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医療を止めない。グローバルサプライチェーンのレジリエンス向上を目指すSCMの流儀

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SCMのリージョナルプランニングに所属し、グローバル需要にタイムリーに応えるための供給計画の策定を担当。サプライチェーンマネジメントの仕事は、仕入先・調達・製造から、マーケティング・営業・お客様までをつなぐこと。先が見通せない時代だからこそ、医療を止めない強い思いで取り組み、当社を強くしていきたいです。

誠実さを第一に。医療を止めない供給活動を

現在の仕事の内容を教えてください。

SCM部門のリージョナルプランニングという部署に所属し、グローバル需要にタイムリーに応えるための供給計画を策定しています。主に扱っているのは、日本国内やベトナムで製造している内視鏡処置具や外科エネルギーデバイス。各子会社から需要予測を集め、工場と生産計画調整を行って適切な在庫量を維持し、安定供給することがミッションです。

さまざまな変動要因がある中、あらゆるシナリオに対応できるような計画を立案するのは簡単なことではありません。とくに昨今は、コロナ禍の影響で部品の調達が困難になり、世界的に物流が混乱するなど、安定供給の確保は困難を極めています。

加えて、医療機器に関する法規制はますます厳しくなってきているのが現状です。各国の規制に対応するたびに製品の種類が増え管理が複雑化するなど、医療業界特有の難しさもあります。

一方、先が見通せない時代を迎え、サプライチェーンマネジメント(以後、SCM)の重要性が高まり、SCMが注目を集めるようになってきました。われわれの活躍次第で他社への優位性を示せるところに、やりがいを感じています。

供給計画の策定と並行して、グローバルSCM改革プロジェクトにも携わっています。従来のSCMを再構築しようというもので、ここ数年、需要予測方法の標準化、IBP(Integrated Business Planning)導入などに取り組んできました。

仕事をする上でどんなことを大切にしていますか?

“Our Core Values”の中でも“Integrity(誠実であること)”を最も大切にしています。SCMの仕事は、仕入先・調達・製造から、マーケティング・営業・お客様までをつなぐこと。そのため、部門と部門の板挟みになる場面が少なくありません。とりわけ半導体などの部品および原材料の不足や物流の混乱など、制御不能な問題の対応に追われることも多い現状では、最後の拠り所となるのは自分自身だと思っているんです。すぐに解決できない課題があったとしても、誠実な姿勢を貫くことで周囲との結束が生まれ、やがて解決への糸口がつかめると信じています。

また、われわれには“世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現”を目指すという揺るぎない目標があります。企業体として利益を生むことも大切ですが、第一に優先されるべきは医療を止めないこと。要望通りに製品が供給できないケースでは、競合他社の製品を提案することも辞さない覚悟で取り組んでいます。

アメリカ駐在で学んだ業界標準に則ってグローバルSCM改革プロジェクトに貢献

入社後のキャリアステップについて教えてください。

入社してまず担当したのが海外子会社向けの受注出荷業務。4年半ほどオーダーのマネジメントを経験しています。アメリカを担当していた関係で同国の子会社への駐在を打診され、出向の準備のためにPSIプランニンググループへ異動になりました。PSIとは、生産(Production)・販売(Sales)・在庫(Inventory)のこと。内視鏡処置具や外科エネルギーデバイスの供給計画の立案や購買・在庫管理などを担当しました。

アメリカに滞在したのは4年ほど。PSI計画のほか、グローバルSCM改革プロジェクトにも携わり、社内外のSCMのプロフェッショナルと交流する機会に恵まれました。日本と違い、欧米ではジェネラリストよりスペシャリストを目指す考え方が主流。自身もSCMの道を究めることで会社や社会に貢献したいと考えるようになりました。

駐在中にどんな学びがあり、日本での活動に活かされていますか?

