Olympus Vietnam Co., Ltd.(OVNC)では、滅菌工程で発生する化学物質を含む排水(滅菌処理水)について、化学物質を凝集した上で焼却することで分解・無害化していましたが、焼却後の残渣は埋立処理していました。しかし、このたび処理方法を化学処理に変更し、排水をきれいな水と化学物質に分離する技術を導入しました。これにより分離した化学物質がリサイクル処理できるようになり、リサイクル率の向上につながりました。
自然資本・廃棄物への取り組み
基本的な考え方
近年、生物多様性の喪失や自然資本の劣化が地球環境や社会・経済活動に深刻な影響を及ぼす可能性があることが指摘されています。こうした背景から、企業の事業活動が自然資本に与える影響を的確に把握し、持続可能な形での管理と開示を行うことの重要性が一層高まっています。
オリンパスグループは、生物多様性は地球環境の健全性と私たちの暮らしの豊かさに不可欠な要素であると認識し、従来より、各サイトでの水使用・排水の管理や緑地の維持、地域の清掃活動、森林保全や植樹などの活動を通じて、生物多様性保全の取り組みを継続してきました。また、廃棄物の削減・適正管理も重要な取り組みの一つと捉え、資源循環や有害物質の適正処理を推進し、自然環境への負荷軽減に努めています。
こうした近年の状況を踏まえ、TNFD※1やSBTs for Nature※2といった国際的なイニシアティブのもとで、事業活動が自然資本に依存する、あるいは自然資本に影響を与えるリスク・機会を特定し、重要なものを管理することの重要性が増しています。オリンパスグループでは、自然資本の保全と持続可能な事業活動の両立を高いレベルで実現するために、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)が推奨する「LEAPアプローチ※3」を導入し、自然資本(陸、海、淡水、大気)に関するリスクと機会の分析・評価を開始しました。
※1 企業活動に対する⾃然資本及び⽣物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開⽰するための枠組を構築する国際的な組織(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)(出展:環境省)
※2 バリューチェーン上の⽔・⽣物多様性・⼟地・海洋が相互に関連するシステムに関して、企業等が地球の限界内で、社会の持続可能性⽬標に沿って⾏動できるようにする、利⽤可能な最善の科学に基づく、測定可能で⾏動可能な期限付きの⽬標(Science Based Targets for Nature)(出展:環境省)
※3 「Locate(発⾒)」「Evaluate(診断)」「Assess(評価)」「Prepare(準備)」の4つのステップからなる、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を評価するための統合的なアプローチ
関連リンク
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づく情報開示
紙類使用・調達に関するガイドライン
各地域での環境保全活動
水資源の有効活用
水使用量/排水量の実績
水使用量の推移
オリンパスグループでは、主に⽣産⼯程における部品洗浄や冷却⽔、社員⾷堂などで⽔を使⽤しています。各サイトでは地域の法規制よりも厳しい基準を設けてサイトにおける排⽔の⽔質管理を徹底するとともに、⽔使⽤効率の⽬標を設定して、⽔使⽤⼯程の改善や設備点検での漏⽔対策、⽔の二次利⽤などを実施することで、⽔使⽤量・排出量の削減取組を推進しています。これら取り組みにより2025年3⽉期の実績は、⽔使⽤効率を2024年3⽉期⽐で8%改善することができました。
主な取り組みとしては、⽇本の会津オリンパスでは、半田レスによる洗浄工程の削減や洗浄流量の最適化などの製造プロセスにおける改善を実施しており、水の使用量の削減を進めています。グローバル本社では、雨水貯留・再利用システムを導入しており、庭園の散水用途に活用することで、水使用の最適化と資源循環を進め、水使用量の削減を図っています。また、全従業員を対象とした意識啓発として、環境eラーニングを実施し、水資源保全の重要性を伝えるとともに、生活用水および製造用水における節水の具体的な実践行動について啓発を行い、個々の意識向上と実践を促しています。
また、地域社会と連携し、河川清掃などの活動を通じて、地域の水資源の保全にも積極的に取り組んでいます。
2026年3⽉期は、水使用効率のさらなる向上を目指し、設備や製造工程の改善に加え、再利用による節水の取り組みを推進していきます。
Topics:先進的な水処理プラントの導入
Olympus Medical Products Portugal, Unipessoal LDAでは、製造工程からの排水を高度処理する設備を導入し、処理水を敷地内の緑化用水に再利用する取り組みを進めています。
URL:https://www.olympus.co.uk/company/en/about-olympus/social-responsibility/environment/
関連リンク
廃棄物の適正管理と削減
