気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に基づく情報開示

オリンパスグループは、気候変動が地球環境を脅かす重⼤な課題であるとともに、オリンパスグループの事業活動に影響を及ぼす重⼤な課題であるとの認識の下、経営戦略における重要課題(マテリアリティ)である「社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献」への対応の⼀環として、2021年5⽉にTCFDの提⾔に賛同することを表明しました。TCFDのフレームワークに沿って、オリンパスグループにおける気候変動問題への取り組みを開⽰します。

ガバナンス

開示事項
  • a) 気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする
  • b) 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する

オリンパスグループのサステナビリティ活動は、ESG担当役員をオーナーとし、各事業部門および機能部門の責任者を構成メンバーとする「ESG委員会」において、重要施策の審議および意思決定を行っています。ESG委員会で決定された内容は、グループ経営執行会議および取締役会に報告され、両会議体はこれに対して助言・指示を行うことで、プロセスの有効性を担保しています。ESG委員会は、サステナビリティ戦略の遂行やマテリアリティに関する重要課題の検討に加え、環境や人権などテーマ別のワーキンググループを傘下に設置し、機能横断的な取り組みが求められる施策について検討や情報共有を行っています。
オリンパスグループ全体の気候変動対応は、環境活動の最⾼責任者であるCEOの下、EHS(環境・健康・安全衛⽣)機能を管轄するCHRO(Chief Human Resources Officer)が統括しています。
EHS統括機能はグループ全体に適用する「環境安全衛生ポリシー」のもと、当社の中⻑期事業計画におけるESG分野の⽬標に則り、オリンパスグループ全体の環境⾏動計画を策定し、その進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最⾼責任者(CEO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指⽰を⾏います。また、気候変動対応を含むESGへの取り組みに対する経営層のコミットメントを強化するため、執⾏役の報酬について、⻑期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬のうち一部が外部ESG評価機関の評価結果と連動しています。

環境安全衛⽣ポリシー

(CDP alignment:C4.1.2、C4.2、C4.3、C4.3.1)

戦略

開示事項
  • a) 組織が選別した、短期・中期・⻑期の気候変動のリスク及び機会を説明する
  • b) 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する
  • c) 2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する

オリンパスグループは、シナリオ分析の⼿法を⽤いて、気候変動関連のリスクと機会を特定しています。
シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提⽰している「1.5℃:RCP1.9(NZE)(産業⾰命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃未満とするシナリオ)」および「4℃:RCP8.5(産業⾰命前からの世界の平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1〜5年)には、⾃然災害発⽣による操業停⽌・サプライチェーン断絶、気候変動への対応不⾜や不⼗分な開⽰によるステークホルダーからの評価・評判の低下を、中⻑期的(5〜20年)には、炭素税の導⼊や温室効果ガス削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。
気候変動のリスクは、オリンパスグループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは⽐較的⼩さいと推定しています。移行リスクとしては、炭素税導入などによる操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると⼯場でのエネルギーコストは小さいため、影響は限定的であると考えます。物理的リスクとしては、⾃然災害の⾃社⼯場操業への影響についても台⾵や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの⾯でも、昨今世界規模で台⾵や洪⽔が発⽣し、資材調達や製品供給の⾯での影響が予想されるため、代替サプライヤーによる⽣産確保などの体制構築を進めています。
また、気候変動の機会については、温室効果ガス削減に寄与する製品へのニーズの⾼まりを機会ととらえて、省エネルギーなどに配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、当社グループの製品は製品⾃体が⼩型で使⽤によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が⼩さいことから、事業活動に⼤きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。

(CDP alignment:C2.1、C3.1、C3.1.1、C3.6、C3.6.1、C5.1、C5.1.1、C5.1.2、C5.3)

