サウラブ・ムケワール医師
Midas Hospitalの消化器内科専門医を務め、インド農村部における消化器医療へのアクセス改善を目的とした出張内視鏡検査プログラムの取り組みに携わっています。
2026年9月
フォーカスエリア 1: 医療機会の幅広い提供およびアウトカムの向上

世界最多の人口を誇り、急激に経済発展が進むインドでは、未だ地域によって医療を受けられる環境に大きな差があります。農村部などでは、がんの検診や治療のインフラが圧倒的に不足しており、また内視鏡検査そのものへの認知不足や、病院までの長距離移動を含めた経済的負担も受診の障壁となっています。そのような中、オリンパスでは、医療機関や医療従事者と協力し、検査の機会を地域に届ける出張内視鏡検査プログラムを展開しています。オリンパスが内視鏡検査装置を提供し、医療機関はその装置を載せる車両と通信機材、検査に携わるスタッフなどを提供し、医療アクセスなどの問題がある地域で内視鏡検査を行うというものです。地元の医療機関やNGOを通じてパンフレットなどを使用した啓発活動を行い、対象となる方の内視鏡検査を実施しています。
今回は協力医療機関の一つであるMidas Hospitalのサウラブ・ムケワール医師に、現場で感じていた医療課題や、出張検査プログラムによって生まれた変化などについてお話を伺いました。
出張検査プログラムにおけるオリンパスのインド医療事業責任者のインタビューはこちら(2024年4月公開):消化器内視鏡の出張検査の支援を通じてインドの医療水準向上に貢献:インパクトアクションストーリー:オリンパス

Midas Hospitalの消化器内科専門医を務め、インド農村部における消化器医療へのアクセス改善を目的とした出張内視鏡検査プログラムの取り組みに携わっています。
Midas Hospitalがこの取り組みに参加した背景には、農村部や医療過疎地域における専門的な消化器医療へのアクセスを改善したいという目的がありました。こうした地域では、内視鏡などの高度な診断設備を利用できない、または利用が難しいことが多く、症状があっても、疾患に対する認識不足や経済的な制約、診断を受けるための長距離移動などを理由に、受診や治療を先延ばしにする患者が少なくありません。
私たちは農村部での出張内視鏡検査を通じて、消化器疾患の患者に対し、早期検査や適切なタイミングでの診断、医療指導を行うことを目指しました。また、消化器疾患に関する啓発活動や予防医療の重要性についての理解促進にも取り組みました。こうした活動を通じて、医療アクセスの格差を埋め、これまで専門的な医療を受ける機会が限られていた患者にも、質の高い内視鏡医療を提供することを目指しました。

検査会場の内視鏡検査用車両

検査と医療相談を受ける患者
この3年間で、農村部や医療過疎地域における専門的な消化器医療への患者のアクセスは大幅に改善されました。これまで診断施設へのアクセスが限られていた、または全くなかった多くの患者が、自宅に近い場所で、適切なタイミングで内視鏡検査や診察を受けられるようになりました。
これによって、潰瘍や胃炎、消化管出血、肝臓関連の合併症、悪性腫瘍が疑われる症例など、さまざまな消化器疾患の早期発見・診断につながりました。早期診断によって、患者が適切なタイミングで治療や専門医療機関への紹介を受けられるようになり、治療開始の遅れを減らすことで、治療成果の改善にもつながっています。
さらに、出張内視鏡検査を通じて、住民の間で消化器の健康や早期受診の重要性に対する理解が深まりました。また、参加した患者が積極的に治療を受けるようになったことで、フォローアップ受診や継続的なケアも増加しています。全体として、この取り組みは医療へのアクセス改善や患者の医療に対する信頼感の向上、医療過疎地域における医療の質の向上に貢献しています。

出張内視鏡検査に携わるMidas Hospitalのチーム
Midas Hospitalと農村部の医療従事者との連携を強化することで、地域の医療体制の強化に貢献しました。出張内視鏡検査を通じて、地元の医師や看護師、医療スタッフが、高度な消化器検査の手技や患者管理の手法に触れる機会が生まれ、消化器疾患に関する臨床的な理解と認識の向上につながりました。
また、農村部の医療センターと専門病院との連携や紹介体制の整備も進み、高度な治療が必要な患者が適切なタイミングで医療を受けられるようになりました。地域の医療スタッフは、出張内視鏡検査の現場で、患者指導やスクリーニングの実施、感染対策、処置後のケアについて実践的な経験を積みました。
さらに、予防医療の実践を促進するとともに、早期診断の重要性についての理解を深めることで、医療体制の改善にも貢献しました。こうした協力体制により、地域コミュニティとの信頼関係が築かれ、医療過疎地域における医療ネットワーク全体の強化につながっています。

サウラブ医師とMidas Hospitalのチームによる地域の医療従事者への内視鏡検査に関する講義の様子
特に印象的だった事例の一つは、遠隔農村地域に住む中年の患者さんです。その方は数カ月にわたって持続的な腹痛や嚥下困難、体重減少に苦しんでいましたが、疾患に対する認識不足と専門医療施設へのアクセスの乏しさから、それまで適切な診断を受ける機会がありませんでした。
Midas Hospitalが実施した出張内視鏡検査でこの患者さんは検査を受け、早期食道がんと診断されました。適切なタイミングで診断されたことで、速やかに専門医療機関への紹介と治療計画の立案が行われ、患者さんの回復の可能性は大きく高まりました。
この事例は、内視鏡などの高度な診断の機会を医療過疎地域へ直接届けることの重要性を示すものとなりました。また、地域住民の間で早期検査の重要性への理解が深まり、それまで見過ごしていた症状について医療機関を受診する患者が増えるきっかけにもなりました。この取り組みは、個々の患者だけでなく、予防医療や専門的な医療に対する地域コミュニティの信頼向上にも貢献しました。

出張内視鏡検査での診察の様子
Midas Hospitalは、専門的な消化器医療を受ける機会が依然として限られている医療過疎地域や遠隔地域に出張内視鏡検査の取り組みをより拡大していくことを構想しています。今後は、消化器疾患の早期発見と適切なタイミングでの治療につなげるため、定期的なフォローアッププログラムや啓発活動の拡充、検査体制の充実を図り、より大規模な出張内視鏡検査の実施を目指しています。
この取り組みのインパクトをさらに拡大するには、地域の医療当局やNGO、地域保健スタッフとのより緊密な連携が不可欠です。医療インフラ、研修を受けた人材、高度な診断機器、経済的に困難な状況にある患者への財政的支援などの追加的なサポートは、これらのサービスをより利用しやすく、持続可能な活動にするうえで役立ちます。
また、この取り組みが、予防医療への意識向上を促し、患者が治療を先延ばしにするのではなく、早期に医療機関を受診するきっかけとなり続けることも期待しています。継続的な取り組みと医療パートナーシップの強化により、出張内視鏡検査の取り組みは、医療過疎地域における治療成果と生活の質の大幅な改善につながるでしょう。

出張内視鏡検査に参加した患者とその家族
出張内視鏡検査プログラムは検査の機会を届けるだけでなく、予防医療や専門的な医療サービスに対する地域住民の信頼向上にもつながっています。これまでの3年間の活動を通じ、次のような成果をあげました。
オリンパスは、今後も各地のパートナーと協力しながら、地域住民や医療従事者へ内視鏡検査の重要性についての理解を広げるとともに、医療アクセスに課題がある地域においても、必要なときに必要な検査を受けることができる医療体制の実現へ貢献する取り組みを進めていきます。