廃棄物排出量の実績
廃棄物排出量・埋⽴量
オリンパスグループでは、製造⼯程改善による加⼯ロス削減、発⽣した廃棄物の分別徹底による廃棄物発⽣量の抑制および有価物化・リサイクルの推進など資源の有効利⽤に取り組んでおり、2025年3⽉期の実績では、廃棄物リサイクル率は92%となり、前年度⽐で向上しました。
主な取り組みとしては、⽇本の会津オリンパスでは、廃食用油の有価化、廃棄作業服のリサイクル、製品製造の工程改善による材料廃棄削減を推進しました。⽶州のOlympus Surgical Technologies America Inc.では、BartlettのサイトでPPE廃棄物(医療現場などでの個⼈⽤防護具)のリサイクルを推進するとともに、新たなリサイクル⽅法の探索やリユース・リサイクル市場の開拓と拡⼤を⽬的に、「Tennessee Recycling Coalition※」に加⼊・参加し、廃棄物量の削減に向け検討を進めています。Westboroughのサイトでは、機械油と金属のリサイクルを行っています。
Olympus KeyMedでは、食品廃棄物について専用の回収ボックスを設けて分別を推進することにより、埋立処理からリサイクル処理に転換しました。
また、発⽣する廃棄物のうち、⾃社での再利⽤が困難な廃棄物については、専⾨の処理業者に委託し、適正に処理・処分しています。
⽇本においては廃棄物処理業者による不法投棄や不適切な処理を未然に防ぐために、新規契約時または3年に1回の頻度で産業廃棄物委託業者に対する現地視察を実施し、委託した廃棄物が適切に処理・処分されていることを確認しています。
有害廃棄物への対応としては、有害性の低い材料への代替やリサイクルの推進に取り組んでいます。2025年3⽉期は活動量が増加したものの、危険廃棄物の排出量は2024年3⽉期とほぼ同じ水準に抑えることができました。
2026年3月期は、引き続き、再資源化手法の多様化や、廃棄物の発生抑制に向けた対策の強化を通じて、リサイクルの取り組みを推進していきます。
※ Tennessee Recycling Coalition:⽶国テネシー州でのリサイクルと資源管理の促進を⽬的とした⾮営利団体
Topics:滅菌処理水のリサイクル
Topics:廃棄物の分別とたい肥の推進
Olympus Surgical Technologies America Inc.では、食堂の食品廃棄物を分別し、たい肥化することで、従来焼却していた年間約15tの廃棄物を再資源化しています。
関連リンク
廃棄物排出量・埋立量について (環境データ集:Excel形式)
有害廃棄物排出量について (環境データ集:Excel形式)
化学物質管理
化学物質の適正管理
オリンパスグループは、化学物質に関する国内外の法規制を厳格に遵守しています。REACH規則やRoHS指令などの規制に基づき、製品や製造工程における有害物質の使用を制限し、安全で信頼性の高い製品を提供しています。また、化学物質による環境負荷の低減を目指し、製品や製造工程で使用する有害化学物質の削減に取り組んでいます。代替材料や技術の導入を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献しています。
製造サイトや研究開発サイトでは、化学物質を取り扱う従業員の安全と健康を最優先に考え、安全教育やトレーニングを定期的に実施し、適切な保護具の提供や作業環境の改善を通じて、安心して働ける職場づくりを推進しています。さらに、巡視・パトロール活動を通じた化学物質の適正な管理状態の維持や、万が一化学物質が漏洩・流出した際に被害を最小限に抑えるための緊急訓練を実施しています。
日本地域では、化学物質の使⽤による⼈や環境への影響を最⼩化するために、PRTR法対象物質、揮発性有機化合物(VOC)などの化学物質の適正管理と排出量の削減に取り組んでいます。化学物質を使⽤する職場では、新規化学物質導⼊前の環境影響評価や化学物質リスクアセスメントを通じて、より安全性の⾼い化学物質への代替やリスク低減対策を⾏っています。
Topics:全社的な化学物質管理の高度化へ(統合システム導入で体制を強化)
日本地域では、これまで各サイトで異なる情報管理基盤を使用して化学物質の管理を行っていましたが、全社統合型のITシステムを導入することで、情報管理の精度と効率の向上を図っています。この取り組みにより、より確実なコンプライアンス体制の構築を進めています。
PRTR法第⼀種指定化学物質排出・移動量
2021年3⽉期 | 2022年3⽉期 | 2023年3⽉期 | 2024年3⽉期 | 2025年3⽉期 | |
---|---|---|---|---|---|
PRTR 法第⼀種指定化学物質排出・移動量(t) | 13 | 12 | 10 | 10 | 12 |
※ 対象範囲:日本の全製造・開発サイト
揮発性有機化合物(VOC)排出量
2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | |
---|---|---|---|---|---|
揮発性有機化合物(VOC)排出量(t) | 39 | 41 | 45 | 47 | 36 |
※ 対象範囲:⽇本の全製造・開発サイト