シナリオ分析に基づくリスクと機会の一覧

左右にスワイプが可能です

シナリオ リスク・
機会の項目
社会の変化/事業への影響 影響度 時間軸 主な取り組み
1.5℃ 移行
リスク
政策と法律 既存製品・事業活動・情報開示に関する規制・義務化が拡大 短期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
  • 環境問題に対する取り組み強化と情報開示の充実
炭素税/排出権取引の拡大 中期
技術変化 製造方法や素材の低炭素化に乗り遅れた場合の販売機会の減少 長期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
市場変化 事業活動に要する燃料などのエネルギー、原材料、物流コストの増加 中期
  • 製造プロセス、物流効率の改善
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
  • 環境問題に対する取り組み強化と情報開示の充実
評判 環境問題への対応不足によるステークホルダーからの評価・評判の低下 短期
機会 資源の効率性 製品や包装の見直しにより、原材料コストや廃棄物量が低下 中期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • 水や廃棄物の適正管理の実施
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
エネルギー源 省エネ化によるコスト削減や低炭素エネルギーの活用拡大によりステークホルダーからの評価・評判の向上 短期
製品/サービス 環境配慮型製品の開発による市場競争⼒の向上 長期
  • 製品、包装材などにおける環境配慮設計の推進
  • 製品ライフサイクルの資源循環性向上(製品回収・再資源化)への取り組み検討
  • 環境問題に対する取り組み内容の充実化と積極的な情報開示
  • CO2削減に向けた省エネルギー対策の実施と再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギーの導入
市場 製品の環境配慮推進によるステークホルダーからの評価・評判の向上 短期
レジリエンス 気候変動に対する適応力を確保した事業拡大 中期
4℃ 物理的リスク 急性 自然災害の激甚化によるサプライチェーンの断絶 短期
  • サプライヤーとの協力体制の確保(BCPの実効性を⾼める教育・訓練の継続的実施)
  • 製品とサービスの供給を維持するための最善対策の推進
  • 浸水対策としての浸水可能性箇所の特定と緊急時対応の訓練実施
慢性 平均気温の上昇による空調コストの増加、従業員の体調変化による労働生産性の低下 中期

IEA(「World Energy Outlook 2024」の2030年の炭素税価格をもとに算定した対策を講じない場合の財務影響の推定額:約9億円/年

時間軸: 短期(1年〜5年)、中期(5年〜10年)、⻑期(10年〜20年)

影響度: 財務的影響額、オペレーション、ステークホルダー、法令順守の観点から3段階で評価

リスク管理

開示事項
  • a) 組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する
  • b) 組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する
  • c) 組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する

オリンパスグループは、経営理念や企業戦略などの事業目的達成を支援するため、エンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチを確立しています。本手法のもと、当社の事業に影響を与えるすべてのリスク・機会管理の枠組みの中でオリンパスグループの事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への影響度が⾼いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移⾏リスク、⾃然災害による物理的リスクの内容も含みます。リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発⽣可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを⾏い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法⼈の環境統括部⾨がサイト関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。また、特に事業運営への影響度の⼤きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執⾏会議および取締役会へ報告します。CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不⾜している場合は活動計画の⾒直しを指⽰します。

事業等のリスク

(CDP alignment:C2.2、C2.2.1、C2.2.2)

指標と目標

開示事項
  • a) 組織が⾃らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開⽰する
  • b) Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開⽰する
  • c) 組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する

オリンパスグループは、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope 1、2、3)を2040年3⽉期までにネットゼロとする⽬標を策定し、2023年10⽉にはSBTi(The Science Based Targets initiative)より、ネットゼロ⽬標および短期⽬標において1.5℃⽬標の⽔準と整合したものであるとの認定を取得しています

SBTiに認定された目標

ネットゼロ目標 2040年3月期までにサプライチェーン全体で温室効果ガス(Scope 1、2、3)のネットゼロ達成(2020年度基準年)
短期目標

2031年3月期までに温室効果ガス排出量(Scope 1、2)を2020年度基準年から70%削減

2028年3月期までに当社サプライヤーの80%が科学的根拠に基づく温室効果ガス削減目標を設定
(購入した製品・サービス、資本財、上流の輸送・流通の排出量ベース)

2025年3⽉期の取組実績は、Scope 1、2では基準年度⽐(対2020年3⽉期)で約62%削減、Scope 3では約3割のサプライヤー(取引⾦額ベース)が科学的根拠に基づく温室効果ガス削減⽬標の設定を完了しています。今後は温室効果ガス削減⽬標の達成に向けて、世界各国の拠点での製造改善活動や再⽣可能エネルギーのさらなる切替・導⼊とともに、環境配慮型製品の開発や物流効率改善、サプライヤーさまとの協働による温室効果ガス排出量についての⾃主削減⽬標、脱炭素活動への⽀援に継続的に取り組みます。

オリンパスは、国際的な非営利団体であるCDPより、気候変動分野への取り組みと情報開示の透明性が認められ、最高評価である「CDP2024気候変動Aリスト」企業に選定されました。

(CDP alignment:C5.1、C5.1.1、C7.6~C7.8、C7.9、C7.52~C7.55)

詳細は以下のページをご覧ください

気候変動への取組み
ESGデータ集
CDP2024への回答内容 PDFファイルへのリンクです

最新の当社の状況は、サステナビリティページにてご確認ください。