欧米ではSCMが完全に標準化されています。用語の使い方が日本とはまるで違うため、はじめは会話の内容がまったく理解できませんでした。そこで、現地のマネージャークラスが全員持っているような資格を自分も取得。その過程でSCMの業界標準が学べたことで、サプライチェーンに問題が起きたときの原因や対策をすみやかに判断できるようになりました。

現在進めているグローバルSCM改革プロジェクトでも、業界標準に依拠した議論の進め方や意見出しができています。たとえば、需要予測する際、欧米では受注実績が基準となるのに対し、当社の東京本社では出荷実績が参照されてきました。どちらも同じように思えますが、後者の場合、欠品があったときなど、需要があったにもかかわらず、データ上は需要がなかったものとして扱われてしまうんです。これはほんの一例ですが、日本のSCMでは慣習に基づいて意思決定されるケースが少なくありません。現地で学んだことを踏まえながら、改革を進めているところです。

グローバルサプライチェーンの再構築に向け、一刻も早いIBP導入を

アメリカでの経験をもとに、帰国後どのようなプロセスでグローバルSCM改革プロジェクトに着手しましたか?

アメリカでは内視鏡システムの需要予測・購買・在庫管理などを担当していたこともあり、帰国直後はワーキンググループに所属してデマンドプランニング(需要計画立案)の標準化に取り組みました。

その後、IBP(Integrated Business Planning/全社意思決定プロセス)導入の検討に関わるようになり、SCMだけでなく営業・マーケティング・製造・調達・ファイナンスなど全社機能を連携させて意思決定を行うプロセスに関わっています。

IBPの狙いは各事業および機能部門が情報を共有することで意思決定のスピードを速め、サプライチェーンの管理や事業計画を最適化すること。データ分析を通じて統計的に予測するなど、デマンドプランニングには数学的な要素があるのに対し、IBPではどちらかというとコミュニケーションのプロセス改善に注力しています。

IBP導入の必然性や重要性をどんなところに感じていますか?

原材料や部品が不足する中、製造側との生産調整に追われ、営業側からは納期に関する顧客からの要望がひっきりなしに届くなど、両者を仲介する部門はどこも課題を抱えている状況です。製品が供給できないのであれば、ないなりに、まずはお客様に対してどんなアプローチが可能かを検討することが、オリンパスとして取るべき正しい態度。IBP導入によって全社機能を連携させ、スピーディーに意思決定を行う仕組みづくりをすることが急務だと感じています。

一方、改革も着実に進めています。たとえば、当社では以前、SCM部門・製造部門・調達部門のそれぞれがまったく別の組織に属していましたが、今期からすべてCMSO(Chief Manufacturing and Supply Officer)下に置かれることになりました。課題はまだまだたくさんありますが、サプライチェーンの各部門間のコミュニケーションは格段に良くなってきていると思います。

オリンパスの強みを活かした、SCMの実現を目指して

今後について、どのような展望を持っていますか?

入社以来、需要サイドから供給サイドまで、また実行系から計画系まで、SCM畑ひと筋でさまざまな業務を幅広く経験してきました。この分野のスペシャリストを目指して、さらに知見を深めていくことがいまの目標です。

また、当社に限らず、日本にはサプライチェーンの業界標準が浸透していません。SCM先進国であるアメリカで学んだことを活かし、国内全体のサプライチェーン底上げにも尽力していきたいですね。

長期的には、SCMで培った知識やノウハウを社会事業に役立てたいと考えています。アメリカ駐在時に、サプライチェーンの知見を活かして災害時の救援物資配備事業に携わっている方の講演を聴く機会があり、感銘を受けたことを覚えています。サプライチェーンというと物流や生産管理のイメージが強いですが、それとは違った角度からも社会に貢献できたら素晴らしいと思っています。

最後に、オリンパスの一員として高井さんが描くSCMの理想像について聞かせてください。

まずは業界標準をメンバー全員が理解することが先決だと思っています。ただ、オリンパスのサプライチェーンには改善すべき点があるものの、粘り強くお客様の要望に応えようと限界まで調整しようとする姿勢など、強みがあるのも事実です。“Our Purpose”や“Our Core Values”が策定され、経営理念が明文化されたことで、そうした価値観がさらに強化されたと感じています。国際標準に照準を合わせつつも、グローバル・メドテックカンパニーとして、われわれの持ち味を活かしたSCMが実現していきたいですね。

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