセッションパイプラインの強化および戦略的・計画的な育成・アサインメントを実施しています。

2023年からは、講師によるGLCMモジュール・プログラムをオンラインで開始します。マネージャーは経営戦略や個人の能力開発計画に基づき、自らのスキル構築に役立つ特定のリーダーシップ・コンピテンシーに関するモジュールを選択できます。このグローバルで統一されたプログラムによって、オリンパスのリーダーたちは、リーダーシップに関する全地域共通の言語とスキルを身につけることができます。

地域別には例えば、以下のようなリーダーシップ開発の取り組みを実施しています。
・地域別メンタリング・スキーム
・新任リーダープログラム
・特定のスキルにフォーカスしたコース(例:チェンジマネジメント、コーチング、採用など)

日本での研修・教育例

オリンパスおよびオリンパスマーケティング株式会社では、学習管理システム「オリンパスカレッジ・プラス」などを⽤いたeラーニングをはじめ、集型研修による専⾨スキルトレーニングやコンプライアンス教育など、かねてから年間数百タイトルに上る学習プログラムと機会を従業員に提供してきまた。昨今、オンライン環境がより発展を遂げている状況に合わせ、さらに効果的・効率的な能⼒開発の仕組みづくりに取り組んでいます。具体的には、集型研修のオンライン化による移動コストの削減、社内スタジオの新設、既存プログラムの動画化・オンデマンド化による利⽤率向上、さらにこれらを組みわせた反転学習による学習効果向上などを実現しています。また人事関連システムのグローバル統⼀化に合わせ、さらなるコンテンツの拡充や学習効果、利用率の向上に取り組んでいます。

ものづくり人材育成制度

高度技能者育成制度の技能レベル(日本の製造拠点)高度技能者/技能グランプリ挑戦、社外指導、技能道場での指導/レベル6MM/レベル5MS/レベル4MA・一般技能者/OTSや技術道場での研修、社内外の技能検定挑戦/レベル3/レベル2/レベル1
高度技能者育成制度の技能レベル(日本の製造拠点)

オリンパスグループは、製造現場の技能者は付加価値を⽣み出す重要な源泉と考えています。

⽇本の製造拠点では、機能研修プログラムの⼀つとして「ものづくり人材育成制度」を設け、業務で必要となる技能レベルを6段階に区分し、計画的なレベルアップを図っています。レベル1の新⼊社員からレベル3までを⼀般技能者、レベル4以上は⾼い技術技能を持つ「⾼度技能者」として認定します。レベル4を「Manufacturing Advisor(MA)」、レベル5を「Manufacturing Supervisor(MS)」、そして最⾼位のレベル6を「Manufacturing Master(MM)」と称しています。新⼊社員からMMに⾄るまで、レベルに応じた育成を計画的に⾏っています。2023年4⽉1⽇時点の⾼度技能者数は計105名です。

また、上位レベル認定を目指す従業員のためのトレーニングプログラムの実施や、上位認定者から助言を受けられるためこれらによって組織力強化はもちろん、個人のモチベーション向上にも繋がっています。さらに、医療関連製品の製造を担うOlympus Vietnam Co., Ltd.では、接着やろう付けなど、日本の製造拠点と同じ資格認定制度なども取り入れて、グローバルな製造体制の構築に資するよう研修・教育制度の充実に努めています。

グローバル人事評価制度の概要

オリンパスは、2023年5月にグローバル人事評価制度と目標管理システムを導入しました。これにより、グローバルで統一したパフォーマンス管理が可能となり、システムを通して、グローバルで一貫したタレントマネジメントとサクセッションの実現を図っています。

世界有数のグローバルメドテックカンパニーになるというオリンパスのビジョンと意欲の実現には、健全なパフォーマンス文化をはぐくむことが大きな鍵となります。オリンパスは、人材管理、人材確保および人材の長期定着について統一したアプローチをとっています。

本制度により、従業員一人ひとりがキャリアの将来像を思い描けるように支援し、能力開発、人事評価とそのフィードバックを、スキルや個人の目標、そして事業の成功に寄与する日々の業務に紐づけています。またこの仕組みは、公平性と一貫性に重点を置いており、誰もが透明性の高い方法に基づいた評価を受けることができるよう設計されています。

また、人材育成・管理のプロセスと足並みを揃えて連携し、適所適材の人材配置が適切なタイミングで行われるようにします。オリンパスは、人材への投資が成功のカギであり、成果目標達成のために極めて重要であることを認識しています。

マネージャーと従業員の対話

本制度は、会計年度毎に対応しています。成果目標の設定と合意の段階では、従業員とマネージャーが目標について話し合い、合意します。各会計年度開始から約半年後に、従業員とそのマネージャーは、パフォーマンスの成果目標が予定通りかどうか、進捗状況を確認します。年度末の評価は、4月から6月にかけて、一連のレビューについての話し合いのセッションが設けられます。

マネージャーと従業員は、年間を通して定期的にパフォーマンスに関する対話を行い、状況を把握できるようにします。パフォーマンス、能力開発、フィードバックに関する対話を日常化し、目標が計画通りに進んでいない場合にサポートを提供できるようにしています。

経営戦略に関連付けた個人の目標設定

従業員は、経営戦略で掲げられた3つの基本的な指針(患者さんの安全と持続可能性、成長のためのイノベーション、生産性の向上)に関連付けて、各々の成果目標を設定し、その達成度に応じて人事評価が行われます。なかでも、患者さんの安全と法規制の遵守は当社にとって最優先事項であるため、2024年3月期においては、全従業員が品質を追求するためのグローバル共通の目標を設定しています。

日々の職務遂行において、関連するすべての適用法、規制、業界標準、および業務を管理するすべてのポリシーと手順を理解・遵守することに加え、潜在的な安全上のリスク、危険、またはコンプライアンス違反の事例を特定して報告すること、関連するイニシアチブに積極的に参加することが、機能や役割に関係なく、従業員一人ひとりに求められます。